46話
「よーし!1組ー!勝つぞー!!」
『おー!!』
1組のクラスメイト且つサッカー部の次期エースと名高い柳澤啓司は、俺たち2年1組の男子生徒と円陣を組んで発破をかけた。
俺も適当に円陣を組む振りをし、適当に合わせる。言ってしまえばこいつらは赤の他人であり、そんな大盛り上がりするようなテンションになるわけがない。
柳澤は多分悪い奴ではない。うちのサッカー部は弱小だが、真面目にサッカーに打ち込む姿は素直に好感が持てる。たまたま夜に学校へ来た際、一人グラウンドで自主練に励む姿を見たことがあったのだ。
ただそれは柳澤個人への感情であり、俺がサッカーをやる気になるか、とは一切の関係が無い。俺のやる気は、あくまであのカスサッカー部どもをボコボコにする為と、まあ⋯⋯白澤の応援のためだ。
クラス対抗の球技大会において、FWだのMFだのポジションを気にする必要は無い。GKか、それ以外かである。俺はもちろん、GK以外を選択。
対戦相手はカス共がイキリ散らかしている2年6組だ。
「俺たち、4人もサッカー部がいるとか、パワーバランスおかしくね?チートでしょ!」
「啓司〜!悪いなぁ、次期エースのお前がいるんだし、俺ら手加減出来そうもねーわ!ぎゃははは!」
うわぁ、台詞が三下すぎるだろ⋯⋯。もはや怖ぇよ。件の柳澤は、爽やかスマイルでアイツらに言葉を返した。
「構わないよ!男同士、本気でぶつかり合おう!俺たち1組のチームワーク、見せてやるぜ!」
うわぁ、台詞が熱血漢すぎるだろ⋯⋯。もはや怖ぇよ。一応柳澤も俺を遠巻きに見てた一人だよな?もしかして俺の存在忘れてますかぁ〜?もしもーし。
カス共は、つまらなそうな顔で踵を返した。まあ、煽りに来てあの態度を取られたら、逆に煽られてんのかな?って思うのも無理は無いだろう。
そんなこんなで、2年1組対2年6組のサッカー試合だ。こちらには、学校一の美少女と名高い白澤鶫が応援しに来てくれている。チラッと白澤を見ると、ポニーテールにした黒髪を揺らしながら、大きくこちらに手を振っていた。一挙手一投足が可愛いよなぁ、ホントに。
蹴り出しはこちらからのようで、1組の男子生徒がボールを蹴り、試合開始のホイッスルが鳴る。
よし、どうせ俺に友達はいないんだ。普通にパスされる可能性よりは、パスしたくなる場所に位置取る⋯⋯または、相手がボールをドリブルしている際に奪い取る方が可能性は高いはずだ。
俺はオフサイドにならぬよう気をつけつつ、相手がいない且つ攻撃に転じやすく、パスもしやすいであろう位置に張り付く。相手はほとんどがサッカー素人、サッカー部員も弱小チームの補欠以下である。そうなれば、パスの導線を確保するのは容易い。
開始数十秒、サッカー部でない1組生徒のドリブルに、カス共の一人⋯⋯伊藤がボールを奪おうと仕掛けてくる。どれだけ下手くそなカットでも、対処を知らない一般人からなら簡単に奪うことは可能だろう。俺は1組の生徒がボールを奪われることを想定し、伊藤から逆に奪い返すように動き始める。
「オラァ!いただきぃ!」
「はいはい強い強い」
案の定下手くそなカットで素人からボールを奪い、イキり散らかしている伊藤。その伊藤が喜んでいる隙に、ささっとボールを奪い取ってやった。
俺は奪ったボールをドリブルし、駆け出す。はっはっは、見ろこの華麗なボール捌きを!まるで普通に走っているようなスピードでは無いか!
俺の攻撃を止めようと、カス2とカス3——高橋と渡辺——が迫ってくるが、ボールを浮かせたりフェイントを仕掛けることで容易く抜ける。あっという間にゴール前に来た俺は、ゴールキーパーであるカス4——鈴木——を正面に睨んだ。
サッカーで最も格好いいのはいつか?そう、シュートで点を取った瞬間である。異論は認めます。
俺は目線でシュート方向を悟らせる。ここで別方向に蹴っても構わないが、敢えて真正面から叩き潰してやろう。
俺は力いっぱい足を引き、その反動を活かしてサッカーボールを蹴り上げた。予告した通りの方向——右上——に飛んだことで、鈴木はニヤリと笑いボールを追いかけ飛ぶ。
馬鹿だなあ、こんなのちゃんとしたゴールキーパーなら引っかからないっつーの。計算した通りの回転が加わったボールは、大きく左下に曲がった。回転くらい見て判断しろよな。
俺はボールがゴールネットに包まれる光景を一瞬だけ見ると、次の点を取るために鈴木を一瞥もせず踵を返した。




