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悪役令嬢の主人公ムーブその5 表情筋が凍りついてる氷の令嬢と、ワイプ芸人無邪気っ娘とのガチンコバトル!!

※芸人イジりとダジャレがあります。ご注意を。


1, 名前を呼んで欲しいのテンプレ


 黄薔薇姫十歳。

 本日は王子とその婚約者とのお披露目のお茶会である。

 あいさつ回りに疲れた黄薔薇姫は、休憩がてら、スイーツを堪能していた。


「激うまですわーっ」


 果物とクリームで、美しくデコレーションされたケーキたちは、芸術品のような美しさだ。


 視覚的な美味しさだけでなく、濃厚なカスタードや、爽やかなレモンクリーム、程よい甘さの生クリームや、深みのあるチョコレートクリームと、飽きのこないように、様々な味付けで工夫を凝らした、美味しいケーキたちが並んでいる。

 

 宝石のように美しい菓子たちの魅力という、輝きには抗えない。

 黄薔薇姫も、まるで何か追われるかのように、夢我夢中で、ケーキを頬張ってしまう。


「パクパクですわーっ」 

「クスクスクス、そんなに喜んで貰えたのなら、良かったよ」

「まぁ。ご覧になっていたの?アレクさん、デャー殿下」


 グラスを片手に微笑みながら近づいて来たのは、婚約者のアレクサンダー王子だ。

 コイツはいつもグラス片手だ。

 

 昭和ドラマ男優がやっていた、裸バスローブに片手ワイングラススタイルの仲間の一種と覚えておこう。


 黄薔薇姫は発音まであざといので、王子の名前が上手く言えなかった。


「アレクでいいよ」

「アレク様」


 この名前呼びまでの下りのお約束は打っていて、なんだかとても疲れる。


 「殿下呼び」→「名前で呼んで」→「謙遜」→「様つけ」→「それも無しを希望」→「恥じらい」→「今日の所はこれぐらいで勘弁しといたるわ」の流れを省略してしまったが、これはいつものアレだなと、行間を読んで欲しい。


 この流れ、何回見たんかな。


 時間差攻撃ならば、効果はバツグンなのに、毎回焦って、一発勝負で決めようと、無茶ばかりしゃがって。


 申し訳ありませんが、ここにしかない萌えも、バリエーションも、当店でのお取り扱いはございません。


 心苦しさのあまり、何の話がしたかったかさえ、忘れてしまった。



◇◇◇◇

2,「素直な君が好き」は分かるが、お前も素直にぶっちゃけ過ぎ


 すっかり婚約者に夢中な王子は、愛しの黄薔薇姫に向け、熱っぽく語る。


「感情を気取られぬように隠すあまり、反応にも乏しい、その辺の貴族令嬢とは違って、素直で表情豊かな君は、本当に愛らしいね」


 で、でたー!!


 他の女下げからの俺の女アゲ!!王子の必殺技だ。


 まぁ、リアクション皆無な相手では、自分の行動をどう思っているのか良く分からないし、言葉や態度で、好意を伝えることは、実際とても大切だ。


「まぁ、ソンナコトナイデスワー」

 

 これには黄薔薇姫も、口では謙遜しつつ、鼻の穴を膨らませてしまうではないか。効果はバツグンだ。


「せっかくのお茶会、コルセットをぎゅうぎゅうに締め付けて、楚々として振る舞うよりも、君の様に用意したケーキを楽しんでくれた方が、僕は嬉しいよ」


「まぁ、わたくしおいしいものには、目がないんですのよ。おほほほっ」


 まぁ、確かに今日はお茶会だって言うのに、軽食を楽しむのを妨げそうな香水プンプンさんが、多いもんな。


 料理が余っても勿体ないし、残念に思うのは分かる。


 だからって王子、招待客にそうやって毒吐いちゃいかんでしょうに。


 七五三で帯締めすぎた子みたいに、慣れないドレスに、コルセットぎゅうぎゅうでやってきた、初めての社交の場。

 

 緊張のあまり、ケーキも食べられない。

 そんな残念な初々しいニューフェイスさんたちを、ディスるのって、どうなんだ?


 黄薔薇姫と同じ十歳ぐらいのお嬢さんたちなら、小さな失敗ぐらいしてしまうもの。


 そんな子たちを、言葉で追い詰めるより、リラックスさせて、楽しませてあげるのが主催側の王子の役目だろうに。


 今回の王子は、黄薔薇姫には、都合の良い男だけど、モラハラ味が隠せてないヤツだ。


 コイツは、付き合ってるうちに、態度が変わるタイプの男な予感がする……。


 私は詳しいんだっ!!


 腹黒設定もいいけど、コイツは単純に、無駄に敵を作り過ぎなだけでは? というテンプレへの疑問を抱きつつ、執事は自棄酒ならぬ自棄ケーキを貪った。

 

  お母さん方、お嬢さんたちをフォローしたら、次のお茶会でのリベンジの仕方、こそっと教えてあげてくれ。彼女たちには、もっと良い出合いが待ってるはずだから。

  

◇◇◇◇

3,ナーロッパ教育界の抱える、氷姫に関連する様々な問題



 氷姫。


 それは児童虐待や王妃教育の影響で、表情筋が死滅した、貴族令嬢を差すイセコイ用語である。

 

 既に何度も指摘されてることだが、王妃教育における感情コントロールとは、立場のある人間が感情を露わにせずに、フラットな態度と、好印象を与えるようなアルカイックスマイルの維持などを、学ばせる類のものなのではなかろうか?

