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page 16

いつの間にかお気に入り登録が350を突破していました。皆さんありがとうございます!

これからも頑張って書いていきたいと思います!




現在時刻、

ゲーム内時間で7時50分、現実時間で13時少し前。

現実でのゲーム初日から一晩が明けた翌日。

俺はエントマの町の中、北の大通りを通りながらマルクとの待ち合わせ場所の広場に向かっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


4日目終了後、今の時間までに俺は2回程AROにログインしていた。

詳しく言うなら、昨日1回と今朝に1回である。

その間に行っていたのは、素材集めの狩りと武器・防具作成だ。

これは、新しい木槌の練習と装飾の検証を兼ねての行動である。

特に木槌の練習はマルクとの約束があったので、今の内に慣れておかねばならない。


まだ新しい木槌を使った事が無かったため、いきなり森に行くのは少々不安だったが、長柄木槌は思った以上に使いやすく、ATKの大幅な上昇によりモンスターも楽に倒せる様になった。

防具の向上もあり、グレイウルフ相手なら一対一でまともに戦っても負ける事は無くなった。

その分狩りの効率も上がって、取れる素材の量もかなり増やす事が出来た。


装飾についても増えた素材で有るだけ作ったお蔭で幾つかの事が判明した。

まず俺が作った物を例としよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


見習い鍛冶屋の長柄木槌(灰狼装飾+1)



ATK +11


品質 3



未熟な鍛冶師が扱う武器。

取り付けられた灰狼の一部から微量

ながら力が槌に流れ込んでいる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


これは長柄木槌に灰狼の毛皮×6と灰狼の牙×2で装飾した物だ。


実はこれが出来るまでに素材の数を変えて何度か試してみたのだが上手くいかなかった。

装飾+1、+2の時以外の数にすると装飾+がつかなかったのだ。

中でも一番最悪だったのが、+2がついた木槌にさらに素材を付けようとした時の事だ。


その時俺は、今の長柄木槌をさらに強化できないか試している最中だった。

俺は改めて+2の物を作成し、それをさらに装飾しようと、つける場所を変えながら試行錯誤を繰り返していた。

そしてかなり難しかったものの、何とかある部分に素材をつける事に成功したのだ。

素材を付けるのにとても集中して作業を行っていたため、それを終えて俺は思わず伸びをしていた。


すると、目の前の作業台に置いていた木槌が独りでにガタガタ震え出しーーー突然、破裂しやがったのである。


当然、至近距離にいた俺はその衝撃をモロに全身で浴び、大ダメージである。

お蔭で装備していた鎧と籠手は全壊、HPも4割が消えるという被害を受けた。

多分鎧が無かったら死んでたんじゃないだろうか。


幸いと言うべきか、作業台や木工セットは初期武器と同じ仕様らしく被害を受ける事は無かったが、俺はあれ以降+2がついた武器に手を加える事を止めた。


こうして、何度かの検証と作成品の出来を見た結果をまとめると、


 ・装飾出来る素材の種類や数は武器ごとに違う

 ・現時点では+2までしか強化できないっぽい

 ・装飾を行うと品質が4より上にならない


と言うことが分かったのである。


正直、まだ俺の知らない条件も幾つもあるんだろうが、ゲームを始めてそれほど時間が経っていない現状では十分な成果を得られたのではないだろうか。


こんな感じで、俺はゲームでの2日間を過ごした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



と、そんなこんなしてる内に俺は広場に到着した。

ここは昨日と変わらず人混みが凄い。


とてもじゃないがこのまま合流なんて出来そうにないので、メニューを出してマルクと連絡を取る事にした。

数秒の電子音のあと、マルクの声が聞こえた。


『やあゼン、今どこにいる?』


「一応広場に着いたんだが人混みでそっちの場所がわからないんだが


『僕は広場の中央にいるよ。もう一人もここにいるから』


げっ!俺が最後かよ。早く合流しないと。

「分かった、すぐ行くよ」


その言葉を最後に通信を切り、メニューを閉じる。

そのまま歩く速度を上げ、早足で広場中央へと向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ゼン、こっちだよ!」


