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地質調査

 第19章


 パールの考え方は、前世を基準にした考え方になっている。グリフォンに乗ってメゾンドオリザボシ帝国へやって来た時に感じたのだ。グリフォンは魔石を餌にして飛ぶ、つまり魔石が燃料なのだ。


 グリフォンは一人乗りで、荷物はそれぞれのマジック収納に収納して運んできた。グリフォンは魔石が足りなくなると安定飛行が難しくなり、魔力の少ない魔石では遠乗りは不可能になる。魔石に魔力を注入する事が出来る魔力持ちならば、安定飛行が可能になるのではと思っている。


 「この国には魔獣はあまり存在しないですよね?魔石は輸入に頼ってますけど、魔石に変わる物はないのでしょうか?」


 「考えた事はありませんでした。普通に魔石が豊富にありますし、クズになった魔石は家庭燃料に使われてます」


 「では、品質の良い魔石に魔力を注入する事は可能ですか?可能であればポータルの研究にも役立つと思うのですが・・?」


 「魔石は使い捨てでしょう・・?魔石の魔力を使って魔法陣を動かしますのでやはり、使い捨てで、補助的かと・・」

 「そうなのですか?では、なぜ、魔法塔はあのように魔力を貯めているのですか?」


 「・・・・・・」学生たちは、まったく理解できないような顔でパールを見て考えていた。


 「ーーそれは今回の地質調査は何か関係があるのでしょうか?」


 「いいえ、何か発見されれば良いと考えています。それにはまず成分分析装置の開発をお願いします」


 「どのように分類するかは皆さんと考えますが、私の欲しい物は魔石・鉱物・土の性質ですね」


 「その3種類でしたら比較的簡単です。すぐに出来上がるでしょう」

 「では、作業に参加する全員分をお願いします。料金はお支払いします」


 「・・・・・・」


 確かに既成の物を少し改良するだけで出来る事は知っているが、それをこの研究室で、複製し大量生産できるのかを試したい。この国の産業の事は全然わからないから・・学生研究生、頼みました。


◇◇◇◇◇◇


 ビルナツメ研究室の学生達に仕事を頼んだ事は、すぐにブレイク文官に伝わり、装置が出来上がったら学生だけではなく平民たちにも仕事を分ける様に指示が来た。


 「平民たちに仕事を頼む事は良いのですが、その伝手はわたくしにはありませんが・・」

 「こちらで、いくつかのギルトに仕事を振り分けます」

 「研究室としては記録を残す事とが大切なのですが、記録係には学生は使えますか?」


 「学生はそのような事は出来ません。しかし、役所は指示が出せますので、そちらに記録を頼みましょう」


 「では、わたくしの許可が出るまで、大勢の人間をあの土地に入れないでくださいね」


 「パール様はご自分で行かれるのですか?」

 「はい、そうですよ。護衛もつきましたし、知り合いもいますので大丈夫です」


 ブレイク文官は納得がいかないような顔をして去っていき。パールは出来上がった成分分析装置をもって、チャリチャリ亭が集めた労働者とモンスール、どうしても同行を希望した20人の学生と共に掘り起こされている場所にやって来た。


 「では、お願いします」


 パールは、用意された大きなテントの中で集計作業をする学生たちの姿を見ながらモンスールにお茶を入れて貰って飲み始めた。


 「モンスール、わたくしも参加したかったわ・・」

 「さすがにそれは無理でしょう。ブレイク文官の帰り際のお顔が引きつってましたよ」

 「ええ、でも、面白そうでしょ?」


 みんなの作業が終わるのを待っていると、一人の女の子がパールの近くにやって来た。


 「はじめまして、ルリーシャ・ブックスと申します」

 「はじめまして、パール・フラグメールです。何か発見がありましたか?」

 「いいえ、その、わたくし、その、ビルナツメ研究室の者ではないのですが、その、今、ビルナツメ研究室に入る事は難しくて、その、父に・・・、父はブックス伯爵で、伯爵の身分で国王陛下の婚約者様にお願いする事は出来ないので・・・、そのアカデミーに通っているので・・」


