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「ルディー先生さんよ、何か騎士団に依頼したいそうだな」

と、副団長をしているエルトさんが、往診から帰るところで声を掛けられた。


「えっ? こんばんは。誰から聞いたんですか?」

と、ルディー医師は宿泊客が体調を崩したと、宿屋の主人から内密に往診を依頼されて診察の帰りだ。


宿屋では食事の依頼が有れば用意をするが、外で食事を済ませる客もいるから、提供した客が体調を崩せば、往診を頼むことになる。

素泊まりの客ならば、ポルカ医院に自分で行ってもらうが、食事の提供が有れば真っ先に問われる事になる宿屋は、慣れと評判を気にしての事だ。


「あぁ、大丈夫だ。騎士団で飯を作っている爺さんが、入院から帰ってきて俺に報告してくれただけだよ」

と、エルトさんは笑って答えた。


「えっ? 入院患者? って?」


「何でも、入院中に仲良くなった医院の調理師と料理の話をしていたら、ルディー先生が騎士団の団員を紹介してくれと言っていたと……聞いたんだがなぁ、違ったか?

爺さん、最近耳も悪くなったか?」


「いえ、多分合ってます。僕が騎士団の方に相談があるのは本当ですから……」

と、ルディー医師は答えた。


……宿屋の主人に処方箋を書く時に痛感したんだ。前の宿屋で食べ残した物をこのポルカ地区につく前に食べたと客は答えた。

宿屋の食事の内容で、生物は出していない事から前の宿屋の残り物にあたっているのだろう。スージィーさんの薬なら一発で落ち着くのに……出すだけ出させるしかない。


「何なら今聞こうか? 珍しい薬草取りかい? それとも魔獣の肝とか?」


「いえいえ、そんな物騒な話では無いですよ。スージィーさんの小屋に一緒に付いて来て欲しいだけです」


「……………………街のかい?」


「いえ、森の……小屋なんです……が」


「成る程、珍しい薬草取りと魔獣の肝取りと言う事だな」


「えっ? そうなんで……すか?」


「ふむ~~ん、分かった。団長に伝えておく」





「なぁあ、母さん。スージィーさんと最後に会ったのは?」


「えっ? そうね三年前よ。お父さんの捜索に手伝って貰ったから。

スージィーさんのランディが、崖から落ちているお父さんを見つけてくれてのよ」


「ランディって、あのちっこい犬のことかい? 真っ黒で夜だと見えなくなる?」


「そうよ。私も何回ふんずけてしまいそうになったか。だけど凄く賢いコだよ。ランディじゃないと見つけられなかったと思うもの……


でも、あの時スージィーさんは薬の調合中でね、手が離せないからとランディを貸してくれたの。葬式の時に話した以来だね


そう言えば、猫を飼い始めたと言っていたけど……あんな山奥でランディと猫も大丈夫なのかね。

スージィーさんとランディと猫のこと頼んだよ」

と、母 サミーノさんは息子のルディーを送り出す。



渋々ではあるが、スージィーさんの薬が欲しいのはルディー本人である。患者さんの為にもなることだと、奮励して騎士団の本部がある建物に入る。


「やぁ! ルディー先生」

と、玄関口で声を掛けてくれたのは、この騎士団団長のホシエダルさんだ。


「お世話になります、団長さん」


「いや、いつもお世話になっているのはこちらだ。今日先生に付けるのは、カミールとイーゴルです。イーゴルは看護婦さん達にいつも世話になっていますからね。それから無口ですが腕が立つカミールは護衛ですね」

