プレゼンテーション②
第21章
青空の元、集まった人数は20人程度で、その中にはチャリチャリ亭のメンバーもいる。
「パール様、軽食とお茶の準備は彼らに任せてよろしいでしょうか?」
「貴族に慣れているので大丈夫だと思いますよ。しかし、チャリチャリ亭の人数が予想外に多く感じますが?」
「はい、最近では大店からチャリチャリ亭に送られてくる人間もいるようで、商売上、断る事も困難で従業員は増える一方のようです。ノムシルは、これから仕事も増えるので相殺できると見込んでいるみたいです」
「平民の世界も大変よね・・、カメールがいないと・・」
「・・お嬢は良かったですね。お嬢様が空を飛ぶと報告が届いて、すぐにカメールがお嬢様の首席文官に任命されましたものね。ブレイク文官は裏技を使ったのでしょうか?」
「上級公務員に合格後、1年の研修後に配属が決まるらしくカメールはまだ見習いですが、休日出勤扱いでこの場にいるようですよ」
「わたくしがアカデミーに通っている時間は研修を受けるので、他の人よりちょっと大変よね?」
「ええ、まぁ、多少ですけどね・・・」モンス―は少し遠い目をした。
◇◇◇◇◇◇
美しく整えられたテントの中、立派な制服を身に着けた護衛隊長がやって来た。
「パール様、準備が整いました。Ⅰブロックから始めますか?」
「はい、兵士の方の準備はよろしいでしょうか?」とにっこり微笑む。
いつも後ろで警備にあたっている兵士をグリフォンに同乗させる事にした。常に帯同するのが彼らの仕事のはずなので、文句は言わせない。
「では、グリフォンの操縦をお願いしますね。わたくしはこの機械で撮影しますので」
少し青ざめた顔の兵士は、何日も練習したようで、緊張しているのがわかる。周りも未来の王妃に何かあったら困るという顔で言葉も発せずにその乗り込み準備を見ていた。
そこに、カメールがやって来て
「パール様、グリフォンの鞍に付ける安全ベルトを改良してきました」
その鞍はパールがすっぽり入っておまけに安全バーのように握る事も出来る優れものだ。
この鞍の為に前方に乗る兵士はやせ型が選ばれたらしい・・、座る場所がほんの少しで申し訳ない。
グリフォンが飛びたちⅠブロック上空で自撮り棒のような形をした撮影魔道具にどんどん魔力を注ぎ込み1回目の撮影が終了する。(ちなみに自撮り棒も安全鞍に繋がれている)
地上に降りると撮影魔道具を交換して、直ぐにⅡブロックへと旅立ち、次々に撮影を終えて行く。
「Ⅶブロックで完了します。パール様は大丈夫ですか?」
「ええ、一応は大丈夫ですけど、確認作業が終わって不備があるのはちょっと嫌です・・」
「・・・わかります!限界が近いですよね・・」
操縦兵士と少し連帯感が生まれて、パールの上空撮影は終了した。
モンスールは急いで駆け寄って来て、パールの無事を確認しながら体を支えテントへと導いて歩く。
「お嬢様、大丈夫でしょうか?」
「魔力的には大丈夫でしたが、自分でグリフォンを操縦していないので酔いました。気持ち悪いです」
青い顔のパールは直ぐにテントないに常設された個室のベットに寝かされた。
「ベットがあるなんて・・カメール?」
「はい、今朝早く、カメールとチャリチャリ亭のみんなで運び入れました」
「みんなにありがとうって言っておいて、助かりました」と言い終わるとパールは眠りについた。
2時間の昼寝を終えると軽食が運ばれてきて、モンスールに状況を聞いた。
「確認作業はまだ終わっていませんが、今の所は不備はなくすべて順調のようです」
「そう、良かった。一安心ね」
「カメールからですが、今日の撮影会に多少貴族たちの息のかかった者たちも参加しているようで、チャリチャリ亭の見習いの中にも存在していようです」
「まぁ、そうでしょう。情報が漏れると興味が湧くものよね……」
「貴族関係はカメールが、チャリチャリ亭関係はノムシルが処理してくれると信じて待ちましょう」
「よろしいのですか?」
