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ポルカ医院の中では唯一の水属性のロットは、薬剤師としても人柄にしても医師の僕よりも発言力はある。


ロットは水属性の持ち主ではあるが、魔力量は平均値を下回る。後は勤勉さと努力で難関な薬剤師の資格を取った。調剤師のカイとヨネも猛勉強をしたが調剤師止まりだが、年齢制限は無い資格だから後々挑戦をするらしい。その教育もロットが担っている。


そのロットが何かと文句や嫌味を言って来るのが、何故か? 医師の僕なのだ。


二回目スージィーさん森の小屋訪問に、大量の荷物より使いきって洗浄した薬品瓶を、持っていけと医局にのりこんできた。


……確かにロットの言うことも分かる。今までは納品と同時に薬品瓶を返却していた。

前回はスージィーさんの様子見が本題であり、薬は出来ればの話だった。


二回目の訪問は、教会から僕が預かったスージィー宛の手紙の束を届けに行くことが、本題である。


……予期せぬサンドイッチのお礼も兼ねての訪問が、母の暴走により荷物が増えているがロットに指示されることではない。


と、言いたいが……僕の意見よりロットの意見の方が支持されるのは何故ーーーーだ!!


結局薬品瓶と教会からの手紙に、持てるだけの荷物となったが、薬品瓶はイーゴルが持ってくれる。

今回もカミールが護衛として付いてくれるが、護衛は荷物は持たないらしい。後はバスケットに入る分だけの荷物になり、スージィーさんの森へと入って行く。




前回は道程が分からなかったから早朝に出掛けたが、カミールとイーゴルの判断で早めの昼食を食べてからになった。

カミールが、お昼前に着けば前回と同じ事になり相手に気を使わせてしまうと、スゴく当たり前の事を言われ落ち込む。


イーゴルが17歳で、アニキと呼んでいるカミールは18歳。そして僕は25歳と一番年上であるけれど、母が言っていた通り何も分かっていない只の医師だ。


アカデミーから戻って2年、医師だった父は3年前に亡くなった。その間は他の医師や派遣医師に繋いで貰ったが、父の捜索や葬儀やで遅れを取ったが8年で医師免許は取得した。

普通10年はかかるという医師免許を8年で取得したにも関わらず、誰も褒めてはくれない。


護衛のカミールが先頭で、スージィーさんの森へと進む。後から聞いた話だが魔物や獰猛な獣は、驚くほど少なくなっているらしい。

騎士団のエルトさんが言っていた危険な森だった筈が、安全ではないが大人の男性であるなら怪我位ですむだろうと言っていた。


……怪我とは何処までの事を言っているのか?



朝方に雨が降ったが、出掛ける前には辺りはきれいに乾いている。

朝方の雨が森ではさっきまで降っていたように残っていることに驚いた。先頭のカミールは前回通った時より枝や葉をわざと落としていく。

ブーツの裏は滑り止めが付いているが、役に立たない。落ちた枝や葉の上の方が歩きやすいのだ。


見覚えある木々や岩を通り過ぎれば、やはり驚いてしまう開けた場所。

ここは昼過ぎの気温と風が辺りをきれいに乾かしている。

踏みしめるブーツも草に露で滑ることが無い。


小屋の前で腹を出して寝ている猫を見ると、スージィーさんの小屋に着いたと理解した。

気持ちよく寝ている猫と、その腹の上で入ってきた人間を認識したランディの差が激しいと思える。


「ランディ!」

と、カミールが声を掛けると、


キャン!

と、返事が返ってくる。何だろう? 笑えてくるが小屋の方を見れば扉は閉まっている。


「ランディ! 小屋に近付いてもいいかぁ」

と、薬品瓶が入った木箱を持つイーゴルが後ろから聞いてくる。


……犬に許可を取るのか? あれ? 返事が無い?


