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作者転生~なんか設定と違うんですけど!~  作者: 膝関節の痛み
第1章 作者について

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死ぬヤツ

 新作RPGのシナリオ担当になった時は素直に嬉しかった。

 入社5年。これまで何作かアシスタントとして地道に頑張ってきた日々がついに報われた気がした。


 そりゃ気合入るよね、ずっとやりたかった仕事だもん。

 学生時代から書き溜めていた原案を全部見直し、出来のいいものをいくつかピックアップして修正し、三つ選んでプロデューサの中村さんに提出した。


「ああ、なるほどな。王道捻った系やな。これでええんやないか? 他のはあかんけど。

 OK。来週アタマに開発の全体ミーティングやるから、それまで資料まとめといてな」


 一番自信があったヤツがあっさりボツってちょっと心が抉られたけど、なんとかOKをもらって、開発が本格的にスタートした。


 チーム内で打合せを重ねながら設定が決まり、主人公をはじめとする主要人物のビジュアルのイメージ画が出来上がる。マップが作られ、物語のスタート地点となる王都のグラフィックのラフが届けられる。


 脳内でイメージしていた世界が次々に形になってゆくのに感動しながら、私の筆はサクサク進んだ。

 こりゃ名作確定だわ。

 とか思っていた。

 その後やってくる地獄も知らずに。


 いきなり開発中止を言い渡されたのは、スタートから二ヶ月経った頃だった。

 新たに資本参加した外資からの横やりだった。

 開発費を1つの作品に集中させるのではなく、軽めの作品を数多く出し、リスクの分散を図るべきだ、とかなんとか。


 シナリオは全体の七割くらいが書き上がっていた。


 外資は経理畑出身の専務が連れてきて、とっくに現場から離れていた社長を説得したらしい。

 それはいいんだ。会社の基盤がしっかりするのに越したことはない。

 でもね、開発途中の作品を中止にするのはないんじゃないの?


 当然現場は反発した。

 中村さんは辞表片手に役員室に乗り込んでいった。


「あかん、話にならん。ごめんな」


 そのまま辞表を叩きつけた中村さんは、有給を消化して1カ月後に会社を辞めた。


 新しいプロデューサは、アイク下村とかいうアメリカ帰りのキモい日本人だった。

 何がアイクだよバーカ。知ってんぞ、本名小太郎のくせに。それ、親戚ん家のアホ犬の名前だぞ?

 私は心の中で犬Pと命名した。横入り外資の犬にはぴったりだ。


 犬Pは着任するとすぐ「改革」とやらに着手した。

 開発スタッフは3つのチームに分割され、私は乙女ゲームのシナリオを担当することになった。


「今まで君が作っていたゲームのリソースを見ましタ。キャラクターと王都のビジュアルはリサイクルできますネ。

 舞台は、200年後あたりにして、王都だけでストーリーを完結させれば、かなり時間を節約できるでしょう。

 登場人物も最小限で。勇者も魔王も必要ないデス。

 はい。では、そのように進めてくだサイ」


 変な外国語っぽい訛りを指摘しないでいあげたのに、制作チームの真っ当な反論は受け付けられなかった。私に限らず、情熱を傾けた作品を会社都合で壊されたスタッフの気持ちとか、ことごとく無視された。


 効率がどうとか、ゴチャゴチャ細かい数字とか出すなや。こっちはそんな話してんじゃねーんだよ!

 って、私も辞表を叩きつけてやろうかと思った。

 だが、ギリギリでこらえた。


 貯金がない。ここでキレちゃ、来月から生活できない。

 彼氏とも別れたから転がり込む家もない。

 それに、作れなかったRPGのグラフィックが使われる乙女ゲーが、知らない誰かの手で作られるのもいやだった。

 会社を辞めるのはこれを作ってからと自分に言い聞かせて、私は黒歴史確定の作業に入った。

 ひとつだけつけた条件は、スタッフリストに名前を載せないこと。

 本名でのデビュー作は次に取っておきたかった。 


 犬Pはひたすらめんどくさかった。

 数字だけ気にしていればいいのに、制作に妙なこだわりを持っていて、現場に口を出すタイプのPだった。


 プロットを出せば、「これはこれでいいですが、ちょっと別パターンも書いてみてくれますカ? そうね、コメディーテイストを盛り込んだストーリーもありだと思うんですヨ」とか、思い付きで別パターンを要求された。

 結局書いたのは、元の案も含めて5パターン。


 追加したのは、コメディー、バトルもの、BL、ホラー。

 大筋だけとはいえ、テイストが全く違うストーリーを短期間に4本追加とか、天才でもない私にとってはそもそも無理な話だ。

 最初に言われたコメディーは多少真面目に考えたが、あっさり不採用になった後の残り3つは適当に流した。

 案の定、採用されたのは結局最初のヤツ。


 後半手を抜いたとはいえ、無駄にキラキラした目にボールペンを突き刺したかった。


 あとは、人物設定へのこだわりがキモかった。


「北の大地にお住いのシナリオの神様は、台詞が一言だけのbit characterでさえ、詳細なプロフィールを作るんデスヨ。

 それによって役に血が通い、その人生が交錯するドラマの世界は深みを増すんデス」


 なるほどなあ。さすが神様。実写の映画やドラマなら確かに深くなるだろうなあ。

 だがな、犬。これは乙女ゲーだ。しかも低予算だ。登場人物は3D吐き出しの2Dだ。人物の動きは口パクだけだ。

 攻略対象の取り巻きの、台詞のほとんどないキャラの人物像を掘り下げる必要がどこにある?

 王都から一歩も出ないのに、各貴族領の名産品を考えてどう物語が深まる?


 言い返すのも面倒だったので、黙って言われるとおりにしたが、それは悪手だった。

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