と、ホシエダルさんは説明をして紹介してくれた。


「ルディー先生、カミールのアニキがいるから大丈夫だよ。道案内は俺がするから」

と、カミールより細身のイーゴルが地図を持って答えた。


「先生の属性は?」

と、紹介された背の高い茶髪で姿勢の綺麗な騎士が聞いてくる。


「あぁ、僕は土属性になる。魔力量は上寄りの並みだね。だから方向感覚は大丈夫だと思うよ」


「ルディー先生も土属性か。俺もそうです。魔力量は平均値ですね」

と、イーゴルは人懐っこい顔で答えた。目で先に聞いてきた騎士に問うと、


「俺は風属性。量は上になる」

と、淡々と答えてくれた。


先頭に立って森に入って行くのは一番若いイーゴルで17歳だ。

何となく山道だと分かる繁った処を、ヒョウヒョウと剣を振って開けてくれている。


……一見重そうに見えるが、軽いのだろうか? 人が通るに問題なく飛び出た枝や蔓を撫でているように切ってるなぁ……


「先生! スージィーさんどうしたんでしょうね? 人が通った形跡は無いですよ。

まぁ、動物は行き来しているようですが……」

と、イーゴルはチラリと繁って見にくい空を見上げて言ってくる。


「後、どれぐらいだろうか? 僕は2人と違って訓練してないからね……期待しないでよ……大して体力無いから……ね」

と、後ろから付いてくれるカミールに聞こえるように少し大きめな声で答えた。


「無理して大きい声を出さなくてもいい。無駄に体力を使うな」

と、無下無く後ろから声が掛かった。


……すみません、僕が悪かったです。たまに剣を抜いている音はするが、何も言われないから気にせず行こう。


「俺が思っていたより、近い? というよりは整備されていたなぁ。草や枝葉は繁っているけど足元は山道らしくない。俺みたいな土属性のヤツでも雇って均した感がする」

と、イーゴルが言ってくる。


「スージィーさんは……闇と水属性だから……人に……頼ん……だかも……ね」

と、イーゴルに答えると、


「先生、少し休むか? もうすぐだと思うけど」

と、イーゴルが言って振り替えれば、何か黒い物が動いた様に見えた。


「えっ? 何?」


「そら、色々いるよ。気にしないで大丈夫だから、危ないのはアニキが始末しているし」

と、イーゴルは剣を収めて言ってくる。


……やっぱり危ないのがいるんだ。何でこんな処に?

少しの休憩に色々考えてしまうが、2人は頼りになるし、スージィーさんに会わないと


小休憩を終えてイーゴルが歩き出す。暫く行くとイーゴルが剣を収めて、口笛をピュ~~っと吹きならす。


森に入った筈なのに、結構な広さで開けている。奥まった処に小屋が建っていた。


「あれはなんでしょうね?」

と、イーゴルは後ろに向かって声を掛けている。カミールは後ろから私を追い越し前に出ると、


「猫……だな。小屋の扉と同じ位……の大きさだが」


「えっ? 猫? どれぐらいって?」


「だから、扉と同じ位だと言ったが」

と、カミールトが言い返す。


……んなっ! 馬鹿な!

と、イーゴルとカミールの身体の隙間から小屋を覗き見る。


「えっ? ほ、ん、と、う、だね。大きい猫だね」


どう見ても白い大きな猫が、小屋の扉前に座って顔を洗っている。右前足を目元に持っていきピンと立っている耳後ろから前と動かして、普通の猫がする仕草で顔を洗っている。

ここからでも分かる、猫の瞳はゴールドで日に当たっていれば奥の瞳孔は縦に細長い。


「おい、側にいるのはランディか?」

と、カミールがイーゴルに聞いている。


「そうみたいですね。あの黒くて小さいのはランディみたいですね」

と、イーゴルが答えた。


「ランディは無事みたいだし、猫は大きいけれどいるなら、小屋にはスージィーさんがいるんだろうな」

と、ルディー医師は2人に問う。


開けた土地には綺麗に切り添えられた草が生え、騎士達のブーツで踏みしめてもヘタリもしない。

3人で小屋には近づくと顔を洗っていた猫は前足を揃えて、身体を扉に寄り掛ける。

ランディは猫の前に出てきて、歯を見せる。

唸り声は出してはいないが、警戒はされているのは分かる。


……どうしようか、声を掛けてみようか……


一様2人の騎士には、側にいてもらって声を出す。


「こんにちはー、スージィーさん! いらっしゃいますか?」


「……………………」


「あーーーーのーーーー!」


「………………どちら……さまですか?……」


「「「えっ?!!!」」」

知っているスージィーさんの声、で、は、な、い?


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