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第二章五十話 「団力」




<視点 ロクト>


―――今回の、ディウとの相手の実力を知るためであり友誼を深めるためである戦いの対策や作戦を考えたのは、ロクトだ。

 レーナエーナが考えると、どうも卑屈な作戦になってしまう。かと言って、ラウヴィット、リアテュ、ルタテイトたちはこういうのは得意ではない。


 故に、ロクトが今回の戦いの作戦の頭から尻まで全部考えさせてもらった。


「……まあ。作戦と言えるものではないですけどね。」


 ただ、そのロクトの小さな呟き通り――そんな表立って作戦、と堂々と言えるような代物ではない。

 その作戦内容――それは至極単純、数の暴力である。


 そもそも前提として、ディウと『英雄五傑』一人一人には、圧倒的とも言える差がある。それは戦前にはまだ不確定なことであったが、戦中に確定へと至った。

 そう言えるのは、ディウがレーナエーナによる卑怯な戦法の、光を使った魔法――それをあっさりと切り捨てたからだ。

 光を斬る、というのがどんな方法で、どんな手段で、どんな訓練を積んで、どんな試行錯誤をしてかはわからないが、両者に圧倒的な差があるということは理解できよう。


 故に、ディウに『英雄五傑』が一人ずつ対峙していっても、勝てる未来がないのは目に見える。

 ――ただそれは、一人ずつでの話。一人ずつで駄目なのならば、『英雄五傑』全員でかかればいいのではないか、という単純な思考だ。


「ですが。――それでも。勝てるのならそれで良い話。」


 ――ロクト・エクトラルクが目指す英雄像は、“物理戦では負けても、精神戦では絶対に負けないこと”だ。

 故に、ロクトは卑屈とまではいかないがなるべく勝ちに近い手段を使うし、それで負けても文句は言わない。


 今回のこの戦いの目的は、相手の実力を知り、友誼を深めるというもので、別に勝ちにこだわる必要はないし、本気を出す必要もない。


 ――だが、ロクトはディウから今代国王の裏切りの可能性を聞いている。そしてここに連れてこられた。それは間違いなく、その今代国王の裏切りに対しての何かに協力してほしいからだろう。

 ならば、殺す傷つけるはしたくない故に全力は出さずとも、作戦自体は全力を尽くして考えようではないか。


「――では。始めましょうか。」


              △▼△▼△▼△▼△


<視点 ディウ>


 ――余計な言葉はいらない。余計な思考はいらない。余計な趣向はいらない。

 ただ単に盛り上がり、ただ単に熱く燃え、ただ単に最高だと思えればそれで良い。

 だから――


「……さて」


 ――ここが、『英雄五傑』たちの団結力の見せどころだ。


「――――」


 まずディウが注目したのは、前方へと迫り来るラウヴィットとリアテュの二人だ。

 男性だが華奢な体故に素早く小回りが効くラウヴィットと、女性らしい華奢な体故に迅速で颯爽なリアテュは、まさに共闘の相性抜群と言うべきか。

 この訓練場に来るまでに何度か二人の話し合い及び言い合いのやり取りは見てきたが、どうやら心だけでなく体の相性もいいらしい。


 ――そんな思考をした後、ディウは今度は後方へと意識を向ける。


「――――」


 後方に迫り来る人物は、ルタテイトとロクトだ。

 筋骨隆々な体を持つ故に相対するとなかなかに体力を削られるルタテイトと、気配を消すのが上手く不意打ちが得意なロクト。


 その二人は一見別分野に見え、あまり相性は良くなさそうではあるが――否、それは間違いだ。

 そもそも前提が違う。――得意故に合わせるのではない。得意じゃなくても要望通りじゃなくてもその場その場によって合わせるのが、強者だ。


「――――」


 そして、最後の一人の、かなり遠くの場所に佇んでいるレーナエーナは――この際、逆に放っておこう。

 彼女の行動は予測不能だ。手札もどれだけあるかわからない。故に、関わっても考えてもあまり意味はない。


「――――」


 ――そんな思考らを瞬時に終わらせ、ディウは現状への対処法を一瞬で考える。

 というより、勘だ。直感だ。自分が動いた方がいいと思った方へと、ディウは動く。あまり考えるのは得意ではない。


「……では、行こう」


 刹那、剣閃の軌道が飛び交った。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――ディウが最初に相対したのは、ラウヴィットとリアテュの二人である。

