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「ちょっと、待ってよ……カミールが、アンディさんに会いに来たの? 今?」
と、ルディーは確認を取れば、
「あれ? ルディー先生! どうしたのさ!」
と、イーゴルも軽装で現れた。
「…………2人とも、どういう事?」
と、ルディーは小屋を背景に立ち、隣でプーが顔を洗う仕草をしていても2人の青年に問う。
……なんだ? 二人して僕をだしにしているのか?
「いや、そのさ……先生? 何か怒ってる?」
と、何も言わないカミールと違い、イーゴルはルディーの前に出てきて何か言ようと、誤魔化しに近い言葉を出してきた。
「はっきり言えるのは、イーゴル! 君には怒っているよ。
僕がいつ君に頼んでスージィーさんの山に行って欲しいと頼んだんだろうか? 僕には記憶が無いし、頼んだのなら何かしら用事があった筈なんだが?」
と、イーゴルには完全に苦情を言えるネタは持っている。
「あっ! その! それはね!」
「僕の用事でと言っている以上、僕は騎士団に何かしら報告をしないといけないよね。休みに私用で使うなんて有ってはいけないことだよね。団長さんや副団長さんには事情を言うことでいいね」
と、ルディーが脅し代わりにイーゴルとカミールに告げた。
「それは……騎士団には関係無いことで……」
と、イーゴルは呟く。
「それは、可笑しいでしょう? 僕の名前が出ている以上、騎士団を通さなくて騎士を使っているんてこれ以上濡れ衣で悪く言われたくはないけどな」
と、ルディーが言えば、黙っていたカミールが口を開いた。
「何で? ルディー先生が悪く言われるんだ?」
と、言ってくる。
「僕宛に苦情を伝えに来た人がね、居るんだ。イーゴルは誰だか分かっているんだろ?」
と、顔を下にして表情は分からないが、手がワナワナと力が入った状態になっている。
「……あの、アマ……ルディー先生に……」
と、下を向いたままのイーゴルが言葉にしたのが、ルディーには聞こえた。
「イーゴル! 嘘を付いてた君が誰かを責めるのはお門違いだよ。それに僕は文句を君にぶつけてもいいよね勝手に名前を使われて、人に恨まれる事になったんだから」
と、ルディーは本当の事だが大袈裟に伝えた。
「恨まれるって? 俺は先生を悪くなんて言ってないよ!」
と、イーゴルは顔を上げて必死に言ってきた。
……悪くは言ってなくても、実際に僕のせいにされたことには変わらないでしょう……
「先生! イーゴルは俺を庇っているだけなんだ」
と、カミールが言ってきた。
……なんだ? カミールが主犯なのか?
「……何を言っているのか分からないよ。僕は用事をすまして直ぐに帰るから、勝手にすればいい。
プー、アンディさんに確認したいことが有る、会わせてもらえるか?」
と、ルディーの横で顔を洗い終えて待っているプーが、ルディーの問いかけに応じる様に小屋に向かって歩きだした。
プーに付いて歩けば、小屋から黒い固まりが転がって来たと思ったら、ランディが走って降りてきた。
「やぁ! ランディ。調べたいことがあるんだ。アンディさんに会わせてもらえるか?」
キャン! と、ランディの返事に嬉しく思う。
ルディーは自分の荷物を肩にかけ直して、大猫の後に付いて歩く。
2回しか訪れていないが、落ち着く懐かしさがある場所だと思った。
小屋の入口に近付くと、ランディが吠えて知らせているようだ。
開いた扉からアンディさんが顔を出せば、凄く驚かれ目がパチパチとしばたたいている。
「きゃぁ!! ルディーさん! どうされてのですか?!」
と、アンディさんの驚いた顔に少し落莫とした思いが出てきたが、自然に対応する。
「驚かせて悪かったね。僕はお邪魔すると伝えていたけど、来るとは思わなかったんだね」
と、ルディーが先に謝ったが、アンディさんの視線が違うところに向いているのが分かった。
「聞きたいことと、スージィーさんの仕事場を見せてもらいに来たんだ。あまり時間が無いんだけどいいかい?」
と、アンディさんに追加で伝える。
「あっ! はい。ルディーさんにお願いしていたことですし、どうぞ……」
と、玄関口から部屋に通された。
荷物はそのまま肩にかけたまま、泊めてもらった部屋を見回したが、何も変化は無かった。
ランディが先に飾り壁をの前まで来て、こちらを見て待っている。大猫は通過出来る間口では無い。早々に小屋の外で横になって近付く蝶々と、尻尾が踊っているようだ。
ルディーはこの飾り壁より奥には、足を踏み入れて居ないが、イーゴルとカミールはアンディさんの手伝いに向かわせた。
遠慮の無い若い2人を、分別ある大人の自分には出来ない事だと認識してランディの後を追う。
壁から直ぐが水場で、台所と洗い場に続きは、便所か?
