第二章二十六話 「仲間」
ーーーでは、前回の最後の光景をダイジェストで送ろう。
「我が名は『星誓』のモモン・プロローム!ルーディナ・デウエクス様率いる、『星姫の後追い』を、ルナ様の代わりに統べしもの!我が星への誓いは、永遠に、尽きることあらず!」
ーーー腕を組みながら、その可愛い表情を自慢の色に染め、二つ名と組織名を名乗るモモン。
そして更に、ルーディナが渡した、『お試し☆これであなたも神女になれる服装』という、萌え袖というほど腕の袖が長く、左肩の方だけがセクシーにはだけていて、白と金が混ざった、まさに神女と言わんばかりの服装ーーこれの秘密機能により、背中からは天使を思わせる、白い翼のレプリカが生えている。
その天使の姿を、聖女の姿を、神女の姿を思わせる姿は、まさに星に誓う、『星誓』だ。
ーーーと、ルーディナの、モモンへの感想会は終わりにしよう。
もちろんのこと、モモンのその台詞、二つ名、組織名、それらを聞いて、ルーディナはーーー
「ちょっと何言ってるかわかんない。」
ーーーと、突っ込まずにはいられなかった。
△▼△▼△▼△▼△
「ーーー。」
ーーーそれが、前回までのあらすじ、というやつである。
そして今、モモンに対する、ルーディナの突っ込みのせいかーーこの場は、沈黙に包まれていた。
モモンは時が止まったように、自慢げな顔と腕組みの状態のまま、固まっている。
そして、ルーディナとモモンを囲む、周りのルーディナを愛するものたちもーー自慢げな顔や、尊敬を感じているであろう顔、満面の笑みの顔など、様々な表情の種類があるが、全員が全員、こちらもまた時が止まったように、固まっている。
「・・・あの、私、なんか失礼なこと言っちゃった?」
「ーーー。」
「おーい?ねえ、聞いてる?」
「ーーー。」
「モモ〜?モモン〜?モモンちゃん〜?」
「ーーー。」
「・・・よし、仕方ないか。」
ーーーその沈黙の空気に、ルーディナも流石に耐えられなくなり、目の前で立っているモモンに、失礼なことを言ってしまったか、と質問するがーー未だ、固まったまま。
声をかけても、あだ名で呼んでも、名前で呼んでも、ちゃん付けで呼んでも、モモンも、ついでに周りのものたちも、誰一人として動かない。
故に、ルーディナは、やむを得ずと思いながら立ち上がりーーー
「・・・それ。」
ーーー硬直しているモモンの、胸の先端を、摘み上げた。
「ぴゃぁっ!?」
「お、戻った戻った。おーい、モモ〜?ルナ様だよー、意識ある?」
「ふぁ、ふぁひ!?にゃ、にゃにゃ!?りゅにゃしゃみゃ、い、いみゃにゃにゃにゃ!?」
「いや噛みすぎだから。」
ーーーと、ルーディナの摘み上げにより、モモンは硬直状態が解除されーー今度は、顔を真っ赤にして手足をばたつかせるという、慌てん坊状態へと変わった。
プラスアルファで、言っていることのほとんどを噛んでいるという、ものすごい、慌てっぷりつき。
その様子に、ルーディナは素直に可愛いとも思ったがーー流石に噛みすぎだとも思い、突っ込みを入れた。
「はい、少し落ち着いて落ち着いて。深呼吸、深呼吸。」
「ふぁ、ふぁふぁ・・・って、そうじゃないです!」
ーーーその、慌てん坊ぶりは実に可愛いが、止めてもらわないと話が進まないため、ルーディナは落ち着かせるように、深呼吸させるように、言葉を溢す。
そして、前者で気づき、後者で落ち着いたのかーー呼吸も状態も取り戻したモモンは、ルーディナの肩を掴みながら、叫びに似た声で、言う。
「ちょっと何言ってるかわかんないって、どういうことですか!?」
「どうも何もそのままの意味だけど。」
「組織名決めようってルナ様が言ったから、私は提案したんです!」
「ふーん。」
「なんですかぁ、その反応!」
ーーーどうやらモモンの先程の自己紹介は、ルーディナの組織名を決める、というものについての提案をしていたものだったらしい。
確かに組織名も言ってはいたが、よくわからない言葉遣いと二つ名の方が印象強く、ルーディナの頭には入ってこなかった。
