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幾つか設定を変更しました。
スキル数 控え4→6、総合11→13
特殊3→4
武器 弓(装飾+1)ATK11→10、
長柄木槌ATK8→9、
長柄木槌(装飾+2)ATK14→13
※6/6 少々加筆しました。
「うわっ、人多っ!!」
それが俺が町に繰り出した時に出た第一声であった。
町には道に人が溢れており、まるで初日のような賑わいだった。
寧ろ、人の数だけなら初日よりも多く感じる位の数がいる。
しかし考えてみればそれも当然か。
今は現実時間で午後7時過ぎ、そろそろ社会人達が家に帰って来はじめる時間だ。
VRが出来て以来、ゲームを楽しむ人達の数は徐々に増加する傾向にある。
最近では、40代・50代の人もゲームに触れる事が多くなっているようだ。
このAROにもそういう年代の人がいても何らおかしな事はない。
この人の数の増加もそういうレイヤー達がいよいよログインしてきたからだろう。
パッと見て解るくらいの人数はいるようだ。
プレイヤー達の平均年齢が上がった為か、行き交う人達の年齢層の幅が見た目にも広くなっており、ファンタジーな風景を除けば本物の町にいる様に感じる。
今までだと若い人ばかりで、なんとなく違和感を感じていた俺としては、現実感が出てきて少し嬉しい。
そんな感じで、少しテンションの上がった俺は、初日以来の人混みの中をすいすいと進んで行った。
さて、教会と図書館、まずはどちらに行こうか?
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俺はまず宿屋から近い教会から回る事にした。
町の北の大通りを大きく斜めに横切りながら進み、教会前の小広場に続く小路に入る。
その道を真っ直ぐに進んでいくと、間もなく教会の建物が見えてきた。
「ってあれ?人がいない?」
教会前に到着するにはしたが、前回の時と同様、そこにはプレイヤーの姿形は見られなかった。
現在人口密度増加中の大通りと対称的に、ここはマルクに連れられて行った裏通りの様に閑散としている。
人の声が小さく響いてくるところまでそっくりだ。
「ここはえらく静かだな…。てっきり誰かしら居るかと思っていたが」
何故ここまで人がいないのか不思議に思いながらも、教会に近づきつつ、その建物に目をやる。
建物自体はそれほど大きさはなく、現実の町にあるような小さな教会を少し大きくした位のサイズである。
ただ、やたら古く見える所が大きく違うが。
教会の印なのか、建物の一番高い所に十字のマークが掲げられている。
俺は教会の入り口だと思われる両開きの扉の前に立ち、ドアノブに手を掛ける。
そのまま扉を開けようとーー
ガキッ
開かなかった。
何度も開けようと試みるが、ボロい見た目とは裏腹に随分としっかり作ってあるらしく、扉はびくともしなかった。
ノックをしてみても全く反応が見られず、物音も聞こえて来ない。
どうやら現在誰もいないようだ。
成る程、だからここには他に誰もいないのか。
扉も開かず、ノックしても返事無し。
おまけに人の気配もしないとくれば、そりゃあ大抵の人は帰りもするか。
期待が外れ、思わず俯きながらため息が出てきた。
「ハァ~~、……………ん?」
俯いた状態で目を開けると、視界にノブの下にある鍵穴と何かの印が入ってきた。
「何だこの印?」
顔を近づけてよく見てみる。
まず印だが、教会に掲げられている物とは違う、この町では見たこともない印だった。
掲げられた十字とは違い、どちらかというと模様や絵柄といった感じのある印だ。
どちらにしても今の俺には、これがなんなのかさっぱりわからないのであまり関係ないな。
取り敢えず忘れないように、スクリーンショットだけ撮っておこう。
次に鍵穴だが、これは建物と同様に古びていてかなりの年月を感じさせる。
別にボロくなっている訳ではなく、寧ろしっかりしている。
だが構造は単純そうで少しガチャガチャ弄ったら開いてしまいそうな雰囲気をかもし出している。
ふとある考えが頭の中を過る。
ーー誰もいないし、いっその事あけて(ピッキングして)やろうかーー
「っていやいやいや!!流石にまずいだろそれは!!」
ふとよぎった不穏な思考を頭を横にブンブン振って打ち消す俺。
実際、町での犯罪行為は凄く不味い。
万が一バレた時にどんなペナルティがあるかわからない。