ランディが水場を通り過ぎ通路を真っ直ぐに進めば、突き当たりを右に曲がった。
扉が2つあるが、アンディさんが手前の扉の前で立っている。
「奥の部屋が全部スージィーさんの部屋になっています」
「全部?」
「ええ、扉を開けてもらえると分かりますが、三つに仕切られていて自室と本の収納と作業場になっています」
と、アンディさんは説明してくれる。
「じゃ、この前の医院の薬はスージィーさんの部屋から出してくれたのかい?」
「いえ、薬の収納や保管は私の部屋の一部に有るので、私が保管しています」
「スージィーさんの部屋に入らせてもらいますよ。物色したいので一緒に入ってもらえますか? 出来れば手伝ってもらえると僕も早く帰れますから」
と、ルディーは長居するつもりは無いと伝える。
「ルディーさんのお気の済むまでどうぞ。私は見ても分からないと思います」
「勝手に見ても良いと?」
「多分、ランディが教えてくれますよ」
「えっ? ランディが?」
と、足元の黒い小さい塊に目線を向けると、
キャン! と、答える。
「私もお手伝いはしますが、ランディはずっとスージィーさんの側にいたので、私よりは詳しいと思います」
と、アンディさんは答えて、スージィーさんの部屋の扉を開けてくれた。
正面には書斎らしい区間で、本棚には沢山の本がきれいに収納されて、机に本が数冊置いてある。
左側の区間はベットがあるが、ベットには寝具も無く収納棚にも何も置かれていない。
「こちらを見てもいいかい?」
と、アンディさんに問うと、下からキャン!って返事が来た。
……本当にランディが返事をしてくれるんだ
寝室だった場所に入れば、スージィーさんの日常使っていたものが、全く見当たらない。
ベットに壁の鏡だけで、収納棚は小物1つも無いのは?
「誰か?スージィーさんの荷物を取りに来たのかい?」
と、ランディに聞くと、ランディは返事をしなかった。部屋の隅にはランディには大きい寝床が有る。使っていないのかランディは無関心だ。
……ランディの寝床じゃ無いのか? ここはスージィーさんは使ってい無いのか?
「書斎を見てもいいかい?」
と、勿論ランディに問うと、少し間があったが、キャン! と返事をして先に誘導してくれた。
仕切りの書斎の、中に入れば教会の図書室よりは少ないが関係書籍や外国物、植物図鑑に専門書等が棚毎に収まっている。
机の上に置かれている本を手に取れば、ボンヴェール語では無い文字が綴って有る。
……どこの国の本なんだ? 一番下は辞書か? スージィーさんは外国語を勉強していたのか?
あれ!? 手紙が……ある、けど?
ワン! ワン! ランディに吠えられる。
……なんだ? ダメだと言っているのか?
机の上から手を引けば、ランディが態度が落ち着く。
……隣の作業場を見て、収穫がなければもう一度ここを改めるか。
隣の作業場にランディが案内してくれたが、
アンディさんが先に作業場に入って布団を畳んでいる。
「その布団は誰が使っていたのですか?」