 

 あと、毎回毎回、余所のお宅のお嬢さんが、血反吐を吐くレベルまで努力して励んでいるのに「その間、王子何してるの?」問題と、せっかくそこまで頑張ったのに「王家で生まれ育った王子からも理解されず、つまんねー女扱いされる」問題まで、発生しているのは、何故なのだろう。


 一体、誰のための、なんのための教育なんだ? と執事は憤りを隠せない。


 モラハラを避けるため、あるいは我が子を叱る時にでも、怒りの感情に飲まれ、それを直接ぶつけることがないよう現代人にも、感情のトレーニングは重要とされている。


 問題によって生じた、怒りの感情と改善欲求である注意とは、全く別のものだからだ。

 

 小さい子の場合には、注意と一緒に「プンプンだよ」と頭に指で角を作って見せたり、分かりやすく怒っている姿を示すことも、時には有効かもしれない。

 

 だがそれは、己の感情を整理し、相手が受け止めやすいように、伝えるための手段の一つに、過ぎない。

  

 職場や友人の前で出ると、恥ずか死ぬリスクすらある危険性もある。


 氷姫さんだって、もっとアサーティブなコミュニケーションが可能なのでは? そういうのは学べなかったの? と疑問に思うも、これこそがこのナーロッパ教育界の抱える問題点なのだろう。



◇◇◇◇

4,素直な無邪気っ娘のリアクション芸について



 さて、素直で無邪気っ子である。

 こいつらは、むぅむぅ、もうもう、とよく鳴くのだ。


 頬を用いた顔芸が大得意だ。


 「わたし、怒ってるんですからねっ!」をアピールするかのように、プーっと頬を膨らませたり、リス顔になるまで食べ物を口に頬張るのって、本当にスゴイ。


 入学前の幼少期の描写ならば自然だが、入学後は明らかにキツイ。

 もう明らかに不自然だ。


 あえて、そのような幼げな振る舞いをしてみせるからには、何か理由が欲しい。


 相手と打ち解けたあったからこその、甘えを滲ませた表情だとか、恋人たちのじゃれ合いといった印象的なシーンならば理解も出来るのだが、こいつらは、デフォルトがこれなのである。


 貴族令嬢とは、指の先まで意識した美しい所作と、完璧な表情筋トレーニングとが行き届いているものではなかったのか?

 

 家庭教師任せに陥りやすい、ナーロッパ教育の弊害か?


 普段は慎み深い令嬢が、飢えや美味しさのあまり、思わず駆け込むように、頬張ってしまった。


 通常ではあり得ないような、はしたなくも珍しい反応ならば、絵にもなる。そのギャップだって、大変愛らしい。

 

 いつもいつも食べ方が汚い娘を、御令嬢とはさすがに呼べないだろう。

 

 フードファイターさんだって、テレビ映えを気にして、かわいく頬張る時代だというのに、人目もはばからず、豚のようにがっつく女をご令嬢扱いなど、する理由がない。


 貴族の令嬢ならば、より上品にかつ美しい食事の仕方を仕込まれているものだ。


 そんなホンモノを知っている相手が、薄っぺらいワイプ無邪気で、いつまで騙されてくれるものだろうか。


 このタイプのお嬢さんたちは、図書館で本を読みながら、リアクションしては惚れられたり、パーティのお菓子にオーバーに目を輝かせては、惚れられるという、奇妙な特性を持つ。


 公共交通機関で、スマフォ閲覧中に吹いたら、恥とする日本社会よりも、優しい世界なのかもしれないが……。


 いかんせん、惚れっぽい奴が多すぎる。

 またすぐに違う相手に、惚れるんじゃないのか?

 

 それって『惚れてまうやんけ』の最終系『惚れて★マウント』だろ?!

 新しい女を叩き棒に使って、周りの女サゲを華麗にキメる王子の必殺技だろ?!


 ウカツに表情も崩せない、こんな世界では、ポイズン……。

 スイーツバイキングなんて、明らかに乙女のピンチの現場だ。お嬢様方、お気をつけなさい。

 

 腹黒ストーカーがどこから湧いてくるかなんて、分かりゃしないんだ。


 女主人公のリアクション芸タイプは、披露する場所を選ぶように、本当に気をつけようなっ!


 それに引っかかった男も、どうせ、すぐに新しいワイプ芸人を求めるようになるんだ、しょせん、使い捨てさ。


 だから、いつまでもリアクション芸の一本頼りはもう止めるんだ! 

 お寒いダジャレを放ってしまった、執事からの警告だ。



◇◇◇◇ 

5,ヒドインの芸は下品な悪い芸、女主人公の芸には大喝采っ!



 ヒドインの素直な感情は、穢らわしい男爵家の庶子の、貴族社会に慣れない無作法者の悪いリアクション芸である。


 感情のコントロールも出来ない幼児同然で、精神や知能が未熟な女として扱われる。

 

 あるいは狡猾で、打算的で、頭お花畑で、尻軽なあざといぶりっ子。


 むぅ、そんなことないんだけどなぁ。 

 女主人公ちゃんだって、全く同じ事を、やってるんだけどなぁ。


 そんなの絶対おかしいよぉ。腹が立っちゃう。

 プンプンだよ。


 ……事務所パワーの違いだと理解して、君も早く現実を見るんだ。


 ワイプ芸一本で、メシは食えないんだ。

 その道を貫くならば、もっとトーク力を磨いてくれ。


 ケーキの食べ過ぎとリアクション芸で、お腹いっぱいになった執事は、お花を摘みに行くことにした。


 今日の所はこの辺で、勘弁して欲しい。


 めでたしめでたし。

ローズマリー・イエロー 黄薔薇姫  主人公

悪魔執事レビ     嫉妬の悪魔 ツッコミ  


アレクサンダー・レッド王子   

 スパダリにも浮気クソ野郎にもなるご都合王子。

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