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「本当は、何か用事があるからワザワザ僕の家まで訪ねて来られたのでしょう?」
と、ルディーは自分の格好が街をブラ付いて過ごす用な姿で無いことに、隠しても仕方ないと諦めて尋ねる。
「そうですね。ポルカ医院でお休みだと聞かされてそのまま教会に帰れば良かったのだけど…………気になって」
と、マチルダさんが口ごもる。
「何か気に成ることが、有りましたか?」
「……いえ、熱心に教会についてお勉強を為さっているので、お役に立てないかと……」
「お役に? いつもマチルダさんには良くして頂いていますよ?」
と、ルディーは全くマチルダさんの行動に心当たりが無くマチルダさんを患者を見るように観察してしまう。
……どうしたんだろうか? 教会のマチルダさんは凛とした佇まいの綺麗な年上の女性で、親切で落ち着きのある人であるのに。
教会の医療班に言えない悩みでも有るのか? 医師である僕をワザワザ訪ねて来るなんて、余程の事なのか?
「……そうですね。ではお時間の有る時にでも教会にお寄り下さい。お調べものは終わりでは無いのでしょう?」
と、マチルダさんは一端は落胆した表情を見せたが、教会で待っていると告げた。
「あっ! はい? 教会の図書室にお邪魔しますね。
あの、マチルダさん? 僕が教会に行くのは迷惑なのですか?」
と、ルディーの問いに、
「えっ? 迷惑なんて事はありません! ルディーさんがスージィーさんを心配されての事ですから、協力するのは当たり前です。
私が不信な行動をしたことで、ルディーさんに不信感を与えたのなら謝ります」
と、両手を前に持っていき握った手は、マチルダさんの額へと謝罪の姿勢を取った。
「僕ばかりがマチルダさんを頼っているのは不公平ですね。マチルダさんが教会以外で頼ってもいいと思えるように頑張りますので、相談が有れば、ポルカ医院にお越し下さい。自宅は留守にしていることが多いので」
と、ルディーは答えた。
マチルダさんは驚いた顔を見せたが、笑顔に切り替えお礼を言って帰って行った。
……驚く用な事を言ったかなぁ?
自宅の玄関口から入って行けば、仕事終わりなのか外出着のままの母が立っていた。
「家の前で誰と話していたんだい? お帰りルディー」
と、母親のサミーノに問われる。
「ただいま母さん、教会の職員さんだよ。いつも良くしてくれる人だよ。ワザワザ家まで来て何だったのか分からないけど……」
と、ルディーは正直に答えた。
「教会の職員? 教会の人が街に出る事があるんだね」
と、サミーノも不思議がる。
「何でもこの街の出身らしいよ。医院も知っていると言っていたし……」
「そうなのかい? だったら魔女候補だったかも知れないね」
と、サミーノが答えた。
「候補? 光属性か闇属性を持っている?」
「教会の職員は魔女候補だったけど覚醒しなかった人が多いだよ。1歳でわかった属性が光と闇なら親も従魔女を期待してしまうからね」
と、サミーノが説明する。
「でも……ナミや他の光や闇の属性を持って生まれた人は街にもいるけど、教会の職員じゃ無いけど……」
「なまじ魔力量があれば、教会も上手く言って子供を預かるんだよ。ナミは光属性だけど魔力量は少ないし親御さんは教会に預けようなんって思わなかったんだろうね。二属性で生まれた子は国が管理するから強制的に教会が関係有るけれど、光と闇だけなら登録はされるがそうそう従魔女に成れたりはしないから、親の方が教会にお願いをして子供を置いて行く場合も有るって聞いたことはあるわ」
と、サミーノは説明した。
「従魔女はそんなにいないのか?」