そして、その組織名の提案に、かなりの自信を持っていたのかーールーディナの素っ気ない返事を受けたモモンは、身に感じる羞恥を耐えるように、腕を組みながら、頬を赤に染め、膨らませている。
「可愛いなぁ、相変わらず・・・」
「話を逸らさないでください。」
「ん、ごめんて。・・・と、いうよりさ。」
「はい?」
「星姫の後追いって何?」
ーーーと、ルーディナは、モモンの可愛らしいポーズに見惚れていたわけだが、モモンに注意を入れられてしまった。
それで、脱線しかけた話を元に戻しーー言葉遣いや二つ名を一旦無視し、あの組織名は一体どういうものなのか、どういう由来なのか、どうしてああなったのかなど、そう言った意味を込めながら、ルーディナは質問する。
それに対し、モモンはーーー
「ふぇ?どうも何も、そのままの意味ですけど。」
ーーーあっけらかんと、何を言っているんだこいつ的な意図が籠っていそうな、そんな声で返答を返した。
「・・・由来は?」
「ルナ様は可愛いので姫です。私を救ってくれた星です。私たちはその後に続くものです。星姫の後追いです。・・・これだけですけど?」
「それだけなの!?」
「これだけですよ?」
ーーーどうも、首を傾げながら答えるモモンが、ルーディナの質問に意図をわかっていなさそうであったので、由来は何かと追加で聞いたがーー返ってきたのは、またもや何を言っているんだこいつ的な意図が籠っていそうな、あっけらかんとした、返答であった。
救ってくれたから星、可愛いから姫、その後に続くものだから後追いーーネーミングセンスがない、というわけではないが、コードネームやペンネームなどの匿名を決めるなら、それを、永遠と使い続ける覚悟をしてほしいものである。
「・・・ルナ様、何か不安なんですか?」
「何もかもが不安だけど・・・星姫?」
「はい、星姫です。」
「モモン、いい?こういう組織名とかコードネームやらペンネームやら・・・そう言った匿名はね、永遠と使い続ける覚悟をしてから決めるものなんだよ?」
「はい、存じております。」
「・・・なんで星姫なの?」
「さっきも言いましたよね?」
「いやもっと、具体的なりゆ」
「聞きたいですか!?」
「お、おお・・・ま、まあ、うん。」
ーーーとりあえずルーディナは、モモンに教育も兼ねて、永遠と使い続ける覚悟が必要だと、そう言うがーー今度は、どうだ誉めてくれても構わないんだぞ、的な意図が籠っていそうな、自信満々の答えが返ってきた。
どうやら、存じているらしい。
だが、どうもルーディナは納得ができなかったので、具体的な理由を求めようとしたがーー興奮したように、ルーディナに顔を近づけさせるモモンの、食い気味な答えに、思わず少し引いてしまった。
しかし、具体的な理由に興味がないか、と言われれば嘘になるので、一応念のため、聞いてみたがーーー
「まず、星から行きましょう!これは説明するまでもなく、ルナ様が私にとっての星だからです。奴隷の身になって、もはや現実も見たくない、過去も思い出したくない、未来も想像したくないと、そんな絶望を感じていた私に・・・希望を、与えてくれました。優しい声で、声をかけてくれました。同情を、してくれました。似た者同士と、評してくれました。そしてその後も、私に暗い思いをさせないため、暗い雰囲気を生み出さないため、ずっと、明るく振る舞ってくれました。そして先程も、私たち奴隷という身分にも関わらず、ルナ様の負担が増えるにも関わらず、ルナ様は私たちを配下としてくれた。愛すると断言してくれた。離さないと約束してくれた。そして、今。私たちのために服を持ってきてくれて、一人一人にしっかりと似合うのを選んでくれて、拠点探しを提案してくれて、そして何より、ルナ様は、私たちを奴隷と見たくないから、組織名を決めようとしてくれてます。私たちの身分は、未だに奴隷。どんなことを頼んでも問題なく、どんなものを振る舞っても問題なく、どんな要求をしても問題ありません。それなのに、ルナ様が一番最初に、私たちにした要求が、奴隷と見たくないから、呼びたくないから、新たな組織名を決めよう、ということです。