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作者転生~なんか設定と違うんですけど!~  作者: 膝関節の痛み
第2章 悪役令嬢について

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管理人なヤツ

 この世界には当然魔法がある。

 だが、それは私がRPG企画段階でやりたかったものとは程遠い、ショボいものに過ぎない。

 かく言う私が使えるのも手のひらサイズの火の玉を出すファイアのみだ。飛ばすことさえできない。作者なのに。


 設定では、およそ200年前に魔王が倒された後、魔法は新しい体系に組み直されたことになっている。

 攻撃魔法を中心に多くの魔法が禁止され、やがて失伝。

 魔法技術自体が衰退し、この時代、実用的な生活魔法や魔道具での利用を除けば、魔法の価値は大きく低下している。

 これから私が暮らす王都では、初級火魔法のファイアボールでさえ、使用には免許がいる。

 まあ、平和な街中で火球をぶっぱなすやつは捕まって当然だとは思うけど、それにしたってファンタジーなんだから、もうちょっとやり方があったんじゃないかと思う。


 なぜこんな世界になってしまったか?

 それは犬Pがそう決めたからだ。


 弟王子を諫めた騎士団長の息子が逆切れした弟王子の風魔法でズタズタにされ、それを回復魔法で癒したヒロインの優しさに心が揺らぐ、というイベントはボツにされた。


「この流血シーンはコンプライアンス的にどうかと思うんデス。

 乙女ゲームは、愛の物語デスから、暴力はいけませんネ。

 そうダ! いっそのこと、攻撃魔法はナシにしましょう」


 馬鹿かお前?思い付きで言ってんじゃねーよ。

 攻撃魔法はロマンなのに!

 インパクトのあるシーンをカットして、小言を言う→無視される→落ち込む→慰められる→惚れる、のどこで盛り上がれっちゅうんじゃ!!


 面倒だが反論せずにはいられなかった。

 RPGの世界の未来であるなら、そこは設定の根幹だからだ。


「うーん。わかりましタ。

 ボクは話の分かるボスですからネ。

 ならば、危険な魔法は成人してからの許可制ということにしまショウ。

 王都は治安がいいのデス。暴力は必要ありません」

「それを言うなら剣だって危ないじゃないですか!」


 思わず言い返した一言が、さらに墓穴を掘った。

「Oh、確かに!

 それもコンプライアンス的に問題デスネ。

 うん、それなら帯剣も成人してからの許可制にしましょう。

 OKなのは護身用の短剣まで。

 学校で使うのは木剣にしてくだサイ」


 おい、おっさん。

 木剣とか、剣って名前付いてるけど要は木の棒だからな。

 王都以外ではOKとか、成人後ならOKとか、意味ねーんだよ!

 そもそもこれ、「剣と魔法の世界」の王都が舞台の学園モノだかんな。

 剣も魔法も禁止されたら成立しねーんだよコンプラ厨死ね!

