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page 11

結局また投稿に4日かかってしまいました。




AROにログインした俺は、防具を売るためにロームの店に向かった。

町の中は相変わらず多くのプレイヤー達が行き交っており、ザワザワと騒がしい。

町の広場では、5人前後の人数の集団が固まって行動しているのが見える。流石に三日目ともなると、パーティーを組んで動くプレイヤーも出てきているようだ。各々の装備も違いがでており、着ている物も鎧やローブ等に変わっている。


ただ初日とは違って、広場でのメンバー募集の呼び掛けは行っていないようなので、そちらはギルドに移動したのだろう。確かギルドにはそういう役割も有ったはずだ。




ロームの店に到着した俺は、昨日と同じ様にロームに作成した物を見てもらった。


今回は一人で狩った分の素材しか無かったので、昨日より作成した数は大分少なく、各防具の数はそれぞれ半分以下しか無かった。

だが幸いにも、スキルの上昇により品質とDEFが上昇した為、防具一つ当りの値段は昨日より少し高くつけてもらう事ができた。


防具の売却を終えた俺は、特に他の用事も無かったのでロームに礼を言いながら店を出た。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



再び町に出た俺は大通りを歩きながら次の行動について悩んでいた。


このAROは公開するに当たって、ゲームの魅力の一つに"自由度の高さ"を上げている。

プレイヤー達は自分でスキルを選択し、戦ったり、物を作ったり、ギルドでNPCから依頼を受けてクエストに挑戦したりして、様々な人々と交流を重ねて"もう一つの現実(Another Reality)"であるこの世界で"もう一人の自分"を作り上げ、生活していく。

このゲームの中で何をどうするかは、そのほとんどが自分の判断で決定され、進められる。

ゲーム側から方向性を示される事はほぼない。


つまり、俺が何を言いたいかとゆうとだ、



「……ヤバい、考えても次どうしようかが決まらん」


こういった状態になってしまったのである。


まあ、秀樹から聞いた話によるとAROに限らず、この手のゲームでこんな風な状況に陥る事はよくある事らしい。

ゲームに置ける"自由度の高さ"が"プレイヤーの行動の迷いやすさ"になってしまっているのである。


色々やれて飽きがこないゲームというのは嬉しいが、選択肢が多くて迷ってしまい、結果的に何も出来なくなってしまっては本末転倒だ。

やれる事が多すぎるというのも考え物である。




とは言ったものの、今の俺にやる事がないかというとそんな事はない。

ゲームが始まってまだ三日目、現実時間ではまだ初日が終了してない現状でそんな事態になるはずもない。

むしろ逆にやらなければならない事は積み上がっているくらいだ。

それを簡潔に纏めて見るとこんな感じになる。


 ・現在取得している各スキルの上昇

 ・武器の更新

 ・↑の為の鉄素材購入資金の調達

 ・資金調達の為の防具の作成

 ・足りない素材補充の為の狩り

 ・初日に採りすぎてアイテムボックスを圧迫している木材の消費


とまあ、これだけのやる事が今現在の俺にはあるわけである。

やる事が分かっているならやればいい。

確かに俺もそう思うのだが少々気分が乗らなかった。


さっき挙げた中で俺がやりたいのは、スキル上げと武器の更新、木材の消費である。

俺的にはさっさとこの木槌から卒業したいので、武器の更新に取り掛かりたいのだが、その為にはまず素材補充の狩りをしなければならない。

しかし、その狩りが俺には気が進まない。


別に狩り自体が嫌な訳ではなく、狩る場所と獲物に問題がある。

現在、俺が狩り場にしているのは町の東にある森だ。他のプレイヤー達がいる西の草原は未だにプレイヤーの密度があまり改善されておらず、効率も良くない。

対して森の場合は、草原と比べてモンスターも強く難易度は高いがまだ人もあまりおらず、奥に行かなければ俺でもなんとか効率の良い狩りが行える。

まあこれもカウンターと隠密があってこその話なのだが。


なのでスキル上げの面からいっても必然的に、狩りに行くなら森、という選択になってしまう。

そして、この森とそこで狩るモンスターが問題なのだ。

前にも言ったが、俺的に森は避けたいのである。

確かにモンスターは安定して狩れるようになった。

スキルの上昇で攻撃力も上がったし、カウンターも訓練のお陰か、直線でのグレイウルフ相手ならほぼ確実に出来るようになった。


だからといって初心者の俺がもうモンスター相手に慣れたかと言えばそんな事はない。

牙をむき出しにして此方に突っ込んでくるグレイウルフを前にすると緊張するし、隠密中なんていつ気付かれるかと気が張りっぱなしである。

俺がこういう事に慣れるのには、もう少し経験を重ねないとだめらしい。

しかも昨日は、知らないプレイヤーに後ろをつけられるという出来事まで起きた。


はっきり言ってしまえば精神的にキツいのである。

今日は町の中で、何か作りながら静かに過ごしていたい。

それにスキル上げや木材の消費も今日やっておきたい。

今の俺が取得したスキルの成長具合は、

 鍛冶Lv3、木工Lv1、裁縫Lv10、鑑定Lv10、隠密Lv13、盗賊Lv1、身体強化Lv18、闘金槌Lv22

となっている。

スキルを上げる機会のない盗賊と鍛冶が育たないのは仕方ないとしても、木工が未だに1なのは少々気になっている。ボックスに大量の木材が眠っているにも関わらずだ。

ドガロの店に売るという手もあるが、折角採取した物をただ売るというのはなるべくしたくないので、それは最期の手段にしておきたいところだ。




散々悩んだ結果、結局木材で何か作る事以外に出来る事が無いことに気が付いた。だが、何を作ればいいかが思い浮かばなかったため、何かヒントの有りそうな場所へ向かう事にした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



