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変人モモホラ様

 第26章


 「パール様、授業の開始時間が迫っていらっしゃいます」と、モンスールはそっと近づき心配して声をかける。

 

 廊下での口論は噂の種を撒いているのと同じで、二人は黙ったまま世界学の教室に入っていった。

 「モモホラ様も世界学を履修なさっていらっしゃるのですか?」


 モモホラは気にせずにパールの隣に座り、モンスールは廊下のドアの向こうから心配そうに覗き込んでいる。

 

 「いや、1年前に卒業に必要な単位はすべて習得しているので、暇つぶしに来た」

 「そのような事が出来るのですか?」

 「さぁ、どの教室に赴いても文句を言われたことはない 」

 「早期の卒業は考えないのですか?」


 「まさか、その様な事をしたら、仕事をしなけらばならないだろう?僕には無理だね。永遠にアカデミーにいるつもりだから・・」


 「でも、公爵家を継ぐ為に、近衛兵に入団なさらないのですか?」

 「我がキナグリ公爵家は、男が多く産まれる家系で、僕の下にも3人弟がいる。親戚はすべて近衛兵に入団し、ポマード頭の白い制服で、最近では、誰が誰だかもわからないほどだ」


 「一人ぐらい生涯アカデミーで暮らしていてもバレないだろう…」


 パールは心の中で、そんな訳ないと思いながら、リネガーケント国王と同級生のモモホラの同席を許した。


 バルタコレユル教授の授業は脱線が多く、世界学については他国の噂話が大部分を占める。だから、本日の話題は、朝の騒動から始まった。


 すでに学生の為の映像は映し出されていて、覚えたい生徒はノートを執ったり、暗記したり、内職ももちろん見逃し、その様な雰囲気でもバルタコレユル教授のおしゃべりは止まらない。


 「軍部はいつから用意していたのだろうね?」


 一人の生徒は答える「随分前からではないでしょうか?」


 「なぜ、そう思うのかね?」


 「素早い対応だと感じたからです」


 「う~~」


 「では、そこのモモホラ君はどう思いましたか?」


 教室内はシーンとなりモモホラは立ち上がり答える。


 「陛下は、確信を得てから動きます。その為、軍部はいつも動けるのです」


 「そうだね、僕は夜中に確証をえて、早朝に出発したのではないかと考えました。あの場所に何があるのかはわかりませんが、この国は常に身構えてますからね・・」


 「僕の予想では、あの場所の地下は遺跡があるのではないでしょうか?」


 あ~~、多分、この場の誰もが思っていても口に出せない事を、この教授は大勢の前で話してる。


 「パールくんは、どう思う?」(おまけに名指しで答えを要求して来た)


 「はい、皆さんご存じでしょうが、わたくしはこの国に来て2年です。この国の遺跡と言う所に行ったことがありませんし、遺跡の価値もまだわからないのですが、遺跡の発見はすごい事なのでしょうか?」


 「そうか・・、そうだね、では、今日の授業は遺跡について話しましょう」

 

 「現在発見されている遺跡は王都には無く、地方に3ケ所あります。遺跡は当然、王家で大切に管理されています。何故だかわかりますか?」


 パールは前世の記憶で、発掘が終わっていないからだと思って聞いていたが、バルタコレユル教授は

「成長して、変化しているからです」と答えた。


 「成長して、変化するって・・何が?」


 「この国では遺跡は生きていると考えられていますが、他の国ではどうですか?」


 一人の亜人の留学生が、「僕の国ではダンジョンと言いまして、時々、ダンジョン内は変化しますし、見つかっていない宝箱なども多数あります」


 (そうなの?え~~不思議、フラグメール国には無かったのかしら?)


