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悪役令嬢の主人公ムーブその9 婚約破棄? こんなこともあろうかと事前に用意しておいたのですわ。新しい男を。

王子との婚約破棄に備えて事前に男を備えておく、準備の良さについて

 王子との婚約破棄に備えて、事前に男を備えておく、準備の良さについて


 

 王子と婚約の継続を望んでいない今回の高等部二年生の黄薔薇姫は、美容体操関連グッズの販売、揚げ物レシピを活用した高級レストラン経営、パン工場の運営に励んだ。


 その傍らには、いつも、ちょっとヤンチャな護衛騎士に扮したイケショタ聖獣と、いつも優しげな精霊が扮するお付きの耽美な魔術師がいる。


 カタログで注文した、お取り寄せのイケメン攻略対象である。


「あの、空気の私がいうことじゃないんですが……、仮にこれから王子が学園でピンクとイチャつき出したとして、今のお嬢様って文句が言える立場なんですか?」


 執事だって、このテンプレにはお気持ち表明をしたくもなる。


 「問題ありませんわ。何せ乙女ゲーム通りならば、どうせわたくしは婚約者の王子に裏切られてしまうのですから。ヨヨヨッ」


「ああお可哀想に、お嬢様」

「さあ涙を拭いて俺がヨシヨシしてあげるよっ!」

 

 黄薔薇姫の雑な泣き真似に、魔術師がハンケチを差し出し、護衛騎士が頭を撫でる。


 ゲーム通りなら裏切られるかも……で、新しい男を事前に用意しているパターンってのは、どうなんだ。


 側にお付きの男、護衛騎士、義理の兄弟などを侍らせているというイセコイのテンプレである。

 

 『俺じゃだめか?』は、恋の試練味があるから成立するのであって、事前に駄目だった場合の、乗り換え先を用意しているのが、悟られてはならない。


 リスク管理としては正しいし、そのフラグには安心感もあるが、準備万端ぽさが出てしまうとダメなのだ。


 『やっぱり婚約者に裏切られたのですわー!』ってドヤ顔で言われてもなぁ……。


 『婚約破棄したいのデスワー』って、そりゃそーなるよ。


 先に別の男と浮気してたら、婚約維持するモチベなんてなくなるに決まってる。



 「護衛が側にいることに、何の問題がありまして?」


 いやいや、護衛騎士というにも、聖獣の見た目は完全にただのイケショタだ。

 見習い騎士の少年というよりも、騎士コスプレしてるお子様なんだ。


 筋肉ムキムキの威圧感放つマッチョ型護衛よりも、令嬢受けするのは細マッチョ系かもしれんが、コイツはどうみてもお飾りだ。


 実際は聖獣だから強くても、外見的にはただの御稚児さんなんだ。


 いつもお嬢様の膝にのせておやつを与えているので、護衛と言い張るのにはかなり無理がある。


 魔術師もかなり厳しい外見だ。

 権力争いでお嬢様が常に狙われている設定ならばアリだが、特に何もないのに連れ歩いてるという今回の話では……、完全に美青年を侍らせているだけ。


 護衛をそうとは見えない偽装をして連れている……と言いたいところだが、本当に侍らせたいだけだから、質が悪いんだ。


 他にも、友達に会いに行くと見せかけてその兄である騎士団長の子息と会ってるし、宰相子息とは幼馴染との勉強会をしているという言い訳をしては、定期的に会っている。


 オイオイ、黄薔薇姫。男にばかり、会い過ぎじゃないか?

 

 こういうヒロインより前に逆ハー作るも無自覚ちゃんな主人公ちゃんいるけど、コイツは完全に自覚してやってるぞ。 


 「心の浮気は無いの。みんな大事なお友達よっアピール」をしても、それ完全にヒドイン染みたムーブだからな。


 現代で異性の友達が多い奴だって、恋人や配偶者には心配をかけないように、節度は欠かせないだろう。


 転生者ならば、その辺りの機微だって、弁えているよね?

 

 『男女七歳にして……』チックな慎みを重んじる異世界ならば、猶のこと。

 そんな交友関係は、かなりマズイのでは?


 今回はお嬢様がざまあされる方が『めでたし』なのでは? 

 



 そんな訳で、()()()の多い社交的な黄薔薇姫と王子との婚約は、婚約者同士の()()()()()()があったという理由で、無事解消された。


 王子はピンクとではなく、別の公爵家の優秀なお嬢さんと新たに婚約を結ぶことになったよ。よかったね。


 黄薔薇姫はアレだが、公爵家パワーがあるからね。

 ざまあが出来ず、残念だよね。申し訳ない。   


 一緒に勉強したことで官僚試験対策がバッチリだった宰相子息は務め始めてからは黄薔薇姫との距離を置いたし、騎士団長子息は入団時前に上位貴族とトラブル起こしたくないだけだったから、無事フェードアウトされたよ。


 あー、これはやたら距離の近い男がいても、名目上は護衛だったから、余所の貴族の男も用意して価値観の違いを明確にアピールされたって所もありそうだね……。


 黄薔薇姫に残されたのは、カタログで注文した二人だけ……。


「お嬢様、そろそろお試しリースの期間が終わりますが、いかがなさいますか? 延長なさいますか?」


  優しげな精霊の魔術師がそう言って差し出してきた延長料の明細は、とっても高額。


  領地の資源の三倍の価格では、工場その他を売り払っても追っつかないよ……。


 

 ストーリーの御都合効果が切れる時、金の切れ目は縁の切れ目。

 カタログのイケメン攻略対象たちは、おうちへ帰ってしまったんだ。


「……わたしくしには、あなただけよ」


 黄薔薇姫にそう囁かれるも、今回空気な執事はそのまま空気に徹することにした。


めでたしめでたし

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