私たちは何もしてないのに、特に恩を返せるわけでもないのに・・・ルナ様は、そんな役立たずな私たちを救ってくれたんです!生きる価値を与えてくれたんです!生きる希望を、生きる理由を、生きる愛を、生きる意味を!ルナ様は、ルーディナ・デウエクス様は、与えてくれたんです!!だから、星と呼ぶことには、なんの変哲も不可思議もありません!!いや、もはや世界から定められた法則、秩序、原理!!むしろ、これを否定した方が少数派の偏見的な意見と言えるほど、世界が望んだ、運命の邂逅!!天使の微笑みが、女神の慈愛が、世界の大器が、ルナ様の優しさに、暖かさに、純潔さに、天才さに、祝福を与えているのです!!ルナ様を、星と呼ぶこと・・・それは、当然の常識であって、誰も覆すことのできない真実なのです!!!」
「わ、わか、わかったから!!わかったから、もういいから!バカっ、このバカっ!」
ーーー返ってきたのは、モモンがどれだけルーディナを愛しているか、聞いただけでわかるような、ものすごい長文であった。
その、予想を容易く超えるモモンの過大評価に、ルーディナは思わず赤面して、照れ隠しで罵声を浴びさせてしまった。
ルーディナは、こう言った直球の愛は、受けさせる側はいいが、受けられる側は苦手なのである。
もちろん、その愛自体には嬉しいし、喜ばしいし、愛おしいし、無意識に口角が上がるほど幸福感を覚えるのだがーーー
「・・・恥ずかしいもん。」
「い、意外です。ルナ様は、こういうの聞いたら性的に襲いかかってくるものとばかり・・・」
「私のことなんだと思ってんの!?」
ーーーどの感情よりも、恥ずかしさが勝つのだ。
嬉しいけど、恥ずかしい。
喜ばしいけど、恥ずかしい。
愛おしいけど、恥ずかしい。
幸福感を覚えるけど、恥ずかしい。
だが、恥ずかしいと言ってもーーやはり、嬉しいことには変わりない。
「・・・ふぅ。」
「ーーー。」
「・・・何?」
「いえ、恥ずかしがるルナ様は貴重なので。」
「・・・なんか、負けた気分なんだけど。」
ーーーとりあえず、今の高揚感を覚える気持ちを抑えながら、落ち着かんと呼吸を整えているとーーモモンの、穴が開くのではないかと思えるほどの、ルーディナへの視線を感じた。
気になったが故、質問するとーー恥ずかしがっているルーディナは貴重だと、そう言う。
つまり、貴重が故に目に収めておきたい、ということなのだろう。
それに対する、謎の敗北感を覚えたルーディナはーーやはり、まだ少し恥ずかしさが残っているのか、敗北感を感じるが故なのか、強引に話題を変える。
「で、貴重な私とかどうでもいいから、組織名・・・はいいとしてだけど、あの、さっきの二つ名は何?」
「私はルナ様一筋なので。それを示すための、『星誓』です。」
「・・・?」
「ルナ様には伝わらないですか・・・ならば、総戦力で伝えるまで!さあ皆さん、おいでなさい!」
「・・・??」
ーーー組織名は『星姫の後追い』、ーー姫と表されるのは少し恥ずかしいがーーこれでひとまず決定としておこう。
そして、次にルーディナが疑問に思ったのは、よくわからない言葉遣いと、二つ名だ。
とりあえず、言葉遣いは少々特徴的、と言うだけで説明がつくので、置いておくがーー二つ名に関しては、謎が深まるばかりなので、それが故にどういう意味なのかと、ルーディナは質問する。
結果、意味を聞いても、やはりよくわからなかった。
モモンはそれをどう見たのか、いきなり伝えるやら伝えないやら総戦力やらと言い出してーー先程から、ルーディナとモモンのやり取りを眺めているだけの、観戦状態になっていた周りのものたちを、呼び出す。
彼ら彼女らは、出番が来たと言わんばかりの、自信満々な表情をし、ルーディナの前、モモンの側へと集まっていく。
「ではルナ様、とくとご覧あれです!」
「あ、はい、どうも。」
ーーーそして、未だに、何がどうなっているのかの理解が追いついていない、ルーディナの前に、モモンの呼びかけにより、二人の男女ーーカーヴィスと、ティアラナが出てくる。
