悪役令嬢の主人公ムーブその7 飯テロ定番カラアゲで、ぼろ儲けですわ!!
「今のわたくしに足りないのは、飯テロ要素ですわっ!」
「はー、なるほど」
「美容体操ブームで、一時はインフルエンサーにもなりましたが、それも今は昔のこと……。ベストドレッサー賞への道は、まだまだ遠く険しいのですわ。ならば周りの雌どもをデブ化させ、相対的にわたくしが一番美しくなるような、流行を生み出せば良いのです!そのためには、カラアゲなのですわ!!」
「はー、なるほど」
ベストドレッサー賞は美人コンクールじゃないし、流行発信の動機がクソ過ぎる。
流行よりも成人病を広めようとするようなインフルエンサーは、嫌すぎる。
そりゃ確かに、カラアゲは美味いけどさ……。
なろう界ではお馴染み飯テロの鉄板だが、そんなに手堅いか?
そもそも、鶏肉を揚げる料理って、珍しいか?
別に日本固有の食文化じゃないよね?
今更語るまででもないが、確認しよう。
日本風の唐揚げは、醤油・酒・ショウガ・ニンニク・みりん(入れないレシピもある)等の調味料で、鶏肉をもみもみして漬け込んでから、片栗粉や小麦粉につけて、揚げるのが基本だ。
醤油・料理酒・みりんは確かに他の国とは違うジャパニーズスタイルだけど、下味の調味料や粉を変えた鶏肉を揚げる料理ならば、たくさんある。
カー〇ル小父さんちのフライドチキンは?
中華風の油淋鶏は?
台湾風の大鶏排は?
韓国風のヤンニョムチキンは?
日本風だけでも、竜田揚げ、手羽先、軟骨カラアゲ、ザンギ、チキン南蛮、塩麹味、マヨソース、レモン絞るか問題など、いろんなのがある。
昔の日本のように、肉食を忌避する文化圏や宗教上の理由などで、牛や豚を避けるお国もあるけど、鳥が駄目って文化圏は少ないからかなり広く愛されている。
標高が高いと水の沸点が下がると言われていて、気圧の低下から調理器具の火力も弱くなりやすいそうだ。
そういう水や油の温度が上がり切らない土地では、揚げ物という調理方法自体あまり見かけないが、鶏肉自体は食べられているだろう。
国や地域によって、食文化の違いはある。
ならば、ご都合主義のナーロッパだって、国や地域ごとにいろんな鶏肉料理や揚げ物文化が、あってもおかしくないと思うんだ。
ナーロッパ民だって「はいはい、ジャパニーズ・カラアゲね。こういうのもアリかもね―」と受け入れてはくれても、普段は自分の地域の鳥料理を、楽しんでるんじゃないかな……。
仮に、めちゃくちゃハマったとしても「お前、明日から一生カー〇ルスタイルなっ!」って規制を食らったら、執事だったら確実に泣いてしまう。
土産で貰った冷凍唐揚げや手羽先を珍しがって有難く頂いても、どんなにそれが美味しかったとしても、いつものヤツだって食べたいんだ。
もう一つの揚げ物の定番、フライドポテトやポテトチップスだって、そうだろう。
厚切り、薄切り、細切り、芋天風、波切り、トルネード式といろいろある。
BBQ・サワークリーム・ビネガー風味なんかは、日本風の三種の定番、塩・のり塩・コンソメとは違うが、異国では定番なんだろう。
ビネガー縛りとかされたら、キツイ。
たまに変わったものを楽しむぐらいならば、いいんだけどさ。
一時は流行ったタピオカミルクティー屋を見かけなくなってもう長い。
専門店は無くとも夏は麦茶を飲むみたいに、国ごとのお馴染みの習慣を塗り替えることなんて、かなり難しいと思うんだ。
地球でさえこんなにも違うというのに、異世界でムーブメントを巻き起こせるというのかい?
黄薔薇姫だって、所詮は転生者。
自分が生まれ育ったナーロッパの国の食文化に、誇りはないというのか!
「ゆるふわ設定だからといって、文化の盗用とか言われて絡まれたら、厄介なことになるんです。今時唐揚げ屋で儲けようなんて、所詮無謀な賭けとは思いますが……、良いでしょう。見せて貰おうではないですか。お嬢様のテンプレ力の性能とやらを!」
執事レビは、強気で後方腕組みしながら、見守ることにした。
ポテチをつまんだ油でギトギトの指を、隠すようにして。
結果、ご都合主義の力は偉大だった。
強制力のバケモノ。黄薔薇姫は、見事勝利の栄光を掴んだのだ。
なんだよ。ソレ。
こんだけアツく語ったのは、何だったんだよ……。
全部無駄かよ……。
まぁ、御都合テンプレなので、どうか許して下さい。
時代は、ベスコン。
美味しい揚げ物をたくさん食べるためにもお腹を空かせようと、運動もする健康的な食のために、運動をするというブームの到来だ。
合同コンパならぬ、合同ハイキング(号ハイ)でお腹を空かせた後は、一緒に高級揚げ物店へ、レッツらゴー!!
取り巻きはいても友達はいない、今回の黄薔薇姫は、当然誘われなかったけどね……。
「ぐぬぬっ。金の力でベストドレッサー賞は受賞しましたが、誰も褒めてはくれませんわ……。おかしい。こんなのおかしいですわ。もっとモテカワ委員長になれるはずだったのに……、こんなはずでは……」
怨念の力が籠ってしまったせいで、カラアゲを差した爪楊枝が折れてしまったが、地面に落ちる前に執事が素早く、お口キャッチしたから安心だ。
食べ物で遊んではいけないからね。
短距離テレポートのできる悪魔執事がいれば、こんな時でも心配ないね。
めでたしめでたし