第二章四十九話 「団結」
<side ディウ>
―――ただ単に、ただ単純に、ただ単刀直入に、本当にただ単に、ディウは今、盛り上がっている。興奮している。
「……ふ、なかなかな遊びをしてくれるものだ」
鮮明で、透明で、煌びやかで、なんでも見通せるような、読める気がするような視覚で。
地を踏み締める音も、剣の薙ぎ払いによる風の靡く音も、的確に聞こえるような聴覚で。
ほとんど眼中になく、意識もしないほど今はどうでもいい、嗅覚と味覚で。
燃えるように熱く、焦げるように暑く、広がるような灼熱に、体全体を包まれるような感覚で。
「光を反射させたのか、魔法か何かで集めたのかは知らないが……ああ、面白い。俺はこう言う普通は使わない特殊な手段や、圧倒的な強者が好きなのだ」
――ただ単に、ただ単純に、ただ単刀直入に、本当にただ単に、ディウは今、盛り上がっている。
「……すごく、熱い」
――ただ単に、ただ単純に、ただ単刀直入に、本当にただ単に、ディウは今、興奮している。
「……では、続きを行くぞ」
――その調子のまま、その状態のまま、その状況のまま、彼はその言葉と共に剣を構え、一歩目を踏み出した。
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――光を斬る。そんなのは、ただのいろいろな屁理屈やら出鱈目やらを詰め込んだ芸当だ。
どこかの人間の科学者曰く、光は物体や物質ではないので触れられないらしいが、ディウからすればそんなのは人間だけの話だろう、としか思っていない。
人間やら動物やら魔物やら、そう言った所謂世界の常識の基準となるべき存在。
光に触れられないとは、それら諸々が勝手に決めた勝手な法則にしか過ぎない。
そもそも、ディウが『勇者パーティ』の一員でSランク冒険者という強大な存在になっているのも、人間の基準から見て規格外だから、というだけの話。
この前対峙した鬼双子にはそれはもう敵わなかったし、さらにその前に対峙した『灼熱の魔王』には相手にすらされなかった。
規格外も常外も理外も論外も、それこそ人外も、全部人間の基準から、常識から見て当てはまらないほど意味がわからないから、というだけだ。
だから光を斬る、ということに対して、ディウはさほど驚かない。至極単純に、まあちょっとすごいよね程度のことをやった、という認識だ。
それと前述したが、ディウの芸当は屁理屈と出鱈目故にできた、そんなに誇るべきではないものだ。
その屁理屈と出鱈目はとりあえず、いつか話すべきときに話そう。
――それら故に、本当に驚きもせず、唖然も呆然もせず、ディウは駆けていく。未だ固まっている『英雄五傑』たちへ向かって。
「――――」
そして、その巨体から想像がつかないような速さで駆けていくディウ。
それに硬直状態を解き、阻まんと真っ先に行動し、ディウと向かい合うのは――ルタテイトだ。
「――――」
ディウは黒曜石のような大剣を。ルタテイトは白銀と黒銀が混ざったような大剣を。両者、ぶつけ合う。
「――――」
重量感に溢れ、重厚感に塗装され、重圧感があるが構うことなく、剣を薙ぎ払い合っているその景色は、まさに素朴な豪奢とでも言うべきか。
見た目は至極簡素であるが、両者両剣の本質は、見せびらかさない贅沢と実力と最高峰で整っている。
リアテュと相対したときより速くない故に疾風感はないものの、遅くて重い故に重量感と重厚感と重圧感があるその光景は、見てるだけでもかなりの迫力だ。
「――――」
その光景に、その空気に、その雰囲気に当てられてか、他の呆気に取られていた『英雄五傑』の諸々も、続々と動き出していく。
大剣をぶつけ合うディウとルタテイトももちろんのことそれに気づき、それを把握し、それがあるから、両者後方へと跳び、下がる。
「……ふむ」
そしてディウは、『英雄五傑』たちの行動を見て、そう興味ありげに言葉を溢した。
それは、『英雄五傑』たちの行動がおそらく事前から計画されていたものなのだろうと、予想がついたから。
ラウヴィットとリアテュがディウに向かってきて。レーナエーナは逆にディウから離れていって。ルタテイトとロクトはディウの背中側へと回ってきて。
それらからどんな作戦なのか、どんな計画なのか、どんな戦法なのかは予想がつかない。
だが、だからこそ――ディウは、面白いと思える。
「……さて」
――ここが、『英雄五傑』たちの団結力の見せどころだ。




