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夜会①

 15章

 

 メゾンドオリザボシ帝国での1年が過ぎ、アカデミーでの成績が発表される夜に盛大なパティーが行われ成績優秀者は表彰される。


 アカデミーに通っている子供たちの年齢はまちまちで、入学条件は10歳以上、卒業の為の単位をすべて修得さえすればアカデミー修了証書を手にすることができる。


 また、アカデミーを卒業後も、メゾンドオリザボシ帝国に残り研究を続ける事も可能で、パールは、今まで、可もなく不可もなく過ごしていた。(他人に興味が湧かなかったため)


 しかし、今度の夜会はそうとも言っていられない。友達もなく味方は0状態…


 「お嬢様、夜会のドレスはどちらになさいますか?」

 「立場上、あまり地味でもダメ、かといって子供っぽさが残っているのもダメよね?」


 「このような時、世間一般の貴族なら、お母様やメイド達に相談するのでしょうけど、休暇中も戻らないと返事してからは、手紙も来なくなってしまったから仕方がないわね・・」


 「こういう時、カメールたちは役に立ちませんね。貴族の流行も報告するように伝えますか?」


 「カメールは、私の想像以上に本当に努力しているのよ。問題はノムシルの方だけで・・」


 「ノムシルよりも適任者はいそうですけど、カメールはどうしてもノムシルに継がせたいのですか?」


 「そうよ、ノムシルが持って来た縁ですし、彼を家族と思っているのでしょ、カメールはノムシルを見捨てない、また、そこがいいのよ」


 モンスールが新しく購入した高級な茶器でお茶を出した時、王宮からの使いがやって来たと、離宮のメイドが持ってた伝言に驚き、モンスールと二人で固まってしまった。


 皇后も、国王も、有難い事にこの1年間、接触をして来なかったのにどうして…


 使いの人間は、陛下の部下の様で至極丁寧にパールに手渡した。

 「国王陛下より夜会のドレスをお持ちしました」


 パールとモンスールは急いでドアの前に立ち、使いの者からドレスの入った箱を受け取る。

 

 ドアが完全に閉じて、足音が聞こえなくなってから防音結界を張り二人は話し出す。


 「ドレスの贈り物・・意外でしたね?婚約の発表は卒業時にするのですよね?」

 「そうよ、その時がデビュタントで国王陛下がエスコートして下さる予定です」


 「でも、ドレスを頂くのは初めてで嬉しいわ」

 「フラグメール国でも皇后が目を光らせてましたからね。お嬢様はこのように美しいのに・・」


 パールは母親のいい所を受け継ぎ、子供の容姿でもこの1年で本当に美しくなった。


 「普段、あまり接触しない貴族の中にも綺麗な人はたくさんいますよ」

 「それでも、私の中ではお嬢様が一番美しいです」


 パールは笑顔でモンスールを見て、

 「さぁ、カメールからの報告書を見直しましょう。覚える貴族と関係者、血縁は頭に入れておかなくては」


 「はい、特に、皇后の姪と甥は要注意ですね」

 「第二皇子とかいないだけ良かったのでは?」

 「そうですけど、アカデミー内に皇后派が4人もいるのですよ」

 

 「5大公爵家の人間もいますし、これからが大変ですね」

 「でも、さっさと手を出してもらった方がいいの、それなりに対処できますし、騙し合いの方が疲れるでしょ?」


 「身の安全の為に、今回、わたくしも多少の物は使う予定ですけどね」

 「そうなのですか?」

 「当たり前よ、身一つで敵地に赴くのよ、丸腰でどうします。結婚して王宮に入ればカメールに色々頼めるけど、アカデミー内の会場にはあなたもいないのよ」


 「そうですけど、いったい、どのような物を使うのですか?私も知っていた方がいいかと思います」


 パールは真面目な顔をして、

 「それもそうね。失敗は許されないですし、でも安心して、牢屋に入れられるような毒は使いません。子供相手ですから、トイレが近くなる物とか、口がひりひりする物を手に塗っていきます」