灰色の髪のカーヴィスは、ルーディナが服屋ではなく装備屋で仕入れてきた、中央に十字架のマークが描かれている漆黒の鎧を着こなし、外側は暗黒、内側は紅の、魔法陣の模様がたくさん描かれたマントを羽織るという、とてつもない、重量感溢れる格好をしている。
水色の髪のティアラナは、その長い水色の髪をポニーテールでまとめ、両肩が出ている白色の服、そして下半身の右足側は青色のスカート、左足側は黒色のズボンという、かなり特殊な洒落た格好をしている。
その二人の美貌を、服装を、ルーディナはしっかりと目に収めながらーーー
「余の名は『灰塵』、カーヴィス・ジオディラー。光に隠れた影が渦巻くこの世の中に、真なる影として、光を齎すものなり。余の永遠なる忠誠は、ルナ様のものである!」
「わたくしの名は、『聖天』ティアラナ・スーフィパーレ。聖なる地へ導きし、天を統べし救世主。ルナ様へ、純愛も、寵愛も、慈愛も、友愛も、親愛も、性愛も、敬愛も、慶愛も、何もかも、捧げるものですわ。」
ーーー二人の、意味のわからない自己紹介を、今度は目ではなく、耳に収めた。
なぜ、この二人は一人称も喋り方も、前のときから変わっているのだろうか。
「・・・あの、モモ、なにこ」
「まだ伝わらないみたいですね!ならば、今度は優秀チルドレンに来てもらいましょう!」
「れ・・・って、なにそれ。」
ーーーもはや、理解することすら蚊帳の外なルーディナは、若干明日の方を見ながら、なんなのかとモモンに問いただすーー前に、モモンが新たな戦力増加のお知らせを加えた。
優秀チルドレンーーまあ、言わずもがな、優秀な子供たちである。
「ーーー。」
ーーーと、そこで、ルーディナに伝わらなかったのが原因か、残念そうな表情をして去っていったカーヴィスとティアラナと交代で、四人の子供がやってきた。
その四人の子供たち、ルーディナはどこかで見覚えがあるな、と思いーールーディナが、初めてモモンにあったとき、彼女と一緒の檻にいた、四人の子供たちであったことに、気づいた。
その四人も、絶望に染まっていた頃とは大きく違い、全員が全員、何やら自慢げな表情を浮かべている。
「ーーー。」
ーーーまず一人目。
赤髪に、ルーディナより少し大きい身長の男の子。
冒険者のような、ボロボロの茶色のマントを羽織り、膝小僧の部分が破れているズボンを履き、無駄に重厚そうな鋼鉄でできた鎧を着ている。
「ーーー。」
ーーーそして二人目。
青と緑が混ざったような髪に、ルーディナを容易く超える高身長の男の子。
縁が紫色のメガネをつけ、学生のような制服を身に纏い、左腕に黒鉄でできた義手のようなものをつけ、偉そうに腕を組んでいる。
「ーーー。」
ーーーそしてそして三人目。
黄髪に、ルーディナより少し小さい身長の、女の子。
腰まで伸びる黄髪は、もはや金とも言えるのではないかというぐらい輝いていて、その女の子が着ている白色の紳士服のようなものが、その女の子の魅力をさらに輝かせている。
「ーーー。」
ーーー最後、四人目。
茶髪に、ルーディナを、そして二人目の男の子ですら、最も容易く超えるほどの高身長、そしてガタイのいい体の男の子。
もはやそれは、男の子と評していいのかわからない、体格であるがーーその顔つきと表情は、とても子供らしく、着ている柔道服のようなものとは、とてもマッチしていない。
「ーーー。」
ーーーその四人の子供たちを見て、ルーディナは、ワンチャンあるかもしれないと、可能性に希望を持った。
その、あるかもしれないとはーーこの四人が、純粋そうな子供四人が、モモンたちとは違う、自己紹介をしてくれる可能性だ。
この四人ーーおそらく、年的には十歳から十三歳ほどなはず。
その四人の子供たちが、ルーディナを持ってしても理解が追いつかない謎に、追いつける可能性は低いと、ルーディナは思った。
それが故に、ルーディナは最後の可能性に賭け、期待の眼差しで四人を見つめたがーーー
「俺の名は『勇気』のレイド・ラキルティオ!赤く燃える炎を、茶色に蠢く土を、支配する一人の勇者なり!ルナ様、どうか俺を弟子にしてください!!」
