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リネガーケント・メゾンドオリザボシ

 第11章


 リネガーケントに聞きたいことは沢山がるが、ブルーは、先に薬師に質問することにした。


 「薬師さんは、メゾンドオリザボシ国王の知り合いですか?」


 「はい、王妃様、私は魔力塔のラオネルです」


 平常心を装いながらも心の中ではビックリしている(マジ、肌とかピカピカだけど凄いイケメンだったの?)


 「ーーー随分と若返りましたけど、二人でわたくしの薬の研究をしたのですか?」

 「はい、最初に王妃様が作られたポータルを見せられ、欲しかったら秘薬の研究をするよう様にと口説かれました」


 口説かれた!と、あえて言葉にしているのは、ポータル研究バカの弱点を突かれ、80代の年齢で、目も体もボロボロな状態が若返ると囁かれ、甘言に乗ったと認めているのだと宣言している。


 「あなたは、魔力塔の責任者でアカデミーの代表でもありますけど?このような事をして大丈夫なのですか?」


 「はい、国王陛下のように分身を作る事は出来ませんでしたが、王妃様が王宮を去った後に、すべての役職を退任しました。幸い、遠い親戚たちしか身内はいませんし、隠居する旨を屋敷の使用人達にも話していましたので、きれいさっぱり自由になりました」


 「自由になるのと、あの薬を飲むのは違うと思いますが・・」


 「王妃様がお亡くなりになったと報告を受けた後に、陛下は大変、落ち込み、体調を壊されたのです。当時、魔力塔の責任者であり、医師でもあった私は、毎日、陛下の寝室に向かいました」


 「陛下は顔色も優れず、酷くお痩せになり、魔力も不安定で、周りはひどく心配し、慌てました。そのような時、私が診察していると、陛下が仰ったのです」


 「私の事より、ラオネル大魔導士、君は来年あたり生涯を終えるようだが、ーー後悔はないのか?」と、


 「びっくりしました。自分でも健康に自信がなくなり、寿命の計算を毎晩のようにしてましたから・・、そうです、私は、国王の健康を心配しながら、毎晩のように、一人で研究室に残り、残りの人生で、やりたい事を考えていました」


 「私の生涯はすべてを研究に没頭し、一定の成果も出してましたが、一番欲しかったポータルは完成しませんでした。我々はグルフォンに乗って移動する事は可能ですが、その場合、グリフォンに食べさせる燃料が必要になります。グリフォンの燃料は、他国からの輸入に頼る為に王室の皆様、上位官僚、上級貴族が独占しています」


 「国王陛下はお立場上、色々な国をめぐり、いつも興味深いお話を聞かせて下さいます。その話を聞いて、私は、この目で見てみたいと願ってました。ですから何年も前から、ポータルの研究は魔力塔の最大の研究で、メゾンドオリザボシ国が大帝国になる為にも絶対に必要な物だったのです」


 「それで・・、わたくしが非常用にリネガーケントに残していたポータルを見せられたの?」

 「はい・・、ポータルが存在するのであれば、わたくしの能力でも複製する事は可能になります。しかし、リネガーケント陛下の真の目的は王妃様のポータル同期と、秘薬を調剤する事で、ふたつを作り出す事は非常に大変でした」


 「その二つを作り出す為に1年以上もかかりました」

 

 「途中で、自分の寿命が尽きるのではないかと心配して、先に媚薬の生成から始め自分で飲みました」


 「20代に見えるけど、年齢は希望通りだったのですか?」とカメールは聞く。


 「はい、お二人と同じ年齢ですと、王宮にも魔力塔にも入る事ができませんし、陛下の身元保証人にもなれません」


 「上手くいったのですね」

 「はい、上出来でしょう」と嬉しそうに答える。


 「一つ気になる事があるのですが、今の魔力塔の魔力不足と関係ありますか?」とブルーは聞く。


 「当然あります。しかし、私達の為にだけ魔力を使ったわけでもないのです。ほとんどは、国の為に使いました」


 「今までは、メゾンドオリザボシ国の国民の誰もが、魔力塔の魔力が尽きる事はないと考えていました。当然、魔力塔の人間たちもそうです。しかも、メゾンドオリザボシ国の全領土を支えているのは、魔力だったのです」


 「実際、このように気温が安定している国は他にありません。安定気候は、始祖王からずっと魔力塔と協力し合い作り上げてきたからです。しかし、現在はどうでしょうか?皇后は、陛下を蔑ろにし、王妃との離縁も強要しました」


 「皇后は二つの魂をお持ちの国王が誕生したら、国は安定し、もっと大きな帝国と発展すると信じているのです。陛下と王妃様がこの国を守って下さっていたのに、誠に残念です。そして、陛下が病に倒れて、彼女たちが在位している間は、この事実は全国民に伝わらないのです」


 「そうですけど、強引で、あまりにも危ないと感じます」


 リネガーケント国王は、

 「大丈夫だ。真の国王陛下がこれからこの国を立て直すであろう。これだけお膳だてしてやったのだ。上手く行くはずだ…」


 「もう一つの彼が真の国王陛下なの?」

 「あぁ、子供の頃、皇后に魂を無理やり埋められた真の国王だ」

 「あまりにも悲惨な経験で、彼自身が姿を隠している間に私が彼の体に入ったのだ」


 「あっ!君と寝ていたのは僕だ!安心していいぞ、そういう訳で、僕たちの間にはふたつの魂を持つ子供が出来なかった。僕は魂がなく、魂は彼が持っていたのだからね」


 「でも・・、ふたりが同化すれば・・」

 「彼と僕は、同化する事はできず、するつもりもない、互いに反発の方が酷かった。君が僕の体内に残した魂によって僕たちは不調になり、二人とも命の危険に陥った」


 「そんな、わたくしは、その様なつもりは全くありません」


 「パール、君が僕の為に魂を残して去った事は知っている。自分の母親への反抗もあった事も・・しかし、彼と僕は一つ一つの魂を所持し、反発し合って、酷い状況になってしまったのだ」


 「考えても可笑しいだろ?双子でもない二人の国王が存在するのは?」


 「ごめんなさい。でも、本当にあなたの為に・・」

 「知っているよ。君が僕を思ってしてくれたことだ。皇后とは違う・・僕を両魂の王にする為だとね」


 「でも、僕は君以外を望んだ事はないよ!君の事が大好きだったからね」


 ブルーの執務室は全員が、誰も動かず、息もしていない静けさが漂う。ブルーは自分が去った後に起こった事を整理するのに時間がかかり、何から質問していいかわからずにいた。


 モンスールは、

 「お嬢様、そろそろ、就寝のお時間ですが・・・?」と、遂に、沈黙を打ち破りブルーに聞いた。


 「そうね、酷く疲れたから今日は休みましょう。陛下はどうですか?」


 「じゃあ、寝るか、寝室はどこだ?」


 「・・・・・・」

 「陛下、結婚していない男女は同室では眠りませんので、ラオネル大魔導士様のお家でお世話になって下さい」


 「え?そんな・・」

 「当然です。私たちはまだ未婚の子供ですよ」

 「・・・・・・」


 その後、元リネガーケント国王キースは、ラオネル大魔導士(薬師)に引きずられながら、男爵家を去った。


 「お嬢様、ナナミリ達にはどのように返事をしますか?今後も情報は必要ですが、ポータルが使えそうなので食料の購入が終わり次第こっちに戻って来てもらいましょうか?」とカメールは聞いた。


 「そうですね。明日も、陛下と大魔導士様はいらっしゃるでしょうから・・ムニャムニャ・・本当に眠い・・」


 

次の章からふたりの結婚生活を振り返ります。

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