 「頂いたドレスも撥水加工しなくてはね。いいえ、それだけでは駄目ね。跳ね返しの魔法陣も刺繍して置きましょう」


 「まるで、戦場に向かいようですね…」

 「楽しいわね」パールはにっこりと笑う。


 ポータルを作れるようなパールの魔法能力を活用して色々な魔法陣を仕込んでいく、

 「靴はどうしようかしら?」


 「この前、購入した水色の靴はいかがですか?」

 「ドレスが全体的に水色と薄いグリーン、縁取りは金と白のレースですから他の靴でもいいでしょうけど・・」


 「では、頭のリボンもブルーにするわ、誰かリボンを触ってくれないかしらね?すっごく痛い、静電気が起きるのに…」


 「お嬢様、悪いお顔をなさってますよ」

 「ふふふふ、ノムシルが来たら、この靴に細工をお願いしましょう。面会室の予約をお願いね」


◇◇◇◇◇◇


 面会室で、ノムシルから料理や品物を受け取り、靴への工夫を頼む。


 「靴の底を2重にするのですか?」

 「そうよ、なるべく柔らかい素材がいいわ」

 「柔らかいと、どうしていいのですか?足が疲れないとか、背が高く見えるとかですか?」

 「針を仕込むのよ、つま先に針を仕込んで置いて、踵に力を入れると針が飛ぶように靴の中に細工するの」


 ノムシルは真っすぐ育ったいい子で、こんなに小さい女の子が恐ろしい靴を履く意味がわからない。


 「ノムシル、貴族は小さい時からギスギスした世界で生きているのよ。やられたらやり返すでは遅いの、やられる前にやり返さなければ、その後の人生は大きく変わるの、わかる?」


 「はい」


 ノムシルはわかったような顔をしながら靴をじっと見て、

 

 「兄上に相談してもいいでしょうか?」と素直に聞いて来た。

 「もちろんよ、わからない時は必ず聞きなさい。ノムシルはカメールが育てていくのですから」


 嬉しそうな顔をしたノムシルは「はい」と返事をして、靴を鞄に入れて帰って行った。


 「ノムシル、大丈夫でしょうか?ナナミリ達よりも心配になって来ました」

 「大丈夫よ。素直なまま大人になればいい、そうでなければ、王都のチャリチャリ亭の店主は任せられない。ナナミリたちには郊外に出てもらう予定ですから」


 それからは大急ぎで刺繍の図案を考え、薬の調剤を始め、ドレスの中にも武器を忍ばせる方法を考えたりしていた。


 「お嬢様、嬉しそうにしていらっしゃいますが、試験の方はよろしいのでしょうか?」


 「あ!忘れてました。どうしましょう」

 「お嬢様の成績は、両国にご報告されるのではないでしょうか?」

 「そうね、でも、今まで履修を落とした事はないのよ。最後の試験は学年末の試験だから大丈夫よ」


 「ーーそれならいいのですが」


 モンスールは不安そうな顔でこっちを見て来るが、パールは気にしないで最後の仕上げにかかる。

 「できた!これで夜会が楽しみね」


 「はい、それでは明日からは試験ですから、早めにお休みください」

 「モンスール、寝ないで勉強しろって言わないでくれてありがとう。おやすみなさい」


◇◇◇◇◇◇


 ポリアンナ公爵

 皇后の兄 アーサー   娘  ミリンダ14歳

             息子 スペイン12歳


 キナグリ公爵家  

 近衛団長 ルクソク   息子 モモホラ15歳


 ヨロピン7公爵   

 主席政務官 カチャサラ 娘 ソーラー11歳


 エスカーション公爵   主席監査官 ドクンド


 ズッキクル公爵     魔法塔当主 ラオネル 


 ノムシルが完成した靴と一緒にカメールの報告書を一緒に持って来たのは、夜会の前日だった。


 「どうやら、宰相の娘と息子が完全に皇后派の様で、伯爵家に後二人存在するようです」


 「カメールによると、その夜、確実に、接触してくるのは、この伯爵家の令嬢たちかしら?」


 ソロチョウ伯爵のチョーク嬢とカート嬢は要注意と書かれていた紙をモンスールに見せた。



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