「先生! ここで待機だ」

と、カミールが言ってくる。


イーゴルは抱えていた木箱を下ろして、肩や首をポキポキと鳴らして伸びをする。



……交渉は僕だよね。騎士団に依頼したのも僕だし、手紙を預かったのも僕だし。


「スージィーさ~ん、今日はいらっしゃいますか~!」

と、ルディーは大きな声で小屋に向かって言ってみる。

猫の耳がプルプルと動き、大きな尻尾はカギ型に左右に振りだした。


「……スージィーさんはいません」

と、前回と同じ答えが返ってくる。


「サンドイッチ美味しかったよ。君は誰?」

と、イーゴルが僕が言いたかったことを脇から言ってくる。


「……それはどちらを答えたらいいのですか?」


「えっ? どちらをならどちらもかなぁ?」

と、ルディーが付け加える。


「サンドイッチがお口に合って良かったです。私はアンディ……きゃーっ!」

と、急に途切れた返事と、短い悲鳴。


「えっ?」

と、思った時にはカミールが、猫を飛び越えて小屋の扉前まで着いていた。


「だ、だ、大丈夫です……ランディが……足元にいたので」

と、アンディと名乗ったのか、名前の途中なのか?


「貴方は、アンディさんと仰るのですね」

と、ルディーは確認のために聞くと、


「はい、スージィーさんからはそう呼ばれていました」


……ぬぅ? 呼ばれてい、ま、し、た? 過去形?


「僕は、この前来た医師のルディーです。教会からスージィーさん宛の手紙を預かって来ました。スージィーさんがお留守なら、アンディさんに預けてもよろしいですか?」


「……ここまで持って来ていただきましたが、教会にお返し下さい。スージィーさんはいません」

と、断られた。


……えっと? どういう事だ?


「スージィーさんは死んだのか?」

と、扉の前でカミールが、声を掛ける。真後ろで猫が、カミールのお尻の辺りまで顔を近付けて見ている。


「……分かりません」


「アンディさん! 事情を理解したいので合ってお話出来ませんか? 僕の母も心配しているのです」

と、ルディーは言ったが、母だけでは無いスージィーさんを慕っていた街の人も沢山いるのだ。


「ランディ!!」

と、急に大きな声でカミールが呼ぶ。


小屋の中から、キャン!っと返事がすれば、カミールは扉を明け開く。

と、同時に猫がカミールに覆い被さった。後ろから見ていた僕とイーゴルは、素早く動く猫にも驚いたが、猫の下敷きになっているカミールにも驚いて動けなかった。


「まぁ、プー! 退きなさい! だ、だ大丈夫ですか?」

と、小屋から出てきた娘は、プーと呼んだ猫の足を引っ張ってカミールに覆い被さった猫を叱っている。


慌ててイーゴルと僕は小屋に近付き、猫とは思えない大きな足を3人係で引っ張る。

側でランディが、ワン! と、1吠えすればプーは、前足を引き身体を浮かせる。

下敷きになったカミールは、顔の前に腕を組んで床の衝撃を防いだようだが、顔色を悪くしている。圧死するところだったのだろう。


鍛えている騎士で、防具を身に付けているから助かったようだ。


叱られたプーは、そのまま顔を洗う仕草をして関心はなさそうだが、ここで僕が役に立つとは思わなかった。

カミールは顔面の強打は防げたが、肩が脱臼していた。肋骨の骨折は防具で無かったが足首の捻挫はブーツのお陰て軽くて済んだ。

日頃鍛えていることと、イーゴルは荷物を運ぶ為に簡易武装だが、カミールはいつも通りの騎士武装で良かった。僕やイーゴルなら死因は圧死で間違いがない。


「本当にごめんなさい!」

と、小屋の中でアンディと名乗った娘は謝っている。

普段は大きな猫 プーの為に小屋の家具は片方に寄せて生活しているらしく、治療の為にサイドテーブルと椅子を脇から出してくれた。

魔女の小屋には、治療に必要な道具も薬も揃っている。スージィーさんの薬をそのまま使えば治りも早い筈。


恐縮して顔色を悪くしているアンディさんに、向き合わないといけないが、護衛のカミールが怪我をしていては今日帰宅するのは無理だと判断をする。

イーゴルはランディと、小屋の外で遊んでいるが、プーは部屋の隅で丸くなって寝ている。


「アンディさん、申し訳無いのですが、僕達3人を床で良いので泊めていただけませんか?」

と、ルディーは改めてお願いしてみる。


……断られたら帰りようが無いから、外で野宿になるが、男3人普通は無理な話だ……

と、ルディーはダメ元で頼んだ自覚はある。


「それは構いませんが、プーは夜に行動するので、踏まれるかもしれませんよ」


……えっ? いいの?

すみません。

5話目まで引っ張り過ぎました。

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