「光だけとか闇だけとか魔力量が多いと、身体に負担なんだろうね。光属性で元気な子は魔力量が少ないし、闇属性の子は魔力量が多くても光属性の子よりは元気な子は多いから魔女は闇属性を持つ子が多くて親も期待してしまうのかね」
と、サミーノの説明にルディーも心当たりがある。
……なるほど、ロットの妹は光属性で魔力量が少ないと言っていた。これが魔力量が多ければ身体に負担に成るだろうし、闇属性の人とあまり会わないのは教会に関係有るのか……
「教会の職員と言うことは光か闇の属性で、親に従魔女に成るかも知れないと期待されて、教会で過ごした人なのかも……」
と、ルディーの言葉に、
「この街の子なら親御さんがいても可笑しくは無いね。その子の名前は?」
「マチルダさんと紹介されたけど、僕よりは年は上だと思った……いや、聞いてないから名前しか分からない……」
「教会職員なら、医院にも来ないし馴染みが無いね」
「えっ? いや……でも……」
「どうしたんだい?」
「いや、マチルダさんは医院を知っていると、小さい時は行っていたとも……」
「マチルダ、マチルダ、覚えがないけど私もずっと医院に勤めていたわけじゃないけどねぇ」
と、サミーノは不信がる。
「機会があれば話してみるよ。何か相談事でもあるのなら、又話し掛けてくるかも」
と、ルディーも気にすることでは無いと判断をした。
「ルディー」
と、サミーノが息子の名前を呼ぶ。
「うぅ?」
と、荷物を自分の部屋に持って行こうとした時に母親から声を掛けられる。
「あのね、私がスージィーさんの事でルディーを関わらせたけれど、手に負えなそうなら無理をする事は無いよ。あくまでルディーは医師なんだから、ややこしい手続き何かはルディーの本業では無いから……」
と、母親の心配そうな言葉に少し驚いた。
「どうしたんだい? 母さんらしくないよ」
「なんだい? 私らしくないなんて……」
「いや、何時もなら中途半端な事をするなって言う方だからさ」
と、本当に意外な母親の言葉にルディーの判断が追い付かない。
「魔女は専門外だからね。私も知らないことが多くて、父さんならもっと早くに手続きの方法も知っていただろうからね」
「えっ? 何で父さんは手続きを知っているんだい?」
「えっ? 父さんのお祖母さんは魔女で、義兄さんと父さんは魔女に詳しいわよ。
スージィーさんがこの街に来た時も、父さんはスージィーさんの事を知っていたみたいだし」
「…………初耳何ですが」
「ルディーにしたら、曾祖母だし魔女と言っても後から覚醒した魔女らしいのよ。
生まれつき二属性じゃないから、結婚も子供をルディーのお祖父さんね、いるのだから」
「正魔女は結婚出来ないのか?」
「出来ないわけではないけど、教会の許可が要るのと子供は出来ないと聞いたけど」
と、サミーノが教えてくれる。
……そう言えば、教会の図書室には歴代の魔女、正魔女の名前が書いてある名簿が有った。スージィーさんの名前だけ確認はしたけど他の魔女の事は気にしていなくて頭にも無かった。
何だか調べることが増えてくるな……
「父さんから私も聞いたのは、スージィーさんが義祖母さんの事を聞いてきたからで、父さんからは話に上がった事が無いのよ。
ルディーが知らなくても当然だし、父さんのお義父さんは若くして亡くなっているから、お義母さんは従魔女のお姑めさんにお仕えしていたと聞いたけど、私は詳しく無いから何なら義兄さんなら詳しく知っているでしょう。連絡してみたら?」
と、母 サミーノが言ってくる。
「伯父さんは、ポルカ医院の医院長だけど王都ではお世話に成ったし、勉強も見てもらった。
でも、全く教会や魔女の話は出なかった」
と、ルディーは洩らす。
「なら、魔女の件で無くても伯父さん宛に手紙でも届けたら?
こっちに帰ってから一向に連絡をしてないでしょう?」
「そういう、母さんは? どうなんだい?」
「月一で連絡はするよ。事務長が…………」