 ムカついたので、裏設定で魔法を弾圧した愚王のモデルにしてやった。

 まあ社畜のうさ晴らしですよ、すんませんね。


 ――王都屋敷の掃除は全部手作業なので、すごく時間がかかる。

 掃除魔法の「クリーン」とかが使えばいいのにとか考えていたら、前世のクソ上司を思い出しちゃったよ。


 実家から駅馬車を乗り継いで約三週間。

 昨日は初めて目にするリアル王都にちょっとテンション上がってたのに、翌日にはもうささくれてしまった。いかんいかん。


 でも掃除魔法については、駄犬Pの責任じゃなく私自身が設定しなかったせいだから甘んじて受け入れるしかない。

 だってさ、ストーリーに関係ない日常の便利さなんて考慮する必要がなかったんだよ。

 エセ中世の貴族の掃除は使用人のお仕事。お貴族様な登場人物には無関係だからね。


 前世を思い出してから四年が過ぎ、私は13歳になっていた。

 来春、ゲームの舞台となる王立の高等学園に入る予定なのだが、なぜ1年近く前に王都に来たかというと、実家から出された「王都屋敷の管理」という条件をクリアするためだ。


 宮廷詰めの法衣貴族を除き、自領持ちの貴族は王都に別邸を構えている。

 四代前の王の時代まで続いた、地方貴族の嫡子を王都に置くという法の遺産である。

 受験勉強で学んだ王国史によると、隣国との戦争が続く中で、貴族の血筋を保護するという大義名分のもと、叛乱防止ための人質を取るのが第一の目的であったらしい。

 日本の江戸屋敷と同じ感じね。


 戦争が終結すると、王は内政に力を注ぎ、その過程で王家に反意を持つ貴族は粛清されたため、嫡子預かり制度は意義を失って廃止された。

 領主が王都屋敷を使用する機会も徐々に減り、パーティー嫌いと噂される現王の代になってからは、辺境の貧乏貴族にとっては無用の長物と化した。

 管理人を置いて維持するのが精一杯といったところだ。

 我が実家ナンチャーラ男爵家も当然それに含まれる。


 私が考えていない細かな設定は、この世界が勝手につじつまを合わせてくれるみたいだ。 それについて特に文句があるわけではないが、せめて実家を小金持ちくらいにしておけばよかったとは思う。まあ今さらな話だけど。


 そんなわけで、貧乏田舎貴族であるナンチャーラ家は、管理人のおじいさんが腰痛の悪化のために奥さんといっしょに領に戻ると、後任を探す余裕もなく、王都屋敷は二年前から実質放置されていた。 

 王都の学園への入園を希望する私が、その管理人に任命されたわけだ。


 本当は、衣食住が保証された寮に入りたかったのだが、もちろんそんなお金はない。

 母曰く。

 家はある。仕送りはできないが管理人としての給金は出す。最低限だがうまくやりくりしろ。足りない分は働け。借金したら実家に戻す。嫌なら入園は認めん。

 とのことだ。


 もちろん受け入れましたさ。

 前世で一人暮らしは慣れている。問題ない。


 もう一つ、「学費減免の準特待生以上で合格」という条件もあるのだが、ここはエセ中世。

 前世の教育を受けた身としては、あまり心配していない。

 前世知識が通用しないところはしっかり勉強してるし、大丈夫でしょ。


 他に努力目標として「領産品の販促」っていうのもあるけど、そっちはそのうち余裕ができたらってことで。


 ナンチャーラ家王都屋敷は貴族街の端っこにある。

 家を継ぐまで王都の騎士団にいたひい爺ちゃんの代に建てられたというから、築100年以上の物件だけど、しっかりした石造りでボロい感じはない。


 一階はリビングと管理人室と水回り、二階に領主用の広い部屋と小さめの客間いう間取りだ。

 前世的に言えば庭付き2階建て3LDK。

 ライフライン系も完備。火と水は魔道具、トイレはお約束のスライム処理だ。

 まあね、周りのお屋敷と比べると実にこじんまりしていて、屋敷というより普通の戸建てにしか思えない。3LDKとか言ってる時点で屋敷じゃなんだけどそこはそれ。


 にしてもだ。元会社員に3LDKは広い。しかも二年間放置。

 掃除の大変さは前世のワンルームとはわけが違う。

 さらに言えば、掃除機もない。掃除魔法もない。

 かくして私は、ひたすら床の砂埃を拭き続けたのである。


 家の掃除には3日半かかった。

 途中変なスイッチが入って延ばした箒で天井を刷き始め、落ちた埃でそれまでの床掃除が無駄になったりもしたけど、おかげでこの達成感だ。

 徹底的に拭き上げた床には塵ひとつない。壁もくすみが取れた。

 すばらしい。今から土足厳禁にしよう。


 庭は、初夏という季節のせいか、落ち葉もなくぱっと見で荒れた感じはない。

 ただ、家から見て左側の石畳の痛みが激しい。

 何箇所も剥がれたり割れたりしていて、隙間から雑草が生えている。

 でも、一人で石の張替えなどできるはずもないから、今はそのままにしておくしかない。

 あの辺りはそこそこ日当たりが良いので、いっそのこと、石畳をはがして家庭菜園にしてしまう方がいいかも知れない。

 そうね。それなら修繕費も必要ないし。


 さすがに疲れた。お昼過ぎなのに体が重い。

 まだ食材も調味料もちゃんと揃えていないし、これから調達する体力もないので、今日も屋台で何か買ってくることにしよう。

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