PastFile大安 侍が半グレとなった理由
大安が部下になったのは、山王慎哉が部下になり、数日経った時の事であった。
「桐田さぁん!」
「何だ七沢?」
俺の部屋に入ってきたのは、『奇襲の七沢』こと七沢耕平であった。
「さ、最近傘下の半グレが切り捨てられる事件が…」
「知っている。『アロゴ』の奴らだろう?」
「え、えぇ…」
それは、昨日起きた事であった。
アロゴの奴らが、何者かに切り捨てられた。
アロゴだけではなく、同じく傘下の『インサニア』、『ノクス』も、何者かに切り捨てられたと言う。
本来ならチーム絵札に粉をかけた者として必ず抹殺をしなければならないのだが、当時の俺は狂っていたのだろうか…
「アイツらを切り捨てるほどの実力…実に気になる。是非とも仲間にしたい」
俺はソイツを仲間にしようと考えていた。
俺は早速、傘下の情報屋に大金をかけて、ソイツを探した。そして、見つけた。
切り捨て野郎の名は、大安琢馬。又の名を、『侍の大安』。
どうやら奴は『大安流』という刀の流派の使い手だそうだ。
大安流というのは、かの剣豪宮本武蔵が使っていた二天一流を模倣したもので、その大安も父親であった大安嘉彦からそれを学んだとか。
しかし奴は自身の力を皆に誇示しようとと暴走。父親はそれを止めようとしたものの、大安は父を殺し、その後裏社会で名を馳せているという。
俺は早速、奴が本拠地にしている千葉南部に向かった。
「おーい、いるかー?」
本拠地の廃屋にはチンピラが3名がいた。
「何だお前!」
「大安という奴に用がある。出してくれないか?」
「あぁん?テメェに大安さんを出してたまるかぁ!」
一人が拳銃を発砲。
「遅い」
俺は弾を避け、ソイツの懐に入り込む。
「しばらく寝ててくれ」
「は、はやっ…」
俺はソイツの顎にアッパーを決める。
「きびふっ!」
「この野郎!」
「殺してやる!」
残りの二人がナイフを出し、突撃する。
「五月蝿い」
俺は鉄板入りの靴でナイフを蹴り飛ばす。
「なっ…」
「嘘だろ!」
「ついでに眠っててくれ」
俺は蹴り終わりのタイミングと共にエルボーを片方の顔に決める。
「くぶっ!」
「あっ、あぁ…」
もう一人は唖然とし、怯える。
「お前は囮だ」
俺はソイツの首元を掴む。そして、ソイツのコメカミに拳銃を突きつける。
「ひぃぃ!」
「さて、大安ぅ…どこにいる?」
俺がそう叫ぶと、何者かが歩く音がした。
「ん?」
「誰だアンタ」
俺の目の前に現れたのは、刀を持った男。
「アンタが大安か?」
「あぁ。俺の部下に何をしている?」
大安は刀を構える。
「いいのか?このまま斬ったらコイツが死ぬぞ」
「ほう…」
「だ、大安さん!そんな事しませんよね!」
「………ハッ!」
少しの沈黙の後、大安がこちらに飛びかかる。
「ウラァァァ!」
「ぎゃぁぁ!」
大安が袈裟斬りを行い、俺が囮にした男を切り裂いた。
「だ、大安…さん……」
男は無念な気持ちを口から吐き出しながら、死んだ。
「ほう…肉壁か」
「貴様が勝手に斬っただけだろう」
「まぁいい。お前は真っ二つに死ぬがよい!」
大安が刀を振り上げ突撃。
「ほう。唐竹割りか」
「はぁぁ!」
そして、刀が振り落とされる。俺は右腕を刀の前に出す。
「ふん」
その途端、ガキン!という音がなる。
「何っ」
「油断したな」
俺は腹に蹴りを行う。
「くぶぅぅ!」
無論靴に鉄板が入っている。痛くないわけがない。
「くっ…クソッ……」
大安は腹を抑え、その場に倒れる。
「何故だ…何故腕を斬れなかった…」
「分からないのか?鉄板だよ」
俺の腕や体、靴には刀で斬られていいように鉄板が入っている。
「ちっ、なら殺せ」
「そうか。なら………」
俺は笑みを浮かべ言う。
「仲間になれ」
「何っ」
「言っておくが、俺は貴様が斬った者のリーダーだ」
「なら何故…」
「そりゃあ…この手で敵対する者達を殺って欲しいからな」
「そうか…」
「そういえば、入り口の所の奴らはなんだ?」
「ソイツらは勝手についてきた奴らだ。放置しとけ」
「そうか」
俺は大安に手を向ける。
「なら、チーム絵札にようこそ。大安」
「あぁ」
これにより、『侍の大安』は、俺の部下となった。