「全部を秘密裏に行う事ないのよ。味方が皆無の状況から、少しずつ協力者を集って事業を成功させる事ができればいいのでしょう・・、でも、この国はフラグメール国のようにお金や名誉に執着している貴族が少ないように思えるのも不思議よね?フラグメール国がひど過ぎたのかしらね・・」
「はい、そう言えば、この国に来てから他のメイドは皆さん親切です。意地悪とかされた事がありません」
「民度の差なのかしら?立場の差なのかはわからないですが、協力的よね?」
「国王の力が強いのかしら?皇后の方が目立つけどね」
学生達が興奮した顔で報告に来て、ミスが無かった事が報告された。
「お疲れ様です。今日はこのまま解散しましょう。カメール、後は頼みました」
◇◇◇◇◇◇
次の日の午後、カメールが国王からのお見舞いを持参してやって来た。パールはその日の夜から熱を出して寝込んだ事が、朝、報告されたのだろう。体力問題が争点になれば言い返せないが、年齢を考慮してくれることを望むしかない。
「お嬢様・・、国王陛下のお見舞いをお持ちしました・・」
ベットの中でグダグダしているパールは、モンスールのオドオドした声にも反応しないで、もう一度眠りに就こうと寝返りをうった時にその標本箱が目に入った。
「モンスール、その標本箱と大量の本は何?」
「あの・・、陛下よりお見舞いです」
「お見舞いって、普通、花とかお菓子が定番ではないの?」
「お花とお菓子も届いております」
その花とお菓子を見ると、どうしてもパールの趣味がまるわかりのカメールが選んだものだとわかる。
「起きたくないけど、羽織る物を持って来て、隣の部屋にカメールも呼んで来てくれる?」
「しかし、お嬢様・・・、まだお熱があります」
「熱があるのがわかっていてモンスールに確認を頼んだのですから、カメールも次の指示が欲しいのでしょう」
「・・・・・・」
寝室の周りは3部屋で囲まれていて、一つは食堂、もう一つは衣裳部屋、そしてもう一つはただの会議室、その他に執務室、資料室、面会室、キッチン、浴槽も備え付けられパールの生活拠点は元気に成長中で、欲しい物はすべて持ち込めるように整備された。
簡単に着替え終わると鏡の前で身だしなみを整え、ついでに不機嫌な顔も少し整えカメールの待つ会議室に向かった。
この物凄く広い部屋には何もない、何もない事はカメールとモンスールしか知らない。ここはパールのマジック収納を整理する場所で、カメールとの取引場所でもある。
すでにカメールは自分のマジック収納から椅子とテーブル、飲み物、温かい食事やお菓子等も用意して待っていた。
「パール様、体調が悪い時に申し訳ございません」カメールは深々と頭を下げた。
「大丈夫です。それよりあの標本箱は何かしら?」
「はい、・・・国王陛下より役立つのでは?と、魔力塔から奪って、いいえ、もらい受けた魔石の標本箱と貴重な本です……それで・・あの・・、前回の公園内の成分分析、今回の撮影会、パール様は一度も国王陛下にご報告されていませんよね?」
「報告が必要だと、ブレイク文官も言わなかったけど?」
カメールは少し困った顔で、パールを見て
「勿論、国王陛下への報告義務はございませんが、お二人は婚約者同士で、プレゼントや手紙などを送り合ったりするものでしょ?と、皇后さまが陛下や側近たちにおっしゃってまして・・」
「それって、わたくしが陛下にお手紙で報告すると皇后の検閲が入って、ポリアンナ公爵家に情報が洩れる仕組みになっているの?」
「まぁ、平たく言うとそうです・・よね?」
「成分分析の正確な報告書はメルグレス主任に1枚だけ渡したの、魔法紙に描いて、ついでに魔法陣で細工もした・・・もしかして燃えて無くなったの?」
かき集めた成分表は、学生たちがボロボロと提出日を過ぎても提出して来たので、もう一度パール自身が集計を行い、1部、メルグレス主任に渡した。
メルグレス主任を信用していない訳ではないが、見えないように罠を仕掛け他の紙に写そうとすると、誤字脱字に変換されたり、部外者に渡ると燃える様に魔法をかけた。
「ほうほう・・、それはそれは・・困りましたね・・」