「待て!ルナ様、僕の名は『知恵』のザーファル・グラヴェイル。この世にあり尽くす知恵を、知識を、知力を支配しもの。弟子にするなら、どうか僕に!!」
「自分の身をわきまえなさい、あんたら。ルナ様、私は『治癒』のリファス・カプラセル。生きとし生けるもの、死して霊となりしもの、例外なく慈愛の波動で癒すもの。弟子にするなら、私しかいません。」
「どけどけ、てめえら。てめえらみたいなへなちょこを、ルナ様が選ぶわけねえだろうが。ルナ様、俺は『堅牢』、ティーン・スタルケージ。全ての矛を受け止める盾として、破壊も地獄も例外なく、滅してみせます。弟子にするなら、こんなへなちょこどもよりも、俺しかいないです。」
「はっ、いいかお前ら、こういうのは早い者勝ちって言うんだよ。俺が弟子入り希望して、その後にのこのこと弟子にするなら弟子にするならって、お前ら手遅れなんだよ。」
「何を言っているか、貴様。ルナ様が、早い者勝ちだけで選ぶ人だと思っているのか?それはとても愚かな発想だ。僕は、早い者勝ちでも技能でも力でもなく、ルナ様は知力で人を選ぶと思っている。賢いものが近くにいる方が、ルナ様も安心されるだろうからな。」
「あんたら二人揃って、馬鹿じゃないの?早い者勝ちなんて子供の発想だし、賢い人ならルナ様で充分足りるわよ。ここはやっぱり、補助役として治癒術師でしょ?ルナ様は一人でも充分強いし充分賢いけど、治癒魔法は使えないって聞くわ。だったら、私を選ぶのは間違いないわよ。」
「てめえらは、そんな程度の低い発想しか出ねえのか?いいか、早い者勝ちなんて今じゃ時代遅れだ。子供の発想がすぎんだよ。賢いってのもルナ様で事足りてるし、強いやつに治癒なんぞいらんだろうが。だったら強さを二倍にして、ついでに盾もできるやつってのが一番いいに決まってるだろ。」
「あ?何言ってんの?ルナ様は強いし賢いから、治癒も守りもいらないんだよ。だから、決めるとしたら早い者勝ちしかないだろ?」
「その考えが愚かだと言っている。治癒も守りも何もいらないのなら、そんなくだらん方法ではなく、総合力で決めるのではないか?ならば、僕の賢さは強さも力も技も治癒も守りも、全てを超えるほどの圧倒的天才だ。選ぶなら僕しかいない。」
「自信過剰が過ぎるわよ。あんた、聞いたことないの?頭いい人は自分のこと頭いいなんて評さないわ。つまりあんたはバカってことよ。それと、ルナ様は強いし賢いけど、人間なら誰だって間違えるときぐらいあるわ。だったら、そのときの保険として、治癒は必要じゃない?」
「はっ、てめえら揃いに揃って常識がねえな。治癒魔法なんか詠唱してる間に、相手がさらに畳み掛けてきたらどうすんだよ。そのときの守りが必要だろうが。」
「やっぱ、お前ら何も分かってない!」
「わかってないのは貴様だろう?僕がこの中だと一番正しい!」
「ふん、男ってのはバカばっかね。私が一番正しいに決まってるでしょ?」
「ああ?てめえら、少しは脳を動かせよ。俺の言ってることが、一番正しいだろうが。」
「いや違う、俺が!」
「僕だ!」
「何言ってんの、私よ!」
「違えよ、俺しかねえ!」
「「「「ルナ様は誰を選びますか!?」」」」
ーーーなんてことだろうか、先程のカーヴィスやティアラナよりも、救えない状況になっている可能性が高かった。
いや、確かに、カーヴィスやティアラナよりも、自己紹介は一段階遅れているような、そんな風を感じ取れた。
二つ名も単純なものであったし、言葉遣いも子供らしいし、そういうところでは確かに、カーヴィスやティアラナよりも手遅れではない。
ーーーだが、問題はその後である。
「ーーー。」
ーーー弟子がどうだの、自分が正しいがどうだの、ルーディナは特に気にしていないがーー問題なのは、周りの唖然としている後追い(星姫の後追い、そこから取って後追い)たちや、同じく唖然としているルーディナを蚊帳の外にして、永遠に話し続ける議論だ。
お互いライバル意識が強いのかーー相手の否定、相手の拒否、己の肯定、己の賛成。
そして挙げ句の果てに、ルーディナに判断を委ねる。
