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ナナミリ、マルマン、ガンター

 第32章


 彼ら3人は前任からの引継ぎだ。元のパールが育てていた3人とモンスール。


 モンスールは一番年長で、女の子の為に手元に置いて育てたのだろうと推測された。4人は同じ孤児院で生活していて、元のパールは初めから魔力持ちの孤児を探して、この4人に決めていた・・、元のパールの記憶の中から探した為、曖昧な事も多いが、4人の本質も見抜いていた事が、最近になってわかった。


 4人は、共に生活していた事で結束も固く、素直で努力家だ。生活が安定している為か、孤児でも悲壮感があまりない。


 一番最初に事務所に入っていたナナミリはいつもの様に聞く

 「モンスールは元気ですか?」


 「元気よ。言わないけど、きっと3人に会いたいと思ってるわよ。早くポータルを作って3人を呼びたいけど、まだ時間がかかりそうなのよ。ごめんなさい…」


 「いえ、元気ならいいです」


 「ナナミリは、現在は実質の経営者でしょ?年長者でもあるけど困った事はない?」


 「成人前に仕事をしていた頃は、少し不安でしたが、15歳になってからは胸を張って仕事ができますし、パール様から言われた通りに孤児院経由でフラグメール邸からのクズ魔石が大量に運び込まれました」


 「孤児院の院長が、前回の慰問の時に、側妃に僕たちの事を話して下さって、大量の魔石が取れました」


 「他者からの圧力はない?」

 「はい、今はありません。フラグメール家の馬車で運び込まれましたので・・・」


 「うん?それは本当?相変わらずお母様は目先の事しか考えてないのね。有難いけど・・」


 「採掘場からはどう?出てる?」

 「採掘場は、採掘量が平年並みで、ゴミも同じくらい出ています」


 「孤児院にはお金は入れているの?」

 「はい、院長は、二人は、雇われていると思っていますので、彼らは給料の3割を入れています」


 「ナナ商会のお金の心配はどう?」

 「ありません、実質、3人では、ふるいにかけられた後の魔石クズの分類しか仕事はなく、魔石はパール様が処理して下さいますし、帳簿をつけて勉強してふたりは孤児院に帰って、僕はここで寝泊まりしています」


 「あっ!強いて言えば、困っているのはお金の隠し場所です。僕が、大金をこの事務所に残して出かける事もできず、持ち運ぶのはもっといやです」


 「そうね、今日は3人にマジック収納を持って来たから、今後は暇な時に魔力を入れて拡大して、そこにお金を入れると良いわ、今回の課題はこれにします」


 ナナミリと話しているとマルマンとガンターも小綺麗になってやって来た。


 同じ年の二人を見るとなんだか安心して、パールも笑顔になる


 「二人はどう?困った事はある?」


 二人は顔を見合わせて考える。

 「雨が降ると、魔石の分類ができなくて・・・、勉強ばかりになります」


 (う?それは困りごとなの?勉強が嫌って事?」


 「屋外に屋根付きのスペースを作ればいいの?」


 ナナミリは横に首を振り、パールの好意を止める。


 「違います。雨の日にしか勉強しないので屋根は必要ありません。二人にとって魔石の分類は遊びと一緒で夢中になってやってます。グズ魔石が多く運び込まれた時は、僕も手伝いますが、ほぼ二人で仕事が完成してしまうのです」


 「仕事が遊びって・・どこかの誰かさんのようね。読み書きや計算はどう?」


 「読み書き計算は、大丈夫ですが、帳簿をつけるには、色々な理解が不足しています」


 「ナナミリはこの年には理解していたでしょ?」


 「・・二人は体を動かす事の方が、向いていると思います」

 「では、帳簿のつけ方が理解出来たら、馬を3頭買いましょう。それまでに馬小屋を用意して、剣術の手習いにも出しましょう」


 「え!!」二人は飛び跳ねて喜んだが、ナナミリがしっかりと釘をさす。


 「読み書き、計算が完璧になって帳簿が理解できたらだぞ!大丈夫か?」


 「ナナミリは理解出来ているので、馬小屋が出来たら乗馬を習いに行って、馬車を購入しておきなさい、目の前に人参は必要でしょ?」


 3人は意味がわからずにパールを見ているが、パールが取り出したメゾンドオリザボシ帝国のお菓子が目に入ると、すっかり忘れたようだ。


 3人を見ていると元のパールが彼らを大切にしていた事がわかる。ここにモンスールもいて5人で笑い合っていたに違いない。


 ナナミリ達の村は魔力持ちが多く産まれる村で、それなりに栄えていた。4人にも両親がいて、温かい家庭だったのだろう。しかし、その村で変な病気が流行したのだ。大人だけが亡くなる病気…


