大きな贈り物と厄介
第24章
「今回も国王陛下の贈り物は大きな物でしたね・・」とモンスールは簡単に本音を言う。
その姿を見て、パールは、
「モンスール、贈り物ではなく、厄介物と言うのですよ。わたくしは、別に離宮とか欲しくなかったのですから、結婚後、王妃は、宮殿に住むでしょ?離宮が必要とは思えません。きっと、皇后陛下には結婚後も使えるとか言って、許可を頂いたのでしょう・・」
「どういう事ですか?」
カメールが「国王陛下がパール様を気に入らなければ、離宮にずっと住まわすと言う事です」
「まさか、そのような事・・」
「あら?わたくしはフラグメール国ではずっと王宮の外で暮らしていたでしょ?一応、皇女なのに・・」
「・・まぁ、あの研究所では、やりたい事もできませんし、結局は良かったのかも・・」
3人はしばらく考え込み、これからの計画を立てる。
「整地には2年はかけて下さい。その2年間で離宮も建築します」
「整地に2年ですか?そんなに時間はかかりませんが・・?」
「実は地下に埋めたい物があるの水道管よ。水道管を通して魔力塔から魔力を頂きたいの、ポリアンナ公爵家が地上の道を欲しがった時は、少し驚いたけど、わたくしは、地下の道が欲しいの、魔力塔から魔力を拝借したいのよ」
「お嬢様は、国王陛下に並ぶくらいの魔力をお持ちですが、まだ足りないのですか?」
「ええ、ナナミリ達を呼ぶにはまだ足りないの!」
「そっか、そうですね。彼らを呼ぶには必要ですね」
カメールは不思議な顔をしているので説明する。
「カメール、わたくしにはフラグメール国にあなたのような部下がいます。それと、この国の研究員たちが欲しがっているポータルはわかる?」
「はい、座標を決めて瞬間移動が可能なものですよね?」
「そう、国から国へ、実は、わたくしはすでに手にしているの」
「・・・・・・」
「そのポータルはまだ1つしかなくて、それを改良して複数作りたいと思っています」
「そのような・・事・・可能なのですか?」
「カメール、モンスール、フラグメール国の3人、予備に数個を製造する予定だから魔力は魔力塔に頼るつもりです」
「それにあなた達は魔力が少ないから、魔石にも魔力を注入したいし・・、あの湖の水も離宮に引きたいの、この前、魔石と砂と土を混ぜて模型を作ったでしょ?」
ふたりは処理オーバーな顔をしているが、パールは気にせずに続ける。
「あれはすごいのよ。浄化の作用があって、水をかけると固まる、もっと色々出来そうだけど、それだけでもすごい事です」
「離宮には、綺麗な水を大量に引き込み、おいしい水がどんどん使える。その効果を発表して、魔石塔にもいかがですか?と、魔石塔まで地下を通す予定です」
「それに、あの旧ポリアンナ公爵家の地下には何かありそうよ。皇后陛下の前で掘ると宣言した時に、彼女の顔が引きつっていたから・・、その秘密はまだわからないが、ここは国王陛下に応援してもらいたい所です。カメールはその方向で国王陛下に接して下さい」
「かしこまりました」カメールはパールの壮大な計画を頭の中に叩き込んだ。
「離宮の設計はわたくしがしますので、設計図が出来上がったら国王陛下に許可の申請をして下さい」
「整地と離宮建築は2年かける事、旧ポリアンナ公爵家の地下は国王陛下の指示を仰いでその通りに行って下さい。後、狩場の調査はブレイク文官にお願いするつもりです。彼がどうにかして下さるでしょう、多分…」
「かしこまりました」とカメールは、今度はメモを取り始めた。
パールは、心の中で頑張れと言い続ける。本当にごめん、でも頑張って!
