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page 12




「おい、いったいどういう事だ!」


ドガロの店に到着した俺は、店の中に入るとカウンターにいるドガロに向けて開口一番にそう言い放った。

対してドガロは、店内に誰もいないせいか、カウンターに肘をつきながら面倒臭そうな顔でこちらを見ている。


「なんなんだよ、勢い良く店に入って来たとおもったら、藪から棒に」


「あんた、武器屋のダリナに昨日のミスの事、話しただろ」


「あ、なんだ。ダリナに会ったのか」


「ついさっきな!初対面なのにいきなり言われてビックリしたわ!」


俺がそう言うと、退屈そうな表情をニヤニヤした笑い顔に変化させて

「顔覚えてもらえて良かったじゃねぇか。知り合いが増えるのは良いことだぞ?」

なんて事を悪びれも無く言ってきた。


「そう言う問題じゃねえ!俺は初対面の人から突然自分のミスの事言われて凄く恥ずかしかったんだぞ!まさか他の人にも話して無いだろうな!?」


「ないない、俺が話したのはダリナにだけだ。大体わざとでもねぇのに1日でそんな多くに広められるわけねぇだろうが」


「うっ!?」


ドガロの正論に言葉を詰まらせる俺。

更にドガロの台詞は続く。


「確かにお前の話を酒の肴にしたのは俺が悪いが、こんな小せぇ事にそんながなりたてるのは男らしくねぇぞ?それくらいの事、笑い飛ばせるくらいにならなきゃならねぇな」


そんな感じの台詞がドガロから出てくる。

まぁ確かに、言われてみれば俺の反応も少しオーバーだった気がしないでもない。

他所からみたら男らしくない言動と言われるだろう。

ドガロの言葉に思わず納得してしまった俺は、上手い返しも出てこずに黙り込んでしまう。


そして被害者のはずの俺が責められているおかしさに気付くまで、約10分近くの間、ドガロのお説教にも似た台詞を聞かされ続けるハメになるのだった。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いやスマンスマン、つい思った事が口をついて出ちまう性分でな。許してくれ」


アッハッハとまるで悪びれた様子も無く笑うドガロ。

その姿に、思わず体の力が抜けさせられる。

さっきまで猛っていたはずの感情も、このオヤジの様子を見ている内にいつの間にか何処かにいってしまったようだ。

色々抜けてしまって、これ以上怒るのもなんだかバカらしくなってしまった。

正直、上手く誤魔化されたような気がするがもう怒る気にもならないので、今日の所はこれでいいだろう。


俺はため息を吐きながら、ドガロに話し掛ける。


「……ハァ、取り敢えずもういいよ。だけど、他の人に俺のミス話とかなるべくしないでくれよ。あれ結構恥ずかしいから」


「へいへい、わーってるよ。

で、今日は何を買いに来たんだ?まさか文句だけ言いに来たわけじゃあるまい」


「ああ、弓を作るから弦が欲しいんだ」


「ほう、武器作りか。剣とかも作ってんのか?」


「いや、まだ必要な分の鉄を買う金がない。

てか、そんな金あったらまずこの木槌をどうにかしたいよ」


「ハハッ、そりゃそうか。弦は何本欲しい?」


「取り敢えず15本くれ」


その言葉を聞いたドガロは軽く驚いた顔をする。


「おいおいそんなに買うのか?弦だけでも安くはねぇんだぞ」


「その分作って売るからいいんだよ。それにその弦は練習用だ」


店に来る途中で思い出したが、確か店売りの弦の他に、ブラックスパイダーの糸で弦が作れた筈だ。

ただ蜘蛛の糸で作る場合、一本作るのに複数の糸が必要になるらしい。

今の俺の手持ちの数だと作れて1.2本で数が足りない。


「まっ、お前がいるっつうんなら売りはするがな。ほれ、こいつだ」


「サンキュ、じゃあ今日はこれで」


「おう、なんか入り用になったらまた来な」


俺は、弦の入った箱を受け取ると、ドガロに挨拶して店から出ていった。


宿屋に向かう前にメニュー画面を開き、時間を確認する。

ゲーム内時間で現在正午前になっていた。


(う~んもう昼か。スタミナの事もあるし、帰りに出店でなんか買って帰るか。広場ならこの時間でも店が出てるだろうし)


俺は広場で食事を買ってから帰る事にした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ふぅ、ご馳走さま。 …さて、昼飯も食い終わったしそれじゃはじめるか」


