表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様セイラの事件簿  作者: 鈴埜
第三章 イーハー空中図書館殺人事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/57

もう一つのエピローグ

 潮風を体に受け、その暖かさに夏の訪れを感じた。

 闇から闇へ、真実が葬り去られることを危惧しかなり慎重に立ち回ってきた。だが、それも無用の心配だったようだ。

 彼女の口から少しずつ引き出した事実を、やがて市長は認めることとなる。薄々勘付いていながらも目を閉じていたことを。

 そうして、連続殺人犯の死亡が確認されると、逃亡中の殺人犯の名は自然と忘れられていった。警察もそちらを盛り上げ自分たちの失態から目をそらそうとする。


 エマーソンは海の見える丘に立てられた墓碑を前にする。


「どこで間違ってしまったんだろうね」

 彼らが出会ったのは偶然だった。

 しかし、一線を越えてしまったのは間違いなく彼らの意思だ。

 それぞれがそれぞれの願いを叶えるために、人として踏み込んではならない領域へ行ってしまったのは、どんな状況にあったといえども彼らの責任なのである。

 悲しい偶然。

「いや、それすらも呼び込んだ」

 想いが、出会いを生む。


 エマーソンは華やかな色をした花束を墓碑の前にそっと置いた。

 そこは、メアリ・マイヤーズの墓だ。

 訪れるものをなくした墓は、あっという間に朽ちて行くという。

 真実を知る一人として、同僚として毎月花束を添えてきたが、とうとう自分にも変化が訪れた。長く親しんだ土地を離れなければならなくなったのだ。

 心残りはいくつもあるが、そうやって人は生きて行く。

 

 空を見上げる。

 そこには、相変わらず美しく夕日に輝くイーハーがあった。

 本を主とし、再び成長を始めたイーハーは、しかし、今度はもう少しだけ人間に興味を持ってくれればと思う。

 一つだけを追い求めると、見誤ってしまう。

 間違いを犯してしまう。

 次はそうならないために、世界へと目を向けよう。

 世界は、可能性に満ちているのだから。


 別れの挨拶をして、彼もまた、新しい道へと踏み出した。


      了 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