表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルドボス  作者: 蟹谷梅次
第一章 破壊金風児/シャボラ解体
3/8

第三話 朝の時間に

 次の日、俺のギルドを作ったよ、というような面倒臭い申請を済ませると、一日のうちに「ギルド」に、ついていろいろ設定する用紙が送られてきた。これ二度手間だと思う。


「ギルドの名前って絶対なきゃ駄目か?」

「当たり前だろ〜。『〇〇といえば〇〇』みたいな連想で自分達のことを憶えてもらうにはそれが必要なんだから」

「それもそうだな! じゃあそうだなぁ……」


 俺は窓から外を眺めた。


「じゃ、【金風】だな」

「安直だなぁ……」

「思考が浅すぎねぇか?」


 兄弟は窓から外を眺めて言った。


「まぁ、そうとも言うねぇ」

「そうとしか言えねぇのに……」


 俺は奴らのギルドがどんなものか調べる事にした。まずは【銀王】時代の仲良しさんことデイル・サラバリアスくんに聞き込み。


「ああ、それって【シャボラ】だろ。ありゃ駄目だよ。政治家に金を献上しているとかで後ろ盾も厚いんだ。この街で奴らと戦って、どうにも無事ですんだ奴らなんていないのさ」


 じゃあ政治家も消そうかなぁ、と細目で画策。

 そうしていると、サラバリアスくんが言う。


「お前、新しいギルド作ったんだって? うまくいくのかよ」

「さてね」

「お前は昔から思慮の浅い奴だからちゃんとした奴をそばに置いておかないと破滅しちまうぞ。おい、聞いてんのか?」

「聞いてるよ。君は昔から俺の心配をしてくれるね。ありがとう」

「くたばれ」


 嫌われてるのかなぁ、と思いながら、【シャボラ】のれんじゅうのケツをもみもみしているという政治家についても調べて、どういう手段で消そうかなぁなどと考えていると、都合の良いことになんと麻薬商売の噂が。


 本当かなぁと思い、その麻薬商売の現場を遠くから観察してみると、三日目でその政治家さんが。彼の名前はクラミー・タイアンという。生まれはハマダナという国らしいが、聞いたことない。


 その写真を取り、麻薬組織の概要を纏めておいて、隣国の新聞社に投稿。俺の出身がその国で、学生時代にもお世話になっていたブンの会社だから、交流もある。


 色々な人脈を持っていると、こういう時になんかめっちゃ良い感じだよね。持つべきものは友達だね。ブン屋は食いつくだろうなぁ、という謎の自信を持って手紙を出す。国際のお手紙でもロクに審査もしないだろうから別に良し。郵便局はこういう時に雑なのがなんかめっちゃ良い感じだよね。


 なんか真っ当に冒険者やってた頃の俺は何処に行ったんだろうか、と言いたくなるようなお仕事ぶりだけれど、俺は何をなさってる人なの?


 二日後、アラスが新聞を持って兄弟の朝飯を作っていた俺のところにやってきた。


「見なよ、ワバリ。政治家が麻薬商売に関わってたとかで警察が動いてるってよ」

「デヒヒヒ、銭一つの価値もない商売はそのまま潰れてくれるとマジ嬉しみ。実は彼が逮捕されて失脚すると、俺たちも得をするんだよ」

「なぜ?」

「彼は【シャボラ】のおケツモチモチなんだ。【シャボラ】もあまり金のある組織ではないから、金銭を献上しているとした、彼だけだろうし、その彼が堕ちたとなれば体裁的な信用は少なからず下がるだろ? 政治家のコネのない賭場で日銭稼ぎたいなんて物好きもいないだろうし、となると、稼ぎのいくつかがなくなるね」

「確かにそうだな。お前、物事考えられたのか……」

「俺は考え事をすると人より出来ちゃうから普段は抑えてるのよね。デヒヒヒ」

「笑い方ァ」


 遅れてシゲムも登場。


「ジョニー! なんか客引きのオッサンれんじゅうから『お前のこと嗅ぎ回ってる女がいる』って話を聞いたぜ。【シャボラ】とかって奴等の手下なんじゃねぇの」

「容姿の話はわかる?」

「青髪の金色の目をした奴って聞いたな」


 俺はいつものように笑った。


「朝ごはんできてるよ」

「やったー」

「お知り合いって顔だな、その女のこと」

「スペードって知ってる?」

「は?」

「彼女の事だよ。『スペードのアクア』。俺と同時期に活動してた冒険者でね。フルネームをアクア・ジャム・シャーバリスという。いまは誰についてるのかねぇ?」

「もしかして【シャボラ】じゃねぇの」


 シゲムがスープに木匙をかけながら言う。


「彼女は賭け事が嫌いだから、あまり考えられないなぁ」

「じゃあなんだい。個人的な用事でお前を探るのか?」

「恋仲だったのか?」

「さてね」


 俺はその日、アクアを避けながら活動をするに至った。


「奴がこの街に来たということはしばらくしないうちにこの家にも到着しちゃうかもな。そうだなぁ〜……………………シゲム、君、俺の女になったフリはできるか」


 彼はその言葉を聞くとムッとする。

 俺も嫌だよ、こんな提案されたら。


「兄のいる前でよく言うよ」

「この中で君ほど女役の似合う子がいるかい? えぇ? 俺もね、君の間にただならない関係があると分かれば、あいつも俺に近づこうなんて考えないだろ? 俺は少なくともそう思う」

「遠ざけるのも意味がわからないな。俺は別に良いけど」


 良いんだ。

 俺は、すっかりお兄ちゃんの気になって、物分りが良すぎるシゲムくんがいつか悪い大人に騙されて北の国の秘薬でも飲まされて、ただならない関係になってしまわないか心配になった。


 北の国には、のっぴきならない事情に限り性を変える為の秘薬がある。飲むとね、男の子は女の子になり、女の子は男の子になるらしい。


「男が女性から逃げるなんてさ」

「情けないと思うかい?」

「思うね」

「そうかもね。とりあえず頼んだよ。本当にごめんなぁ。君の尊厳なんて無視だ。この際大無視させていただこうと思う」

「いっそ清々しいバカタレだなぁ」

今日の朝食


・チーズとハムをのせた揚げパン

・あっさりした味わいの野菜スープ

・ミルクを入れた紅茶

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