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第二章五十一話 「協議」




作戦内容4<フェウザ・ロトフゥイ用>

・風魔法を使い、王国に今代国王の嫌な噂を少しでも流すこと。

・だがしかし、噂を流している張本人であるとわからないようにすること。


作戦内容5<アークゼウス・ヴェルゼウ用>

・今代国王の動きをできるだけ観察すること。

・だがしかし、見つかったり気配を探られたりしないこと。


              △▼△▼△▼△▼△


<視点 フェウザ>


 ――隣王城ゼルにて。フェウザとアークゼウスは借りている一室のベッドに両者あぐらをかいて、向かい合いながら座っていた。

 そして彼らは、向き合っている己らの間にある、作戦内容が書かれた紙を凝視する。


「……俺が言いたいことがわかるか、アークゼウス」

「ああ、もちろんだ」


 二人してなかなかに悪い笑みを浮かべ、お互い利点が一致したとでも言うような確認を取るが――それは決して悪化の前触れではない。単なる作戦会議だ。

 そしてフェウザとアークゼウスは視点を上げ、お互いを見合う。


「これはつまり、余が国王の私生活を覗き、そこから発見した難点をフェウザが世間にばら撒く、ということであろう?」

「そういうことだ」


 フェウザとアークゼウスの作戦内容。――それは、別にお互いがいてやっと成り立つと言うわけではないが、お互いがいた方が効率的に、そして自然に進むものだ。


「別に俺が適当に情報流せばいいかもしんねえけど……でも」

「余が調べた国王の私生活から不愉快だと感じた場面を言えば、情報はより洗練され、国民も信じやすくなる。……だろう?」

「そ」


 フェウザの一拍置いた言の葉の後に、アークゼウスがこれが答えだろうと言わんばかりに、言の葉を続ける。

 そして二人は再び不敵な笑みを浮かべ、右手を拳の形にして、合わせる。


「つぅことで条件一致した俺らだが……とりあえず、流れんままでやったら絶対どっかで間違えっから、軽く流れ確認しとくぜ」

「うむ」


 フェウザのその言葉通り、アークゼウスはともかく、おそらくフェウザは計画やら作戦やらを作っていなかった場合、必ずどこかで失敗するだろう。

 故にフェウザはその確認をすると宣言。アークゼウスの同意も取れた。


「まず、アークゼウスが国王の生活を調べる……けど、それ用の魔法とかあんのか?」

「一応、メリアから認識阻害結界アンノウン・フィールドの魔法が込められた指輪をもらっている。故に、油断さえしなければ、向こう側から見つかることはほとんどなかろう」

「なるほど」


 メリアから渡された、認識阻害結界アンノウン・フィールドという――その結界内にいれば、周りからは認識されない魔法。

 それが込められた指輪を、隠密行動が必要ないルーディナと自分自身でその魔法が使えるメリア以外、渡されている。

 故にアークゼウスもフェウザも、その指輪に魔力を込め続けていれば、周りから気づかれることはない。まあ故に、油断禁物ではあるが。


「それで気づかれる可能性はねえとして……情報の受け渡しっつぅか、噂流す時間帯はどうすんだ?」

「正直、そこが一番の考えどころだ」


 指輪のおかげで懸念が一つ減ったフェウザとアークゼウスだが――まだまだ、この作戦には隠れている難点が多々ある。

 そしてアークゼウスが言う通り、一番の考えるべき難点。それが、アークゼウスからもらった情報を、フェウザがいつ世間に流すかだ。


「アークゼウスが国王の普段の生活調べんじゃん。それで悪ぃところを見つけるとして……それそのまますぐ流すか?」

「ふむ……しかし、それならその情報の差が出るだろう」

「差?」

「ああ、そうだ」


 フェウザの確認するような言い方の問いに、アークゼウスは待ったを入れる。

 その待ったへの疑問を放ったフェウザに相槌を打ち、そこでアークゼウスは一拍置き、続ける。


「例えば、一時間ほど、余が国王の難点ばかりを見つける。するとその一時間は、余が見つけた難点が王国に数多く広まっている状態だが……そこから三時間後、不愉快な点はたったの三つ。だとすると、その三時間の間はその三つの噂しか流れていない。……数多く広まっていた噂がまだ健在だと良いが、それも日を跨げば容易く消え失せるだろう」

「……んーとつまり、時間帯ごとで数の差が出て、どれもこれも一時的なものになっちまう、ってことか?」

「まあそんなところだ」


 アークゼウスの説明――それは事細かく説明すると、こういうことだ。


 まず、今からアークゼウスが一時間ほど国王を観察する。すると、悪い箇所ばかりが見つかる。

 そしてフェウザがそれを世間にばら撒いていく。するともちろんのこと、世間は国王の悪い噂に夢中になるだろう。しかも、それだけの数の多さなら。

 だがその三時間後、見つかった悪い箇所は三つのみ。それをばら撒いたところで、その一時間で見つかった数多くの噂よりかは、反響は少ないだろう。

 そのときにまだ、その一時間で見つかった悪い噂が健在だとあまり問題はない。だが一日二日でも跨げば、人は噂など簡単に忘れるものだ。

 その後、悪い箇所があまり見つからなかった場合、どんどんと噂は信憑性をなくす。同じような悪い噂をたくさん流したとしても、似たようなものに興味を持つものは少ないだろう。


 ――つまり、いろいろと数の差が出てしまったら、最終的に効果なしで終わる可能性があるのだ。


「故に、見つけた瞬時に世間を振り撒く、というのは些か効果的とは思えん」

「なるほどなぁ」


 この作戦会議は、意外と長続きしそうだ。




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