◇◇◇◇◇◇
パールは、アカデミーにもどり授業に参加している。学年が1つ上がって、パールの隣にはルリーシャがいつも同行する様になった。
「パール様はどの教科を選択するおつもりですか?」
「2年生の一般科目と世界学を履修する予定です」
「世界学ですか?珍しい学科ですね」
「そう?人気がないのでしょうか?」
「・・やはり、理系なら研究職につける学科、文系なら官僚になれる学科が人気ですからね」
「わたくしはどちらにもなれませんから、世界学が向いてそうですね、フフフ」
「あのぅ、パール様、ご一緒に世界学を履修してもよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん、ご一緒しましょう」
二人は楽しそうにおしゃべりしながら世界学の教室に入って行った。世界学の教授は予想通りのおじいちゃん先生で、おまけにマイクの魔道具を使用しながら講義を始めて行く。
ルリーシャは、眠そうな目をしながら、それでもノートを取り、落第できないと決意を表しながら子守歌のような講義を聞いている。
パールは、この世界に来てからの不思議を探している。生きている場所が違うのだからと諦めていたが、学ぶ場所と時間があるなら解明したいと思っている。
バルタコレユル教授はパールをチラッと見て、椅子に腰かけたまま魔道具で黒板に出来上がった資料をスライドしている。
撮影とはまた違う一般的な黒板の利用方法で、理由は、その年ごとで習う内容が違う事がないようと、決められた教科書のような物で、戸袋に薄い雨戸が何枚も収納されている感じだ。
「皇族留学生の諸君は、自国からグリフォンに乗ってやって来てたのだろう?空のから見た世界はどのように感じましたか?」
指名されたどこかの亜人族の学生は、
「空と雲しか見えませんでした」と答えた。
バルタコレユル教授は、次に興味深そうにパールを指す。
「はい、わたくしの場合は、人数が多かったので隊列と雲といくつかの国も見えました」
「そうですか、それは貴重な経験です」
「パール様がいくつかの国が見えたとおっしゃったのは、パール様の国はメゾンドオリザボシ帝国と同列に並んでいるか、フラグメール国の方が少し高い位置にあったでしょう?」
「国の浮き沈みは、季節や天候に左右されるのではないかと考えられます」
「我が国、メゾンドオリザボシ帝国が、恵まれた環境でいられるのは、浮きの状況に左右されていると考えられ、隣国は常に変化します」
「メゾンドオリザボシ帝国は帝国である為に、当然のように他国への出入りができますが、属国などからメゾンドオリザボシ帝国への入国は厳しい審査があり、物資だけの場合は検疫検査に合格すればどの国からも受け入れる事ができます」
「さて、現在の状況は皆さんも頭に入っているでしょう。それぞれの国はどのような形をしているかは帝国では調査済みです。試験はこの辺りが出題されます。おのおの覚えて下さい」
生徒の一人が質問する。
「帝国に属している国すべてですか?」
「そうです。後は、年代も覚え、どの国から属国になったか、戦争理由なども調べる様に・・」
教室内はザワザワしだした。世界学だからこのような勉強内容だとは思っていたが、あまりにも生徒に丸投げではないだろうか?
「もう、授業はないのですか?」とまた他の人が質問する。
「いや、授業は毎回ある。しかし、これからは、余談を話す授業になります。それでも良かったら履修して下さい」
パールはバルタコレユル教授が、どんな話をしてくれるかワクワクしたが、授業終わりにそれぞれの国の教材、歴史年表、資料集の販売があり、バルタコレユル教授がホクホクした顔でその販売の列を見ているのに気づいた時はガッカリした。
「これら基本事項は丸暗記ですね」とため息をつく
「教授もお年を召してからは、毎年、同じ授業をやる意味が見出せなくなったらしいですよ。雑談がお好きみたいで皇族留学生の話しを聞くことを、楽しみにしているようです」
最近は、アカデミー内でもモンスールと護衛が待機することが認められて、小さな噂話も拾えるようになった。




