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ロットの相談というか、言い掛かりみたいな事から、気が逸れて医局に戻れば何やら騒がしい。
……ザームとトッポと女の子? 女性に詰め寄られているというか、脅迫されている?
「どうかしたのか? 2人とも診察は?」
と、ルディー医師が3人に向かって声を掛けた。
「あっ! 先生! こっちに来ては駄目です!」
と、トッポ医師が振り向き言ってくる。
「貴方がルディー先生ですか!」
と、ザームとトッポを払いのけて向かってきた女性はルディーにとっては初対面だ。
「ルディーは僕ですが、貴女は?」
と、目の前に来た女性に対して答えた。
答えたルディーに女性は睨みながら泣き出したのだ。
「貴方のせいで、イーゴルが可笑しくなったのよ! 何をしたのよ!!」
「えっ? イーゴル?」
と、ルディー医師は、何の事が分からない。
女性と面識が有りそうなザーム医師とトッポ医師が落ち着かせようと話しかけているが、女性は泣きながら抵抗してルディー医師を睨む。
……オイオイ。なんだ? 僕は女性にモテもしないが酷い仕打ちもしたこと無いぞ。それこそ若い女性と関わることない。
医院職員以外では?
「ちょっと! 落ち着いて! ザームとトッポは知っている人なのか? 僕は初対面だと思うけど?」
「ルディー先生と一緒に行動してから、イーゴルが可笑しいのよ。騎士団だっておばさんは反対していたのに……」
と、涙を流しながら訴えて来られてもルディーには心当たりが全く無い。
「兎に角僕が話を聞くから、ザームとトッポは診察に戻ってくれたら良いよ」
と、ルディー医師は促せば、
「ザーム先生は、戻って下さい。僕はベースさんの事でルディー先生に相談があるんだ。モネさんの事を説明してから、ルディー先生に指導を受けるから」
と、トッポ医師はザーム医師に告げて、モネと呼んだ女性を促して応接室に向かう。
何が何だか分からないが、女性の腕を持ったまま移動するトッポの後ろを付いて、ルディーも移動した。
「モネさん、落ち着いて話して下さい。僕もルディー先生も貴女が泣いている事情が分からないのですよ」
と、トッポ医師は声を荒げることなく、優しく言葉にしている。
……トッポは、オドオドとして人と関わるのが苦手にしていたけど、外科に行って変わったな。
患者は自分の身体の事でも人に伝えることが難しい。上手く患者の言葉を引き出すのが上手くなっている。
「トッポ先生は、彼女を知っているのか? 失礼だが僕には記憶に無いのだが」
と、話す切っ掛けとしてトッポに振る。
「ルディー先生が御存知無いのなら、内科には行ってないんだね。外科の診察時に付き添いで何回か見かけただけです」
と、トッポ医師は答えた。
「外科の診察に? 誰かが怪我をしたのか?」
と、モネという女性がイーゴルの関係者であれ、家族や他の付き添いで外科に来た可能性がある。
「それこそ、騎士団のイーゴルの付き添いだったと思います」
と、トッポ医師が女性の代わりに応えている。
……今日の僕は人から疎まれる事ばかりで、気持ちが滅入るよ。これが日頃の行いのせいならば、僕を診てくれる医師を紹介して欲しい……
「初めましてだよね、モネさん。僕はこのポルカ医院の医師をしているルディーですが、モネさんが何か僕に聞きたいことや言いたいことがあるのは、僕で間違いはない?」
と、女性に改めて挨拶と自己紹介に質問をする。
「……はい。ルディー先生がイーゴルと一緒にスージィーさんの山に入ったのなら先生で間違いがないです」
……えっ? スージィーさんの山……
「確かに僕は、この医院の薬を依頼しているスージィーさんの様子を見に、騎士団に依頼してカミールとイーゴルに付いてもらったけど、その時が僕と面識が初めてみたいだったし、それ以外の交流は無いけどな」
と、ルディー医師は経緯を説明した。
「それは私もイーゴルから聞きました。一回目の護衛では、山には小さい犬と大きな猫がいたこと、先生の体力が無くて時間が掛かったと聞きました」