それは、いくら相手が愛しているものだとは言えーールーディナにとって、迷惑である。
「・・・ええと。」
「「「「はい!!」」」」
「・・・あ、いや、もう、好きにして。」
「「「「感謝します!!!」」」」
ーーーそれで、ルーディナは今日何回目かわからない突っ込み、もしくは拒否をしようと思ったのだがーーなんか、そんなこともどうでもいいぐらい、疲れた気がする。
故にルーディナは、とりあえず、子供四人たちの好きにさせた。
「・・・ねえ、モモン。」
「はい、なんですか?」
「組織名、決めてくれてありがとね。二つ名も、すごくいいと思う。言葉遣いはみんなに戻してって伝えて。」
「い、いえ、そんな・・・わ、私はただ、ルナ様にカッコつけたかっただけで・・・でも、ルナ様が気に入ってくれたなら、私は嬉しいです!言葉遣いの件に関しては、戻してと伝えますね。」
「ん、たのんだ。」
ーーーそしてルーディナは、モモンの方を振り向きもせず、短めの感謝と依頼を、棒読みで言う。
その、ルーディナの明らかに冷たい態度にーーモモンは何をどう思ったのか、震えて声で、恐れ多そうに言葉を放っていた。
だが、とりあえず、言葉遣いの件はどうにかしてもらえそうで良かったと、ルーディナは思う。
「あ、拠点どうする。」
「拠点ですか?・・・ここがいいです!」
「でもここ、モモたちにとっては憎き場所なのでは。」
「確かにそうかもですけど・・・でも、暗い地下の中に潜むって、なんだかとてもカッコよくないですか?」
「おお、それはかっこいい。じゃあここでいいか。」
「はい、何から何まで、ありがとうございます!」
ーーー誰が聞いても気づくような棒読みであるが、モモンは特段気にもせず、ルーディナに感謝を述べ、好意は上がるのみである。
そのまま、地べたに寝転ぼうか、とルーディナは思ったがーールーディナの本能は、先程から、訴え続けている。
ーーーモモンの胸の中に飛び込みたい、と。
「モモ。」
「はい?なん・・・わっ!?」
ーーーそしてルーディナは、棒読みからの無機質な声でモモンの名を呼び、その影響で振り返ってきたモモンの胸の中に、飛び込む。
すると、その場所の居心地がいいのか、どんどん眠気が増してきた。
そのとき、ルーディナに好きにしろと言われて、喜んでいる四人の子供たち、ルーディナに認めてもらうためか伝えるためか、何か言い合っているカーヴィスとティアラナーー他にも、何か騒いでいる後追いたちを見て、ルーディナは、思った。
「・・・ふふ。」
ーーーみんながこうも、いろいろと変わっているのは、ルーディナに気に入られたい故だからか、と。
長い、長いね、長いよ、長いさ、長いとも、長いかも、長いだろう、長いだろうさ、長いだろうから、長すぎるから、長くて長すぎて長いがすぎるからこそッ!暴飲ッ!暴食ッ!
というわけで、なんか長くなりました。
あ、PrincessとかAldebaranとかchildrenとか、いやあんたそれこの世界に存在するんすか的な言葉は、全部魔法名からとってきたやつです。
例えば、水撃光線あるじゃないですか。
それ、ウォーターが水撃という意味、レーザーが光線という意味、ってわかりますよね。
そうこの世界、水撃とこの世界の文字で書いて、普通はすいげきって読むけど、魔法のときだとウォーターって読む、みたいな感じなので、まあそんな感じなんすよ。
で、プリンセスもアルデバランもチルドレンも、そんな感じで姫、後追い、子供で魔法名があるんですよ。
子供増殖とか、後追いを殺すものとか。
そんな感じなので、英語でルビ振れたんだよーって話です。
はい、超細かい説明でした。
あーあと、モモンのルーディナ溺愛文あるやん。
ルーディナのことなんで星姫と呼ぶかの説明のやつね。
あれ872文字なんだけど、この物語じゃその文字数少ない方なんすよ〜。
最終章で2400文字、2900文字、3500文字、9400文字が出てくるから、楽しみに待っててね!
というわけで、今回も読んでくれてありがとうございます!!
では、さらばだ。