何よりこのファンタジー世界で教会に不法侵入ってのがヤバい気がする。
下手したら、知り合ったNPCから総スカン喰らう、若しくはもっと酷い事に……。
「取り敢えず、ここにはまた後日来るとして今日は大人しく引き下ろう」
そしてとっととここから移動してしまおう。
ここにいたら誘惑に負けてしまいそうだ。
俺は鍵穴の誘惑から逃れるため、その場を急いで立ち去った。
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大通りに出た俺はメニューから町のマップを呼び出し、図書館の場所を確認する。
図書館はエントマの北東に位置していて、教会から大通りを挟んだ反対側の外周よりに建てられていた。
大通りを再び横切りながら、図書館までの道を歩いて行く。
到着した図書館は俺がこの町で見た建物の中でもなかなか大きかった。
まあ現実の図書館ほどではないがそれでも十分な大きさだ。
建物は基本は正三角柱で、さらにその角を同じ高さの太い円柱にしたような形をしている。
俺はそんな建築物を見上げながら、扉に向かって歩を進める。
扉に手を掛けて、少し引いてみる。
ガチャッ……
扉は何かに引っ掛かる事も無く、すんなりと開いた。
「ホッ……。よかった、今度はちゃんと開いたか」
思わず呟く。
教会みたくここまで鍵が掛かってたらどうしようかと思った。
今の状態で開かない扉の鍵穴をみたら、今度こそあの誘惑に屈してしまう気がする。
まあそれはともかく、さっさと中に入ろう。
開けた扉から中に入る。
「おおっ、スゲェ……!まさに本だらけだな」
俺の口から思わずそんな言葉が漏れた。
図書館の中は外観と違って円柱状の形をしており、二階まであるようだ。
まあ、二階と言っても人一人通るのが精一杯の狭い道みたいなもので、天井から一階まで広い吹き抜けになっている。
そしてそのフロアは大量の本が存在していた。
どれくらい大量かというと、とりあえず入り口から見える扉と窓以外の壁は全て本棚だった。
その本棚にはぎっしり本が並べられている。
それほど広さはないが、視界が本で埋め尽くされたこの風景はなかなかに圧巻だ。
回りを文字通りに本で囲まれているというのも初めての体験である。
図書館内の内装といい、AROを始めて今一番「ファンタジー」という物を感じてるんじゃないだろうか。
俺はその光景に回りを見回しながら、少しの間感動して呆けていた。
図書館入り口で、少しの間ボーっとしていた俺だったが、 何とか正気を取り戻して足を中に進める。
まずは入り口近くの受付に向かう。 受付には司書らしき一人の若い女性NPCが座っていたので 試しに話しかけてみた。
「すいません」
「はい、なんでしょうか?」
う~ん、そうだな。 この図書館の情報は公式では全く無かったので、とりあえ ずこの施設について聞いてみるか。
「えっと、ここにはどんな施設何ですか?」
「ここはエントマ公共図書館です。ここでは保存されてい る町の歴史に関する資料や様々な書籍を、町民の皆様に公 開しています。」
「俺でも利用できるんですか?」
「はい、大丈夫ですよ。ただ町民でない方の場合、利用料 金として500z頂く規則になっております。ご利用なされ ますか?」
そう問われて少し悩む。 500か……、少し高い様なそうでない様な、微妙な金額だな 。 昨日弦やら弓やら買ったせいでそんなに所持金に余裕がない今の俺には少々高く感じてしまう。 けどここで引き返すのもなぁ……。
「まあ、折角来たんだし一回入ってみるか」
悩んだ末、中に入る事にした。 受付の女性に500z支払う。
「はい、確かに500z頂きました。どうぞ中へお進み下さ い」
「と、そうだ。ここで本の貸し出しはやってるんですか? 」 それも一応確認しとかないと。
「いえ、当館では中の書籍等の持ち出しは規則で禁じられ ております。くれぐれも、なさらないよう、ご注意下さい 」
そういうと女性はニコッとなかなか迫力のある笑顔を俺に むけた。 その迫力に思わず顔が引き吊る。
「わ、わかりました。気をつけます」 返事までかんでしまった。
俺の返事を聞いた女性は発していたプレッシャーを治めて 、 「では、どうぞゆっくりとご利用下さい」 と言って、一礼をした。
そんな彼女に一言礼を言って、俺は奥に進んだ。
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