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4話

「さてと。うるさい奴が帰ったところで、仕事の話をしようか、黒崎」


 白澤が走って逃げたので、黒崎と恋愛斡旋人の仕事話をするとしようか。黒崎は白澤を追い返した俺を尊敬の眼差しで⋯⋯見てないな。なんならゴミを見る目で見てるな。あれは「女の子を泣かすなんて、ゴミね⋯⋯」みたいな顔をしている。


 ふっ、こんな事で俺の論破力を見くびられては困るぞ、黒崎。今後少しづつ、俺の行動を崇め奉り信仰するように洗脳してやるぜ、ゲスゲスゲスゲス!


 俺の真剣な眼差しを見たからか、黒崎はため息を一つ吐いてから仕事モードの顔つきになる。いやまぁ、黒崎の仕事モードとか知らないんだけどね?


「そうね。先に報酬について神に確認したけど、協力して1組カップルを作っても、両方に10万円入るらしいから安心してちょうだい」


「それは良かった。じゃないと、このシマを賭けてお前とバトルしなきゃならなかったからな」


 危ない危ない。天城流男女平等天使拳が黒崎に炸裂する所だったぜ。俺は何事においても男女平等をモットーにしておりますので(大嘘)。


 しかし黒崎は、俺を心底バカにしたような顔をしていた。顔だけは良いから、表情豊かで可愛いなこいつ。


「あら、任侠ごっこかしら?悪いけど、そういう趣味は無いのよね」


「⋯⋯はぁ、ああ言えばこういう女だ⋯⋯。よくお前みたいなのがモテたな」


 前言撤回。ほんっと可愛くねーなコイツ⋯⋯。まぁ良い、世界はこういう性格の悪いやつがいるぶん、俺みたいな性格の良いやつがいてバランスが取れてるんだよな。


 そう考えると、やっぱり可愛く思えてきたかも。


「なんだか凄く失礼なこと考えてない⋯⋯?」


「全然。それより、お前の恋の神業(ラブ・スキル)は何なんだ?それ次第で、今後の活動の幅も広がるかもしれん」


 こいつの戯言に付き合う気は無い。俺はさっさとこの世にカップルを爆誕させまくって、早期リタイアで優雅な中年生活を送るのだ。美少女だろうがなんだろうが利用して、俺は億万長者になるぜ!


 俺の質問に対して、黒崎はめちゃくちゃドン引きの顔を浮かべていた。ほんとコロコロ顔変わるな。てか何こいつ、今の会話にドン引きする要素あった?


「あ、貴方⋯⋯あの神がつけたゴミみたいな名前、そのまま口に出せるの⋯⋯?」


「は?恋の神業(ラブ・スキル)の事か?カッコイイし分かりやすいだろ」


「わー!わー!なんでか分からないけど、貴方が『恋の神業』に『ラブ・スキル』ってルビを振って発音してるのが分かるわ!ゴミすぎて耳が腐りそうだからやめてくれない!?」


「ゴミゴミ言ってんじゃねーぞ!恋愛の神様が与えてくれた、ありがたい超能力だろうが!さっさと能力を喋るんだよ!ちなみに俺は『好感度看破(ラブラブ・ジャッジ)』!特定の人物同士の好感度が数値化される能力だ!」


「ラ、ラブラブジャッジ!?さ、最悪のネーミングセンスだわ⋯⋯」


「かっけーだろうが!!」


 こ、こいつ⋯⋯!言うに事欠いて、恋愛の神様の悪口を言いやがったな⋯⋯!俺たちの雇用主で、神様だぞ神様!基本的に他人を好かない俺だが、神様は素直に尊敬しているんだぞ!

 え?格好いいよな?恋の神業(ラブ・スキル)好感度看破(ラブラブ・ジャッジ)⋯⋯。格好いいよなぁ!?よし、そうだよな格好いいよな!