部屋で買って来た食事を終えた俺は、いよいよ弓の作成に取り掛かる事となった。

ボックスから必要な材料と道具を取り出して作業台に着く。

使うのは木材と先程買った弦、初心者用木工セットである。

今回使うのは二種類ある木材の内、軟性の木材を使用する事にした。

それらを台に乗せて作業を開始する。


1、まず木材を木目に沿って、適当なサイズの曲がりのある棒状に切り出す。

2、次に切り出した木材を中心部を太く残し、端に向かってある程度の細さに削っていく。

3、削った木材の中心部を台に固定、しなりが出るように両端を徐々に曲げながらさらに削る。

4、固定を外して中心部分を握りやすい太さに削る。

5、弓全体にやすりをかけて、両端に弦を取り付ける。


これらの工程を経て、弓の完成となる。

完成すると座ったまま体を一伸び、軽く息を吐く。

出来上がった弓を手にとって、ステータスを確認する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


素人冒険者の弓




ATK +1


品質 2


素人が作ったと思われる弓。

攻撃力も低く、弓としては最低ランク。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



…………これは、酷いな。


確かに3の工程で折れるのが怖くて、余りしなりが出せなかった上に形もどっか歪な弓だけど、これは酷い。

説明にもはっきり素人とか最低とかって書かれてて、凄い凹む。




ーーまあ、何時までも凹んでいても仕方ないので、とっとと次の弓の作成に掛かろう。

今度はしなりをもっと強くして、形状も気にしながら作ってみよう。

素人からはなんとか抜け出さなければ。





このあと俺は、試行錯誤を繰り返しながら何本も弓を作り続けた。

やはり最初はスキルが低いせいか、なかなか上手く往かず失敗が続いた。

特に失敗が多かったのは3の工程で、削っている途中で弓が折れてしまう事が殆どだ。

また、比較的硬いもうひとつの木材で作ってみようともしたが、何れも失敗に終わっただけだった。

硬い方の木材は余りしならずに、無理に曲げようとしてもしなる前に折れてしまっていたので3本折った時点で使う事を諦めた。



それでもスキルが10を越えたあたりから、漸くどこまで曲げられるかが掴めてきたようで、軟性のある木材なら途中で折れる事は無くなり、形状も見れる物ができるようになってきた。


それで出来たのはこれだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


見習い冒険者の木弓



ATK +5


品質 4



木で作成された弓。

モンスターと戦うための最低限の攻撃力

を備える。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



そんなに良く出来てたわけじゃないが、一応素人は外れたのでほっとした。

確か初期弓のATKが3だった筈だから、漸く一歩前進と言った所か。


一先ず、一段落着いた事で気が抜けたのか、突然疲れが出てき始めた。 少々の空腹感もある。

取り敢えず現在の時間を調べる為に、メニュー画面を呼び出す。


「うっわ、もう6時過ぎてるじゃないか。そんなに時間使ってたのか。SPもWPも3割切っててギリギリだなぁ」


集中していて気がつかなかったが、どうやらかなりの時間作業に費やしていたようだ。

ーーーまだ少し試したい事があるし、後一本だけ作って終わりにするか。

そうして、本日最後の弓の作成に取り掛かる。


まぁ、試したい事と言ってもさっきまで作成していた物と基本は変わらない。

握りの部分の形状を少し変えて、余っている他の素材で弓を装飾するだけだ。

使う素材は灰狼の牙、灰狼の毛皮を使う。

因みに牙は長い犬歯1本と他4本で1セットになっている。

序でに最後なので弦も蜘蛛糸で作った物を使おう。


では作業開始


1・2・3は余り変わらないので省略、但し中心部分は先程より少し太めに残す。

4、握る部分を削る際、その部分を弓の描く曲線の内側に少しずらしてつくり、上下の握る部分としならせる部分の境は細長くした卵形に削り出す。

5、卵形の外側の先端を少し削り、そこに犬歯を握る側に反るように取り付ける。他4本は卵形の形に沿って、四方を囲むように取り付ける。これを上下両方に行う。

6、取り付けた牙を角が出るように削り、弓全体にやすりをかける。

7、灰狼の毛皮から毛を傷付けないように取り除き、皮を包帯の形に切り、握り部分に巻き付ける。

毛は捨てずにまとめておく。

8、まとめた毛を2つの束に分け、弓の両端を覆う様に接着する。

9、最後に蜘蛛糸で作った弦を取り付ける。


………なんか工程が大分増えた気がするが、そこは気にしないでおこう。

出来上がった弓を手に取り、ステータスを見てみる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


見習い狩人の木弓(灰狼装飾+1)



ATK +10


品質 4



前段階の物よりしなりを強くした弓。

取り付けられた灰狼の一部から弓に

力が微量ながら流れ込んでいる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おおう、なんか結構上がったな」


このステータスには俺も少々驚いた

まさかATKが10を越えるとは思わなかった。

まあ、品質が低いから蜘蛛糸の弦と灰狼装飾のお蔭何だろうけど。

しかしこの灰狼装飾って何なんだ?

付けた飾りの事だっていうのはわかるんだが、俺の予想とは少し違った形になったな。

俺はてっきり黒蜘蛛の籠手みたいな別の装備になると思ってたんだが、何が違うのだろうか?

それに、この飾りの部分だけ他よりも難しくなっていた。お蔭でこの工程だけでかなり時間がかかってしまった。その辺りも気になる所だ。


と、そんなことを考えているとーーー




グゥゥゥゥ~~!!



大きな音が俺の腹から響いてきた。

腹の虫である。


「腹の虫?って、あ!!」


そうだ!!俺SPもWPもギリギリだったじゃないか!!

すっかり忘れてた!!


慌ててメニュー画面を呼び出し、ゲージを確認すると、


「げっ!!もう両方2割切ってる!!」


ヤ、ヤバいヤバいヤバい!!このままだと宿屋で餓死してしまう!!

と、取り敢えず広場だ、広場行けば何かある筈だ!!


俺は作った弓やら使った道具やらをボックスに叩き込むと、慌てて外に飛び出して行った。




因みに町の中では普通に行動してるかぎ

り、SPやWPは消費される事はない。

俺がその事を思い出したのは、飯をがっついて空腹を満たし終わった後の事であった。


どんな時でも人はパニックになってはいけない。

今日それを俺は思い知った。




これからは自作した武器のステータスに軽い説明文を上記のように入れていく積もりです。


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