 左右から薙ぎ払われる剣閃を、ディウはその黒き巨剣で受け止め、逆に薙ぎ払ってみせた。

 そしてディウは――まだ、攻めない。もっと相手の行動を観察して、もっと相手の行動を実践させて。――それでこそ、楽しくなるから。


「――――」


 一度攻撃を薙ぎ払われ、少しだけ体勢が崩れたラウヴィットとリアテュは後方へと下がる――と見せかけ、とある行動に出た。


「……む?」


 そのとある行動。それはディウですら疑問を抱く行動だ。

 だって――リアテュが精一杯地面を蹴り、なんとラウヴィットの方へと突撃していったのだから。


「一体なん……む」


 そしてディウは、その行動に対し疑問の呟きをしようとするが――その刹那、後ろからの気配に気づいた。

 この気配、ディウは知っている。――ロクトだ。先程も、このように後ろからの気配を感じ取った。


「――――」


 ロクトの音も振動も感じさせないまさに陰影のような剣撃を、振り返りその巨剣で受け止め、先程のラウヴィットとリアテュのように薙ぎ払おうとし――無理だった。

 それは瞬間、ロクトがディウの巨剣に反応することも対応することもせず、横跳びをしたからだ。


「――――」


 その再びの困惑状況に、ディウはまた疑問声を上げたくなるが、今度は自重する。

 そしてそのロクトの行動はなぜなのか――と考える暇はなく、前方には大胆不敵に笑いながら剣を振り下ろそうとしている、ルタテイトの姿があった。


「――――」


 両者、剣閃を放ち、放ち、放ち、放ち、放ち、ディウが突如として剣撃に重量を乗せ、ルタテイトの体を少しだけ揺らす。

 すると、彼はその大胆不敵な笑みを驚愕の表情へ変えたが――一瞬のうちにそれは、また大胆不敵な笑みへと戻る。


「――――」


 先程から、やはりどこか協調性を感じる『英雄五傑』たちの不思議な行動に、ディウは警戒心を強める暇――もまた、なかった。


「……なっ」


 否、警戒心を強めるぐらいなら、刹那の間に簡単にできる。――ただ、違う。その刹那の間を作れないほど、それは驚愕を生んだから。


 ディウは気配を感じ取り、後ろへと振り返った。そして、見たのだ。――既に眼前に迫っている、リアテュを。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――え? 嘘? 本気? 正気?

 その場面を見れば、そんな言葉が出てくるのではなかろうか。


 先程、リアテュは精一杯地面を蹴り、ラウヴィットへ向かって突撃していった。

 それは明らかに何かあって故の行動だろうが、ディウはロクトとルタテイトの猛攻により、それについての思考時間は与えられなかった。


 そう、その一瞬。おそらくは、ロクトとの攻防が一秒、ルタテイトとの攻防が二秒。

 その一瞬に、ラウヴィットとリアテュは振り返ったディウの眼前へ迫るほどの行動をした。


「……っ」


 リアテュの細く可憐な体からは想像ができない、意外な重量感がある攻撃に、ディウは若干の苦い声を出す。

 考える暇が、考える暇がないに等しい。ディウは元々考えはあまりしない人間だが、それでも少しぐらいは考える。というより考えないで生きる人間なんていないだろう。


 故に、何があったのかはわからない。ただ、今、確実にわかる情報。――それは、自分がかなり追い詰められているのでは、ということだ。


「――――」


 ディウはリアテュの重量攻撃を薙ぎ払うことはせず、自分が後方に跳ぶことで、難を逃れる。


 ――ディウは今、かなり追い詰められている。

 今の状況、それを悪く言うなら数の暴力で、それを良く言うなら『英雄五傑』たちの団結力に翻弄されている。


 ラウヴィットもリアテュもロクトもルタテイトも、全員がディウとは一度か二度、剣を構えただけ。

 だがディウは、ラウヴィットとリアテュとロクトとルタテイトと全員と剣を構えているから――最低でも四回は、対峙しているのだ。


「――――」


 そう。数の差とは、根本的な差を作る。それは体力の差然り、疲労の差然り、回数の差然り、思考の差然り、攻撃の差然り、防御の差然り、耐性の差然り。

 その根本的な差故に、いくら両者に実力の幅があろうとも、だんだんどんどんと確実に追い詰められていくのは確かだ。


「――――」


 ――だからこそ、面白い。





 バトルシーン書くのタノシイナー。


 ん? この七日間更新なくてどうしてたんだって?

 いやこっちにもいろいろあってですね……まあ所詮趣味ですし。つぅか僕学生だし! 来年受験生だし! 勉強忙しいもん! 更新遅くても我慢してね! ……読んでる人いるのかわからないけど。


 んまあそんなわけで。って言っても今冬休みなので、まあ三日に一回の更新ぐらいできるんじゃねぇかなと。

 いやそんなことよりも今まで更新頻度保ってたのがすごいと思う!


 はい、ということで、読んでくれてありがとうございました!! また読んでね! 絶対読んでね!



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