カランカラン


小さな鐘の付いた扉を開きながら俺は店の中に入った。

その店の中には様々な武器が、壁に沿って置かれた棚の上に見やすいように飾られている。


ーーそう、俺が向かった先はドガロに教えてもらった武器屋だった。

ここならば何かしらヒントが得られるだろう。



「だけど、一言に武器って言っても色々あるんだな」


店の中を見回しながら俺はそう呟く。

棚に置かれているのは剣や槍といったメジャーな武器ばかりだがそれでもかなりの数がある。


恐らくだが、ここに並べられている武器は、初期に取得出来るスキルに合った武器なのだろう。

よく見てみると、数は多いが大まかな種類分けだとそれほど多種という訳ではなさそうだ。


ただ、この店にある武器達にはどれも金属が使われていて、今の俺には作れそうにない。


このまま武器を見ていても楽しいが、俺はこの店に来た本来の目的を優先させる事にした。

俺はカウンターに座っている中年の女性に話し掛けた。


「すまないがちょっといいか?」


「ん?なんだい、ウチじゃあんたの持ってる武器は扱ってないよ」


「いや、武器を買いに来たんじゃないんだ」


俺のその言葉に女性は不機嫌そうに顔を歪める。



「じゃああんたは何しに来たんだい?冷やかしなら帰っとくれよ」


「冷やかしじゃなくて、少し聞きたい事があるんだ」


「聞きたい事?」


少し表情を緩めてくれた。

一応此方の話を聞いてくれるらしい。



「木で作れる武器を聞きたいんだ。金属はなるべく無しで出来る物がいい」


「金属無しで?そんな事いったら弓ぐらいしか作れないよ」


「!そうか、そう言えば弓があったな…。なんで思い付かなかったんだろう」


木で作れる武器が有った事より、そっちの方が驚きがでかい。

ホントになんで思い付かなかったのか自分でもビックリである。

自覚はしていたが、どうやら俺は自分が思っている以上に疲労していたらしい。まさかここまで頭が回らなくなっているとは思わなかった。

防具の売値が上がって少々浮かれていた事も、それを助長したんだろうな。


俺が自分の余りのボケっぷりに愕然としていると、それを不思議に思ったのか、女性が声をかけてきた。



「どうした、もう聞きたい事とやらは終わりかい?」


「あ、いや、弓の弦ってここで売ってるのか?」


「弦は町の道具屋で売ってるよ。ここは、武器の売買のみだからね」


「ドガロの店か…。あそこって割りと色々な物売ってんだな」


ふと呟いた俺の言葉に、女性が先程と少し違う反応を示した。



「なんだい、あんたドガロの知り合いかい」


「?、ああ、つい昨日知り合ったばかりだけど」


俺の台詞を聞いた途端、女性はニヤッとした笑みを浮かべて

「…へぇ、という事はあんたがドガロの言ってたゼンって男だね」

と返してきた。


女性のその発言に俺は驚きを隠せなかった。

なんでこの人俺の名前知ってるんだよ。俺がドガロと知り合ったのは昨日だぞ。

俺は女性にその事について聞いてみた。



「それってドガロから聞いたのか?ドガロと知り合ったのって昨日なんだが」


「ああ、そうだよ。昨日の夜に飯屋でアイツと偶々会って、その時にあんたの事を聞いたのさ」


「ドガロはなんて言ってたんだ?」


「ウチの店に防具屋も武器屋も知らない半人前の鍛冶師が防具を売りに来た、って言ってたね。あまりにも情けなかったから思わず世話焼いちまった、とも」


「ブッ!?そ、そうか…」


どうも俺が知り合ったあのクソオヤジは、最悪な事に俺の恥ずかしい凡ミスを自分の知り合いに吹聴して、拡散させているらしい。

なんて余計な事をしてくれてんだ、あのオヤジめ。


俺が恥ずかしさから拳を握りしめて、顔を俯かせている。そんな俺を見て、笑いながら女性が話し掛けてくる。



「アッハッハ。ほら、そんなに落ち込むんじゃないよ。男なら顔を上げな」


「ハッ!あ、ありがとう」


「あんたがドガロの知り合いなら、一応自己紹介くらいしとこうかね。あたしは武器屋のダリナってんだ」


「ゼンだ、よろしく」


「ウチは武器の買い取りもやってるから、なんか用事があったらまた来な」


そんな会話をした後、情報のお礼がわりに見本用に弓と矢を買って店を出た。


そして、そのままドガロの店を目指して早足で移動を開始した。

まずあのオヤジにあの事をどれくらいの人数に言ったのか確認しなければ!!

俺は、これ以上話が他者に広まっていない事を祈りながら、大通りを進んで行った。



NPCについての説明


町の住民達にはそれぞれ親交を持つ為の条件が隠されてます。条件は人によって様々で、ドガロのようなプレイヤーに接する機会が多いNPCほど条件が厳しくなっています。(*一部特例あり)

また、NPCはNPC同士で繋がりを持っている場合があってそちらからの紹介で親交を持つ事もできます。



例 ) ドガロの条件


・特定の時間に会話をする(ドガロの場合、1日に15分間)

・店に自分以外誰もいない時に会話する

・ドガロAIの興味を引く行動、もしくは会話をする。

・上記の条件を同時に行う


ドガロの場合、現在プレイヤー達に良くない印象を持っているため、条件に-補正が働いています。


ゼンがドガロと親交を持てたのは、まったくの偶然でしかありません。


追記

*防具屋のロームはβテスト時より条件が緩く変更されてます。

この変更により彼のこのゲームでの役割は"NPC人格の存在をプレイヤーに教える事"が追加されました。



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