44話
黒崎の元に戻ると、黒崎はこの上ないドヤ顔で俺を迎えていた。ムカつくが、ドヤ顔すらも可愛い。顔が良いってほんと得だよな。
「好感度見たけど、確かにちゃんと上がってたぞ。すげえなお前の能力」
「ふふふ、そうでしょうそうでしょう。もっと褒め称えなさい。特別にヨイショさせてあげてもいいわよ」
「ハイハイ凄い凄い」
真面目に対応するのもアホらしいため、俺は適当に黒崎の自慢げな態度を聞き流す。
それでも、黒崎は相当自慢したいのかドヤ顔のままだ。こんな長時間ドヤ顔できる人間っているんだな。
「黒崎は曽根山に出た選択肢が何か分かるのか?」
「?いいえ、分からないわよ。そうでないと、もう片方を試せばノーリスクになってしまうじゃない。技をかけられた人も、選択肢を選ぶと必ずその通りの行動をとって、その後はこの選択肢が出ていたことを忘れるらしいわ。だからもう片方は試せないみたい」
「怖っ!記憶操作に洗脳?お前の恋の神業、何気にヤバい能力じゃん!」
思ったより超能力だったわ。そっかあ⋯⋯。兄の恋の神業も十分に超能力って感じの能力だけど、それ以上に高機能で効果の強制力が高い。
マジで俺異能バトルの世界に転生とかしてない?大丈夫?
「し、失礼な!結果的に好感度上がったし、高木さんの趣味も知れて良かったじゃない!それに天城くんこそ、曽根山くんにオカルト体質なんて嘘の設定を付けてるでしょ!?」
「仕方ないだろ!曽根山は女子との会話経験少なくて、まともに会話にならなそうだったから手助けしたんだよ!⋯⋯まぁ、高木がもうちょっとノリと勢いで生きてる馬鹿なのかな、って期待してなかったと言えば嘘になるけど」
「あ、天城くん⋯⋯ナチュラルに誹謗中傷してるわよ⋯⋯」
「うるせー、本人に聞こえないようにしてんだから別に良いだろ⋯⋯」
黒崎とやいのやいの文句を言い合う。何やら周りの注目を集めているが、無視だ無視。
しばらく言い合っていると、向こうから満面の笑みの曽根山が走ってきた。その雰囲気が許されるのは美少女だけだぞ、曽根山。
「天城くぅ〜ん!やった!やったよ僕!結果的に今日の肝試し、高木さんと一緒に行ける事になったんだ!天城くんが勧めてくれたおかげだよ!」
「そうか。良かったじゃないか。ただし、あくまでお前はただのデブなことを忘れるな。普通に話せば好感度は下がる可能性が高い⋯⋯。良くて友達ってパターンな。だから、今回は必要以上にグイグイ行くな。本当に仕掛けるのは、お前がちゃんと痩せてからだからな」
「分かった!今日はこの瞬間を噛み締めるだけにしておくよ!」
そうだ。今回は黒崎の愛の選択肢の能力で強制的に好感度が上がったが、無理をすれば好感度が下がる可能性も大いにあるだろう。会話術などを叩き込む前に高木とデート(?)する事になったため、余計なことをしないよう口酸っぱく注意しておいた。
しかし⋯⋯曽根山のやつ、一緒にデート出来ることが嬉しいのか鼻の下を伸ばして「でへでへ」と笑っている。こんな情けない姿、頼むから高木に見せないでくれよ⋯⋯。
「でもさぁ〜、天城くんが適当なこと言うから困るよ〜⋯⋯。どうするの?僕、心霊体験とか一度も経験したこと無いのに⋯⋯」
「どうせオカルトなんて証明出来ないんだ、適当に誤魔化しとけよ。あくまできっかけ作りだって。あー⋯⋯⋯⋯うん、ごめんな?」
文句たらたらの態度を取る曽根山に対して、若干の申し訳なさを感じてしまう。いやなぁ、俺もちょっと無理ある設定かなぁって思うんだけどね?高木が喜んでたんだし、アリって事にしてくれませんか?へへ。
俺の言葉に、曽根山は疑わしい目を向けていた。ごめん、ごめんって。
「はぁ⋯⋯まぁ良いけどね。普段から天城くんにはお世話になってるし。僕も、オカルト体質キャラを上手く演じてみせる!」
「おー!その意気だ曽根山!よっ、オカルトハンター!」
「そ、それで良いのかしら⋯⋯」
それから俺は、次の予定まで黒崎と一緒に曽根山へ女子との会話術を叩き込んだ。