広場を進んでいた俺にそんな声が聞こえてきた。

そちらを向くと手を振りながら俺を呼ぶマルクの姿を目で捉える事が出来た。

隣に一人男のプレイヤーが居るので、多分あれがマルクの連れてきた今日のメンバーだろう。

そちらに向かって足を進める。


「スマンなマルク、待たせたか?」


「別に大して待ってないよ。それにまだ集合時間前だしね。それよりも今日のメンバーを紹介するよ」


マルクはそう言いつつ、隣のプレイヤーを見る。

すると、此方の会話を聞いていたその人が話しかけてきた。


「こんちは、今日一緒に狩りをするヤシャだ。よろしくな」


「ああ、こっちこそよろしく」


「挨拶も済んだみたいだし、取り敢えず移動しようか。今日の狩りについては歩きながら説明するよ」


軽い挨拶を終えた俺とプレイヤー、ヤシャに移動を促すマルク。

確かに騒がしいこの広場で態々話し合う事もない。

促すマルクを先頭に、俺達は広場からの移動を始めた。


先程いった通り、マルクは歩きながら今日の説明した。


マルクが言うには、今日は複数人で隠密をした場合、どうなるのかを試すために俺を誘ったらしい。

何でも俺と会った時に俺に発見された状態で隠密が続いていたのがきっかけでこれを思い付いたんだとか。

あと今日は複数で行くので、折角だから狩りには何時もより難易度の高い森の奥地に入るようだ。


「そういえばマルクはもう奥地には入ったのか?」


食糧のついでに買った蜘蛛肉の串焼きを食べながらマルクに質問する俺。


「一応何回か入ってみたけど今のスキルレベルだとやっぱりまだソロじゃ難しくて。入り口付近にいるのが精々だったよ」


苦笑しながらそう語るマルク。

その台詞からソロのキツさが垣間見れる。


「奥のモンスターってそんな強いのかよ、俺ヤバくないか?」


「強いというか数が問題かな。奥のモンスターは虫系も多いせいか、基本群れて行動してるからね」


「そういやグレイウルフも奥では群れてるんだっけか。あれレベルに囲まれるときついな。俺大丈夫なのかよ」


「そんなに心配する事ないよ。群れと言っても2~3匹だから3人居れば問題無いさ」


複数のグレイウルフに囲まれる自分を想像して嫌そうな顔になる俺。

マルクに励ましの言葉を掛けられて何とか気を持ち直したが、それでもやはり少々の不安が残る。


俺とマルクがそんな話をしているとヤシャが俺に話しかけてきた。


「なあ、さっきから気になってたんだがゼンが装備してる武器って闘金槌だよな。少し見せてもらってもいいか?」


「ん?ああ、いいよ」


俺は背負っていた木槌をヤシャに渡す。

ヤシャは渡された武器をしげしげと色々な角度から珍しそうに見ている。

まあ実際珍しいか。町であれ持ってる奴俺以外で見た事ないし。

そんなヤシャの姿を見てある事を思い出した。


「そうだマルク、ちょっと見て貰いたい物があるんだが」


「僕に?別にいいけど、一体何を持ってきたんだい?」


アイテム欄からマルクに見せるためにボックスから持ってきたあるアイテムを取り出して渡した。

マルクが渡されたアイテムをみる。


「これは……君が作ったのかい?」


「うん、これ作ったのはいいんだけど俺自身じゃ使えないし、知り合いで使ってるのもマルクしかいなかったからちょっと意見が聞きたくて持ってきたんだよ」


「成る程ね……」


そういってマルクは俺が渡したアイテム、装飾+2の弓を調べ始めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


見習い狩人の木弓(灰狼装飾+2)


ATK +12


品質 4


前段階の物よりしなりを強くした弓。

取り付けられた灰狼の一部から弓に

力が少量ながら流れ込んでいる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


この弓は木槌の場合を参考に、毛皮の数は変えずに牙の数を増やして装飾した物だ。

使った素材は毛皮×1、牙×4である。


「しかしこれはまた変わった物を作ったね。この灰狼装飾なんて見た事ないよ」


「えっ、そうなのか」


マルクの言葉は俺にはかなり意外なものだった。

ただ飾るだけで能力結構上がるのにテスターのマルクが見た事無いってどういう事だ?

てっきりもう誰かに作られてるもんだと思ってたが、そうでもないのか?


「そんな事無いだろ。だって素材使って飾るだけだぞ」


「でも、僕が知る限りこんな表記がついた物は見た事がない。ヤシャはどうだい?」


「………いや、俺もないな。βテストの時もこんな事してる奴は居なかったと思う」


マジかよ……。何やってたんだβテストの生産者。


「やっぱりそうか……。なあゼン、君にお願いがあるんだけど」


「えっああうん、何?」


驚きから唖然としていた俺は、マルクの声にしどろもどろしながら返した。


「この弓をここで売って欲しいんだけど、いいかな?」


「あっああ、別にいいけど。でも俺武器の相場とか知らないんだけど」


防具なら何回かロームの店で売って、商品とかも見てるから大体の目安はつくんだけども。

武器はなあ~~、ダリナの店でも値段とか全然見ないで出ちゃったからな。

う~ん、どうしたものか……。

そんな風に俺がうんうん唸っていると、マルクがこんな事を言い出した。


「じゃあ7000zでどうかな?今持ってる弓がATK

+10で5000zだからこれくらいで丁度いいと思うんだけど」


7000zか……。俺からしたら少し高い気もするが、マルクが言うならそこらが無難な値段か。


「分かった、7000zで売るよ」


「ありがとう、はい7000z」


マルクは俺に料金を渡すと、早速背中の弓をアイテム欄にしまい、俺の作った弓を装備した。

新しい弓を手に持つと構えたり弦を引いたりしながら調子を確かめている。

そんなマルクを見ていると、木槌を眺めていたヤシャが俺に声を掛ける。


「なあゼン、剣に装飾って出来るのか?出来たら俺にも武器を作って欲しいんだが」


「剣はなんとも言えないな。今までは資金が足らなくて鉄なんて買えなかったし、そのお蔭で鍛冶も修復した分しか上がって無いからな。モンスターの素材を剣に付けられるかどうかもわかってないし」


「そうか……、残念だけど仕方ないな。これに関してはネットで調べるって訳にもいかないだろうし」


「スマンな、折角頼んでくれたのに」


「謝る必要はねーよ。頼んでるのはこっちなんだしな。それより早く行こうぜ、時間がもったいない」


「そうだな。いつの間にか足も止まってるし、さっさと行こう。マルクももう先に進むぞ!」


「………うん、大体分かったから大丈夫。そろそろ行こうか」


そうして俺達は止まっていた足を再び森に向けて進み始めた。

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