 こんな格好いい名前の超能力を貰ってるくせに、なんて不敬なやつだ⋯⋯!こんな奴が俺のパートナー⋯⋯?うっ、頭が痛くなってきた⋯⋯。最悪の気分だぜ⋯⋯。しかも、周りを惚れさせて仕事にならない超無能なんだよなぁ⋯⋯。


 俺が黒崎への罵詈雑言を脳内で吐き捨てていた間に覚悟が決まったのか、黒崎は顔を真っ赤にして恋の神業(ラブ・スキル)の詳細を吐く気になったようだ。⋯⋯いやなんで顔真っ赤なんだよ、恥ずかしくないだろ。


「⋯⋯⋯⋯。私の力は、相手に対して好感度を上げる、または下げる選択肢を生み出し脳内に直接伝えることよ。たとえば、何かプレゼントをする際に使えば、片方の選択肢は必ず相手が喜び、もう片方の選択肢は必ず相手が嫌がるの」


「う、うわぁ微妙⋯⋯確率2分の1でデメリット大きいくせに、メリットしょぼくね?」


「うるさいわね!別に良いでしょ!」


 つまりあれだろ?恋愛シミュレーションゲームみたいに、好感度アップとダウンの選択肢を発生させて、他人の恋愛をサポートするみたいな。これが正解の選択肢が分かる、とかだったらめちゃくちゃ使えるんだが⋯⋯。


 能力について考察していたところ、名前を聞かされていなかった事に気がつく。なんでわざわざ名前はぐらかしてんだコイツ、もしかしてまたゴミみたいな名前とか言い出す気じゃないだろうな?

 そんなこと言い出したら、俺の天城流男女平等天使拳を食らわしてやると意気込んで口を開いた。


「んで、名前は?俺の好感度看破(ラブラブ・ジャッジ)みたいにあるだろ?」


「⋯⋯⋯⋯ダサいから言わないわ。黙秘」


 こ、こいつぅ〜!やっぱダサいとか適当なこと言ってやがるわ!許せん!!絶対吐かせるぞ!絶対にその口から言わせてやるからな!


「お前の能力使いたい時に呼ぶの面倒くせーだろうが⋯⋯!お前の手伝い拒否して、無職にしたって良いんだぞこっちは!」


「⋯⋯⋯⋯うっ。⋯⋯ラ、ラ⋯⋯」


 観念したようだ。しかし、黒崎は顔を真っ赤にしたまま中々言い出さない。


「ラ?」


「⋯⋯愛の選択肢(ラブラブ・チョイス)⋯⋯あ、ダメだダサすぎる。死のう」


「待て待て待て待てー!!格好いいだろ愛の選択肢(ラブラブ・チョイス)!だから早まるんじゃねー!!」


 なんだ、格好いい名前じゃん!と思ったのも束の間、黒崎は絶望の表情を浮かべたまま窓から飛び降りようとした。アホかコイツ!俺は慌てて止めに入った。




 ◇◇◇◇◇◇




「はぁ、はぁ、はぁ⋯⋯。まったく、落ち着いたかアホ女」


「もうやだ⋯⋯ダサすぎて無理⋯⋯」


「な、泣いてる⋯⋯」


 なんとか黒崎の自決を止めることには成功したが、同い年の女がガチ泣きしてしまった。中々レアな光景だ。でも泣くほど嫌なことあるか?格好いいのにな⋯⋯。


 そんな事を考えていると、またこの教室の扉が開いた。武田に確認を取った白澤が来たのかと思ったが、ようやくお客様がお目見えになったらしい。


「おせーよ曽根山、お前が来るの遅くて大変だったんだぞこっちは」


「え、えぇー⋯⋯。そこの金髪の人めちゃくちゃ泣いてるじゃん⋯⋯何この状況⋯⋯」


「あれは服を着て歩くだけで、俺たちとは違う生物だ。特に気にしなくて良い」


 曽根山が黒崎にドン引きして⋯⋯いや違うな、黒崎を放置してる俺にドン引きしてるなアイツ⋯⋯。こうやって冤罪が生まれるんだな。

 とりあえず曽根山はシバく。話はそれからだ。

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