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ギルドボス  作者: 蟹谷梅次
第一章 破壊金風児/シャボラ解体
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第四話 瓶が割れて

 街に出て、公衆電話を見つけると、【銀王】のギルドボスに電話をかけた。奴は俺の事を追い出してすっかり無関係になった気でいるけれど、俺はまだまだ骨の髄までしゃぶり尽くすつもりなのでそこの所よろしく!


「なんだ?」

「俺です」

「金風児、キサマ……」

「俺のことが気に食わんようなので簡単に話をつけて差し上げますがね。あんた、【シャボラ】のれんじゅうとの関わりとかはある?」

「……なんだと? そんなもの、あるわけなかろう」

「そう、安心した。じゃあ……もし、今日のうちに奴等から手を組もうとか言われたって頷いちゃいかんですよ。俺も二年あんたに拾われた恩があるからな、一応の忠告をしますね」

「キサマァ、また暴れようっていうんじゃないだろうな」

「押忍」


 受話器の向こうから煙草に火を点ける音がする。


「キサマもう儂に庇われてる立場じゃないと……」

「話くらい聞いてるでしょ、俺、ギルド作ったんですよ」

「ギルドの運営は簡単じゃない。キサマのような浅慮なら尚の事」

「デヒヒヒ。いいかい、恩もあるので一応言うけれど、【シャボラ】に手を貸すとテメェさんちに損があるからね」

「キサマが目を付けたなら、そうだろうよ」


 電話が切れた。


 俺はボックスから出ると、煙草を口に咥えた。

 風の強い日だった。スーツのジャケットを風防にして火をつけると、背後に迫っていた【シャボラ】の構成員の顔面に蹴りを放ち、その拍子に飛んだ拳銃を掴み、ナイフを構えていた別の構成員の両足と両腕、そしてキンタマを撃つ。


「アアア……アア……アーッ……」

「粗末なポンポンにゃお似合いサ」


 蹴ったばかりの構成員は取っ捕まえて、腹にナイフを突き刺し、公衆電話のボックスに戻る。二度手間の多い男とよく言われるが、なるほど確かに自分でもそう思う。

 効率のいけないやり方ばかりしちゃうね。


「ギルドに電話を」

「イーッ、イーッ」

「早くしないと死んじまうぜ。俺の腕の中で死にてぇってんなら、それも良いだろうけど。俺はゴメンだね、はやくしなよ。ちんたらしてると本当に殺しちまうぞ」


 電話番号は警察のものになりかけていたので頭をつかみ、筐体に二度ほど叩きつける。


「テメェのギルドの番号もわかんねぇってことはないでしょうが。なんかめっちゃ悪い感じだなぁ。はやくしてはどうだい。ケツに二本目行っとくか?」

「イッ、イーッ」


【シャボラ】の番号をようやく入れたので、首元に自前の拳銃を突きつけながら喋らせた。


「オ、オオ、俺は……ヒッ、ヒーッ、俺はミミ、皆さんご存知の……ヒッ……エッ、エッ、ジョ、『ジョーカー・ジョニー』だ。ウッ、フーッ、今晩貴様らの商売を、すべ、すべて壊すからよろしく……ヒッ、ヒーッ助けて、助けて」


 何かを言う声が聞こえたが、無視して受話器を置く。懐から傷の治癒ポーションを取り出すと、患部にビシャっとかけた。


 さっきの玉無しにもね。すると、玉無しの金玉は当たりどころが悪かったらしく、俺の持つ治癒ポーションじゃ治らなかった。可哀想。


「今晩かぁ。長いな」


 気が変わったので、今すぐ破壊行動開始。


 俺はまずは先日行った賭場に。そこではどうやらさっそく武装を開始しており、俺はそのうちの一人から酒瓶を奪うと、それひとつでその場にいた五十人あまりの構成員を無力化した。


