47話
「天城くん!凄いな、君!」
「⋯⋯おう、さんきゅ」
俺が1組の陣営に戻ると、柳澤が爽やかスマイルで俺を歓迎していた。柳澤が掲げていた手に、適当にハイタッチを返す。
俺が出来るサッカーの技術は、真面目に練習してるサッカー部員程度なら誰でも出来るようなレベルに過ぎない。カス共は人を蹴落とすことばかり考えている雑魚であり、放課後も練習しないであんな嘘告白を強制させてる碌でもない人間だから通用するのだ。
ふと周りを見ると、同じように1組の男子生徒が俺をキラキラした目で見ている。遠くにいる白澤を見ると、何やら興奮した様子で叫んでいた。
⋯⋯中学生までなら、しゃしゃり出るなとサッカー部員にキレられていたシチュエーションだったと思うが。どうやら1組の生徒は人間的にマシな人間が集まっている⋯⋯または、元から俺の評価が低かったからギャップで好意的に受け取られたのか。
何はともあれ、これならチームプレイ出来る可能性も見えてきたな。白澤には俺がハブられる理由を見てもらう、という悲しいミッションが課せられていたのだが、どうやらその必要は無さそうだ。
「よし、相手のボールは俺が奪い返す。柳澤は間違いなくマークされるだろうから、なるべく他の連中でゴールを取りやすい位置に居てくれ。そこからパスを回して、ゴール決められそうだったらすかさずシュートを決めろ。細かい作戦なんか立てたって、どうせ俺たちじゃ出来っこねえんだ。作戦名は『がんがん行こうぜ』だ」
「みんな!天城くんの作戦で行ってみよう!追加点取るぞ!」
『おー!!!!』
俺は雑すぎる作戦を1組の生徒に聞こえるよう告げ、いつでも相手のボールを奪えるように構える。
相手チームを見ると、俺からボールを簡単に奪われた悲しき男、伊藤が渡辺と共に俺を睨み並び立っていた。どうやら二人でパスをしながらこちらに来るつもりのようだ。
「おいド変人、たまたま点取れたからってあんましゃしゃり出てんじゃねえぞ?」
「あーまーぎーくぅーん!陰キャは陰キャらしく、大人しくボコられとけや!」
「うわぁ⋯⋯。お前ら恥ずかしくないの?そんな雑魚そのものみたいな三下じみた台詞⋯⋯。もしかして雑魚A雑魚Bの宿命でも神様から与えられてんの?」
あまりにも三下キャラすぎて、ギャグなのかと思えてきたぞ。ほら、俺の煽りで簡単に顔真っ赤にしてるじゃん。草。
嘘告白させられていた男、柏田はどんどんキレるカス共が恐ろしいのか、顔を青くしながら震えている。ふん、あんな奴らにビビるとは情けない男だ。俺は柏田に冷めた目を向け、それより更に冷めきった目線をカス共に向けた。
そして、6組の攻撃が開始するホイッスルが響く。
「行くぞォ!」
伊藤がボールを蹴り出す。渡辺とこまめにボールを渡しあいながら、俺に対して一丁前にも撹乱しているつもりらしい。
そりゃ上手い奴らがやれば効果的なのかもしれんが、こいつらのような分かりやすいパスワークで俺を振り切れるとでも思っているのか?
数度のパスワーク後、渡辺が伊藤にパスをしようと体勢を崩す⋯⋯振りをする。うん、俺がパスカットしようとした瞬間にドリブルで抜くつもりなんだろう。
残念!俺は容姿端麗頭脳明晰運動神経抜群才色兼備完璧超天使だぞ?お前みたいなアホの考えを先読みすることも、小さな動きで次の動きを予想することも容易い!
俺もわざと騙された振りをする。左足を前に出し、パスカットに向かうパフォーマンスを見せると、渡辺が足をちょこちょこ動かしてドリブルの体勢に戻し始めた。しかし、洗練されていない小手先の技術は俺に通用しない。俺は渡辺がモタモタ体勢を戻しきる前に、その持っていたボールを遠く蹴る。蹴った先には、1組の生徒が立っていた。
「パァーーース!!」
「お、おわあああっ!?」
しかし、立っていた1組の生徒は突然飛んできたサッカーボールにビビってしまい、頭でパスボールを打ち返してしまう。ああもう!だからサッカー嫌いなんだよ!
大きく放物線を描くサッカーボールを追いかけるが、すかさず伊藤が俺の進行を邪魔するように立ちはだかる。チッ、抜くのは簡単だがそれじゃボールに間に合わない!
そして、サッカーボールは地面に落ちる。そこには、誰一人マークしておらず、センターライン近くでポツンと立っていた柏田の姿があった。