……まぁ、確かに時間はかかったし、本当の事だけど……
「どうやら、イーゴルはモネさんにちゃんと話しているようだけど、僕が何もしていないのもその話で分かりそうなものだけど」
と、言葉を繋いだら、隣に座っているトッポも頷いて同意してくれている。
「2回目の護衛を終えてからイーゴルが可笑しいの!」
「2回目の護衛は彼らから言ってくれたんだよ。僕は護衛なら誰でも良かったし、団長や副団長が指名してくれる騎士なら異存は無いからね。ただ顔見知りになった2人から言われたことは嬉しかったけど、2回目の話もイーゴルからモネさんは聞いたんでしょう?」
と、1回目からちゃんと話している間柄なら2回目も話しているだろうと問う。
「……はい。カミールが怪我をしてその日の内に帰れなかったことや、先生が凄いとイーゴルは言っていました。
あの日からずっと先生の話をするんです。それに騎士団が休み日は、出掛けていません」
と、モネさんは言って下を向いてしまった。
……あれ? 何で僕が責められるのかなぁ? イーゴルやカミールが山小屋で有ったことを口止めはしてないから話すのは別に良いけど、騎士団としては任務中の事は簡単に話しても良いのか?
「あの、モネさんはイーゴルが護衛に付いた僕を褒めるのが嫌だと言っているの?」
「…………いいえ、ルディー先生の事は悪い噂は聞きません。近所のお婆さんは先生を何時も褒めていますし、早く嫁さんを貰って欲しいと他のおじさんも言ってます」
と、今日の出来事に落ち込みそうだったルディーの高評価を教えられて、少し持ち直した。
「だったらどうして? モネさんはルディー先生に恨み言を言いに来たんだい? ルディー先生を責める筋合いが無いようだけど」
と、トッポ医師はモネさんの辻褄が合わないことを聞く。
「だって、先生に頼まれてスージィーさんの山に行っているんですよ。
騎士団の休みの日に、わざわざ行くなんて先生はイーゴルに何をさせているんですか?
何か、イーゴルが先生の言うことを聞かないといけないことがあるんですか!」
……えっ? 僕は関係無い話だよな?
「イーゴルが僕に頼まれたと?」
と、ルディー医師が確認を取れば、そのまま頷き睨んでくるモネさん。
隣のトッポ医師は、僕に視線を向けるが、トッポが本当かどうかなんて知っているはずも無く、答えられず黙ってしまった。
「イーゴルが何故? 僕の名前を使っているのかは、分からないけどあれから僕はイーゴルに会ってもいないし、何かを頼んだことも無いけどな」
「えっ?」
「僕はイーゴルがスージィーさんの山に行っていることも、今モネさんから知らされたと言っているよのです。
イーゴルが山に行くとモネさんに言って行くのが、何故? 僕が責められるのか分かりません。彼が勝手に行っているのなら、嘘を付いて行っているイーゴルを責めればいいでしょう?」
と、ルディー医師は見当違いに責められて少し心がイラついた。
……何か? 無性に腹が立ってきた。嘘を付くのに僕の名前を使うなよ。
本当にロットの妹が聞いた、ロット兄妹への中傷を広げた犯人と、モネさんが信じてるイーゴルの訳の分からない嘘の行動。
「ところでモネさんは、騎士団のイーゴルとどんな関係なんだい? ルディー先生を悪者にしたような言い掛かりは、僕にも納得が出来るように説明して欲しいな。
確か怪我をしたイーゴルに付いてこなくてもいいと断られても付き添っていたし、モネさんはどんな立場なのか説明できるよね」
と、トッポ医師が戸惑って考え事をしているモネさんに追い討ちを掛ける。
「えっ? どんな関係……イーゴルのお母さんのお店で働いています」
と、モネさんは消え入りそうな声で返事をした。
「イーゴルのお母さんのお店の従業員が、ルディー先生に文句を言いに来たのを、イーゴルとお母さんは知っているんですか?」
「……いいえ」
と、何とか聞こえる声がした。
……イーゴルは、嘘を付いて何しに行っているんだ?