 国は調査に乗り出したが、原因は不明でその村の子供たちは孤児院に入るか、貴族の保護を受けるかを選択するようになった。


 パールは直ぐに4人の保護を申し出た。そう、誰よりも早く、彼らが一番魔力が多かったからだ。


 当時、王宮で噂されていたのは魔力不足だった。貴族の中でも魔力持ちの子供があまり産まれなくなったのだ。パールは王宮に居る時は情報を集め、精査し、次を考えていた。


 もしも、マリージョンが関与していたら、パールは気が触れると、思いながら調査を始めた。そこで、国民からの疑惑の声を大きくし、世論を味方にして、最後は国王陛下を動かした。


 結局、捕まったのは中堅の伯爵家だったが、皇后側の貴族だった事は明白で、その為、貴族側の保護は取り消しになり、全員が郊外の孤児院に入る事となった。


 パールは、なぜ、皇后が、魔力持ちの子供を確保したかったのかが、わからず怖かったので4人はそのまま側妃側で面倒みる様に仕向けた。


 

 あの日、王宮の噴水で第二皇子と対決するまでは、皇后の意図はわからなかった。王室関係者で魔力無しは存在しない。フラグメール国では、それは常識で、皇室の人間は、何か災害が起こった時に出動し、国民の為に魔力を使う使命がある。


 国民はその為に納税していると言っても過言ではない。皇族は防波堤なのだ。


 側妃のマリージョンは魔力が多く、国王陛下は、魔力を気に入り側室に入れたのだから、第二皇子に魔力がないとは誰一人も思わない。


 王族は魔力測定などしない、属性も気にしていない。有って当然だからだ。


 しかし、この事件に皇后が関わっているのなら話は別だ。皇后と皇子の魔力を確かめたいと思って、第二皇子に罠をかけたのだ。


 第二皇子はナナミリと背格好が似ていて、影武者には丁度いい、それに魔力持ちだ。


 噴水の水を自由に操り、第二皇子を挑発した。いつもの様に悪口を言われ頭に来たと言う設定で、魔法で、皇子に水のマシンガンを向けたのだ。


 周りのお付きの者たちは、慌てて反撃して来たが、第二皇子は魔法を使わなかった。いいえ、使えなかったのだ。


 大きな騒ぎになり、誰もが止めに入った瞬間に、噴水の中に頭を入れられて死にかけた。周りは知っていたのだ、第二皇子が魔法を使えない事を、だから、パールを殺すしかなかった・・。


 その後、起きた事は、マリージョンが第二皇子の事を知り、皇后の卑劣な手段もわかり、国王と皇后に圧力をかけ、パールをメゾンドオリザボシ帝国に嫁がせる切符を手にした事実。


 モンスールは、この1週間、どの位泣いて、どのように気持ちの整理をしたのだろうか?そう思うとパールの気持ちは惜しくて、潰れそうになる。


 皇后に殺された村の人達、いきなり孤児になった子供為に、パールになって復習しようと思った。


 そして、個人的に国王陛下に面会の時間を頂いて、残った孤児たちの援助を確約する代わりにメゾンドオリザボシ帝国に嫁ぐ事を承諾した。


 この頃の国王陛下は、ご健在で心優しく、女の趣味の悪さを除けば普通のオジサンだった。


 「のう・・、パール、パールが皇子だったら良かったと思わぬか?」と普通のオジサンは言う。

 「皇子でしたら、生まれて3日以内に亡くなってますよ」

 「ハハハハハ・・、そうだな」


 

 メゾンドオリザボシ帝国に嫁ぎ、公式では一度も帰省していないパールが、フラグメール国の国王陛下に再会したのは、彼が今際の際に立っている時だった。

 


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