 その後もたくさんの皇室留学の学生は自国の遺跡の自慢を始めた。

 

 「わたくしの国では、山全体が遺跡で、多民族が暮らしていて大騒ぎになった事もあります。ですから、今朝の騒ぎは当然だと思いました。遺跡には何があるかわからないからです」


 「わたくしの国では、遺跡の中には不老不死の水が湧き、その水を求めて龍がやって来ると言う言い伝えがあります。龍が現れた場所では必ず発掘作業が行われます」


 隣に座っているモモホラが、

 「フラグメール国ではないのですか?」

 「ごめんなさい、王宮でも屋敷でも情報制限がかかっていたようで、フラグメール国の事はあまり詳しくないのです。生まれてすぐに、こちらの国へ嫁ぐ事が決まってましたから、こちらに来てからの方が、世の中の事を知る機会が沢山ありした」


 「そのような・・、それでも、パール様は、優秀ですね。今回の遺跡の発掘にも役立っているのですから」

 「そうでしょうか?陛下は、最初から、ご存じだったと思いますよ」

 「・・・そう言う所が優秀なのですよ…」


 「モモホラ様は陛下のお友達ですか?」

 「同じ年に入学しました。子供の頃は、たまに会う事も有りましたが、友達関係はどうでしょうか?」


 「そうですね。わたくしも国では友人はできませんでした。何を話していいのかわからなかったのです」


 「そのような類は、僕も何度も経験しています。話した内容が他者にどのように伝わるかわかりませんからね」

 「ええ、でも、わたくし達、今、結構、会話してますね」


 「パール様は、僕が思っていた以上に優秀だとわかりましたので、ここから本題に入ります。僕を遺跡の責任者にしてくれませんか?」


 「わ、わたくしがですか?そのような権限はございませんが・・?」


 「あります。あの土地はあなたの土地です。今は陛下があなたの土地を発掘しているのです」

 「・・・・・・」 



 「パール様は家族、親族、屋敷内の人間すべて近衛兵のような家に暮らす苦痛がわかりますか?」


 「僕は、剣の練習も、肉体の鍛錬も、規則正しい生き方も向いていないのです。それなのに、道は1本しか用意されていません。生涯をかけて公園内の遺跡を守り抜く事を誓います。どうか、僕に命じて下さい」


 (それって・・、家族全員が筋脳で、すでに近衛兵への道しかなく、このチャンスに飛びつきたいと、そういう事?この人、面接の予約も取らずに、私に就職活動しているの?)


 「へ、陛下にお願いしてみてはどうでしょうか?」

 「・・・、あまり、話をしたことがありません」

 「同級生ですよね?」

 「パール様は他の同級生とは親しいのでしょうか?」

 「・・・・・・」


 パールは少しカチンと来て、改めてモモホラと向き合う。

 「しかし、モモホラ様を責任者にして、わたくしに得する事はございますか?」


 「五大公爵家の一つが王妃側に就きます。弟はたくさんいますが正当な嫡男は私だけです」


 「キナグリ公爵家の正当な跡継ぎはその家だけに特化した魔力が使えます。今は、言えませんが、キナグリ公爵家は僕だけに継承されています。実はこれも大きな秘密です。今は陛下も知りません」


 「だから・・」

 「はい、だから、のんべんだらりと暮らしていても怒られませんでした。しかし、陛下はさっさとご卒業され、婚約者もいらしゃるのに、いつまでも、近衛団長の嫡男がブラブラしているのは外聞が悪いと、最近、両親も気づき始めたのです」


 「お願いします。パール様」モモホラは切実に言い切った。


 授業中に結界を張り、周りに聞こえないようにしている能力を見ると、魔力は多い方だとも思うが、どうしたものだろうか?なぜ?彼はこのように急いでいるのか?


 なぜ・・急ぐ・・なぜ?


 「・・本日中に陛下は、ご自分が欲しい物を見つけると思ってますか?」


 「え!!、・・・・・思ってます」困った顔で頷く


 「では、キナグリ公爵家、モモホラ様を遺跡発掘管理者に任命します。但し、条件があります。遺跡内で魔法陣が見つかった場合は、わたくしにだけ教えて下さい。陛下にも報告しないで、わたくしにだけ報告する事はできますか?」


 モモホラはパールの顔をじっと見て「できます」と答えた。



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