 電話があったので、かける。


「もしもし、ジョーカーです」

「き、キサマ……何故その電話機から……!?」

「わかってんでしょ。気が変わっちゃってね。だっていままだ八時だよ。夜まで時間があるじゃない。俺待てなくてね。だから、やり始めたってわけだ。よろしくね。まず、ひとつ」


 次は何処に行こうか。


 俺は【シャボラ】の稼ぎ場をある程度突き止めると、それを一つ一つ懇切丁寧に潰していった。構成員がいれば、一人一人丁寧に手足を動かないようにした。命は奪わない。


 まだ命を奪っても揉み消すほどの権力が俺にはないからね。


「よし、これで最後かな」


【シャボラ】の事務所が見えたので、俺はとりあえずその窓の奥にあるカーテンが揺らいだ瞬間、そこにめがけて弾丸を二発入れた。すると、「アアア」と叫ぶ声があった。どうやら殺してはいないらしく、事務所に乗り込むと、腕を押さえて蹲る男がいた。


「消しに来ました」

「金風児……!」

「ジョーカー・ジョニー……!!」


 ある時は金風児、またある時はジョーカー・ジョニー。

 してその正体は──!!


「ジョン・ジャム・ワバリ!! 此処で死ねィ!!」

「おことわりだね」


【シャボラ】の魔法使いが、車のボンネットなんかにも使われるような、鉄製の板材を曲げて筒状にして、その中にいろいろな機械を詰め込んだ、いわゆる「杖」を構える。


 魔法使いと戦うのは六ヶ月ぶり二度目。

 感覚は忘れていないか、などと考える暇もなく、魔力から発生した火球が俺の顔面を捕らえようと食らいついてくる。


 俺は身体を捻り回避すると、魔法使いの杖に弾丸をぶち込んだ。チィン──という音が当たった証拠だ。しかし、どうやら思っていたより硬い素材だそうで、傷はつくものの、故障を誘発するような傷ではなかった。


「いろいろ悪い商売、やってんでしょ」

「そりゃあやるさ。ギルドの経営っていうのはなぁ、綺麗事じゃ過ごせんぜ。キサマもなぁ、ギルド! 育てるとなりゃあ、モチロンひどいことの一つや二つやるのさ」

「それを開き直っちゃおしまいよ」


【シャボラ】のギルドボスの方に銃口を向けると、装備を固めた構成員がやってきたので、その鎧の隙間に懐から取り出したナイフを刺し突いて、蹴りで傷を広げる。一瞬「ウギャア」とよろめいたところを首を掴み、魔法使いの方に投げ飛ばした。


「俺の嫌いなもの教えてやろうか」

「なにかな」

「子供に手ェあげる大人だよ」


 俺は魔法なんか使えないけれど、それでも力というものは持っている。俺が睨めばある程度の人間は少し怯む。


 その少しが大事だ。

 銃っていうのは面白いもんで、一秒ありゃ弾が飛ぶ。


 俺の愛銃〈ナサケ〉は中折式の回転式拳銃。全長二百七十ミリ。装弾数六発。四十五口径。俺は礼儀としていつも三発しか弾をこめないようにしている。


 弾数を確認して、一発こめると、銃口を【シャボラ】のギルドボスに向けた。すると、奴は同じようにこちらに拳銃を向ける。九ミリ口径のオートマチックで、装弾数は八発。いやだねぇ。


「勝負は一発ずつ。この俺の命か……金風児! テメェの命かだ」

「しょうもない勝負だな。早く撃ちなよ」


 一瞬の静寂。


【シャボラ】のギルドボスは酒瓶を掴むと外に投げ上げた。

 そして、「パリン」と割れる音が小さくなると、俺と奴は同時に引き金を引いた。二人の弾丸はぶつかり合い、互いに弾けあった。


 俺は容赦なく腹に二発目をぶち込んだ。


「誰がお前なんぞの勝負に乗るかよ」


 殺しはしない。自力でたどり着けるか着けないか──のところに治癒ポーションをコトンと置いて、俺は【治安委員】という所に電話をかけた。

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