 「お父様の願いはどのような事でしょう」

 「あの・・、父は魔石の輸入をしています。それで、わたくしにこの研究室に入るようにと・・」


 モンスールは何も発しないが少し圧を感じる。

 「わたくしが個人的にメゾンドオリザボシ帝国の貴族の方と交流を持っていいのかわからないので、ブレイク文官に聞いてからお返事するのでよろしいでしょうか?」


 「はい、ありがとうございます」


 「ルリーシャさん、時間がおありでしたらお茶でもいかがですか?」

  

 周りは、多少、ピリピリしているが、パールはアカデミーに入ってから初めて同年代の女の子に話しかけられて少し嬉しいのだ。それに、親の指示に同情心も沸いた。


 ルリーシャは遠慮気味に席について、モンスールがお茶を置くのを恥ずかしそうに待っている。

 「ルリーシャさんはお幾つですか?」

 「はい、去年入学しまして、パール様と同じ学年になります。履修はまだ基礎分野でウロウロしている状態で、優秀者のパール様とは大違いです」


 「わたくし、同じ年のお友達がいませんので、少し、頑張り過ぎたのかしら・・?」


 「いいえ、わたくしが勉強が苦手なだけです。入学試験もギリギリで、申し訳ありません」


 「ところで、お父様はどのようにおっしゃったのですか?」


 「え~と、その、魔石の使用方法が変わる危険性についてとか?土の中に魔石があるのかなどですか?色々と心配なようで、魔石の価値が変わると、我が家も大きく変化するとおっしゃってました」


 平民のモンスールでさえ、痛い子供を見ているような顔をしているが、こんなに素直に将来の王妃に対して話しても良いのだろうか?彼女か少し心配になった。(演技だったらすごいけ‥‥)


 「わたくし、この国に来てからお友達がいないの、ルリーシャさん、お友達になって下さる?」


 「わ、わたくしでよろしいのでしょうか?」

 「ええ、ご商売について優遇はできませんが、アカデミーの事とか教えて下さると助かります」


 「はい、わたくしがわかる事でしたら、よろしくお願いします」


 その後、ルリーシャとは久しぶりの女子の会話を楽しんだ。彼女は貴族の中でも中堅身分の様で公爵、侯爵、伯爵、子爵まで良く知っていた。彼女が言うように成績がイマイチなので、周りの学生たちは気軽に話かけてきて、アカデミー内の出来事や動きは良く知っているようだ。


 それに、意外に行動力があると感心する。この場所に来るのに平民に近いギリギリの服装で登場し、機会を待っていたのだ。護衛の一人は貴族の顔をしっかり覚えていたので、パールの近くまで来られたのだが、どちらにしても、彼女なりに考えて父親の使命を果たしに来たのだろう。


 ルリーシャとのおしゃべりも終わり、学生たちが調査結果を持ってやって来たので、その日は終了となった。分析にはそれなりに時間がかかるでしょうから、少しのんびりできると思って解散して帰った。


◇◇◇◇◇◇


 調査の翌日、ブレイク文官がやって来た。


 「昨日の調査の時にパール様とブックス伯爵のご令嬢が接触したと報告を受けています」


 「はい、今日、その件でご相談しようと思っていました」


 「貴族の中に、この事業に参加を希望している方がいらっしゃるのですか?」


 「はい、殆んどの貴族はパール様からお声がかかるのを待っている状態です」


 「え?・・・わたくしには荷が重いと?」

 「そのように感じられますか?」


 「貴族の方と接触したのはルリーシャ嬢が初めてでしたが、彼女からはそのように感じませんでした」


 「しかし、ブレイク文官からは感じられます」


 「・・・・・・」


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