PastFile黒畑 悪徳議員とハンマー使い
黒畑が部下になったのは、大安を仲間にし、しばらくした時の事。俺は千葉の議員、新見卓に、自分たちを護衛にしないかと相談していた。
「新見議員。私たち、『桐田警備』に護衛を任せてみませんか?」
ちなみに、桐田警備というのは、チーム絵札の表の顔だ。
「うぅむ………」
新見は数秒の沈黙の後、怪しげな笑みを浮かべた。
「いやいや、私にはすでにいい護衛がいますから…」
新見が手を叩くと、俺達だけの部屋にある巨漢が現れた。その男はスレッジハンマーを持っており、いかにもパワータイプな者であった。
「この人は?」
「半グレ集団『ペイン』のリーダー、黒畑純紀です」
「ほう。半グレ…」
俺はあえて心配するように言った。
「半グレと言いますと、いわゆる裏社会の人間。そんな者と議員である貴方が組んでいて大丈夫なのですか?」
「えぇ。大丈夫ですよ。もしこれを知った者がいれば………消せばいいので」
「ほう…(流石噂に聞く悪徳議員だ)」
俺は席を立つ。
「すいません。少しトイレに」
「えぇ。了解です」
俺は部屋を出て、トイレに向かうふりをする。
部屋を出て右に曲がった所に山王がいた。
「山王。出番だ」
「えぇ。桐田さんの期待に応えますよ」
そして、俺達は部屋に戻る。山王を連れて。
「すいません。トイレってどこでしたっけ?」
「えっと…トイレなら」
「山王。やれ」
「えぇ」
山王が新見の頭を掴み、拳銃を突きつける。
「がっ!」
「なっ、テメェ新見さんを」
「き、桐田さん!これはどういうことで!?」
「黒畑、うちの仲間になる気はないか?」
「テメェ、ヤクでも使ってんのか?意味不明だ」
「そのままの意味だ。シラフで言っている」
すると、黒畑がハンマーを振り上げる。
「あっそう………かい!」
そして、その鉄槌を振り落とす。
「おっと!」
それは木で出来た高級テーブルを壊した。
「ほう…怖い怖い。山王、新見を連れて部屋を出ろ」
「了解」
山王と新見が部屋を出て、俺は黒畑と相見える。
「さぁて、どう潰してやろうか」
「来るなら来い。お前を雇って組織を強くする」
黒畑がハンマーを持ち上げ、俺はナイフを取り出す。
「………」
「………」
数秒の沈黙の後、スタートを切ったのは……
「はぁっ!」
黒畑であった。
「くたばれぇぇ!」
黒畑がハンマーの横薙きを行う。
「見えるぞ、大振りが」
俺はそれを受ける直前に後ろに避ける。
「さて、戦いというのはその場にあったものでやるものだ」
俺は近くの消火器を手に取り、噴射した。
「ぐおっ!」
黒畑が目を腕で守る。しかし、それにより下半身ががら空きだ。
「さて、コイツが弁慶の泣き所に当たったらどうなるかな?」
俺は消火器を奴の脛に投げる。
「何ッ」
気付いた時にはもう遅い。
「がぁぁぁ!」
「痛かろう。消火器は」
消火器が奴の脛にクリーンヒットする。しかし、黒畑は笑みを浮かべる。
「何が可笑しい」
「けっ、俺はこんなので怯む男じゃねぇ…」
黒畑がハンマーを振り上げる。
「死にやがれぇぇぇ!」
そして、ハンマーを力と怒りのままに振り落とした。
「ぐおっ!」
鉄槌が俺の鼻を掠める。確実に鼻の骨が逝った。
「ぐっ…」
「どうだぁ?一撃で仕留められなかったが、随分ヤバいだろう?」
黒畑の言葉に、俺は嗤う。
「ケケケ…」
「ん?今、笑える要素なんてあったか?」
「面白い、面白いぞ!黒畑純紀!そのまま俺を殺せるかぁ!?」
「うおっ…(何だコイツ、鼻が逝った筈なのに、笑っていやがる。そういえば、チーム絵札の桐田という男はまさに狂人だと聞いた…そういうことか)」
黒畑がハンマーを地面に落とす。
「ん?どうした?」
「わかった。俺の負けだ」
「ほう?」
「アンタのその狂気、俺よりヤベェ。降参だ」
「そうかい。なんか冷めたな」
これにより、『ハンマー使いの黒畑』は俺の部下となり、後のラストジョーカーNo.2となる。