36話
というわけで、現在17時50分。10分前になった俺たちは、木崎を中庭に待機させてそれを見やすい位置に隠れた。
木崎には『この告白を受けてみてから考えても良いのでは?』と、口酸っぱく伝えてある。くっくっく、これで10万円間違いなしだな。
あぁ⋯⋯今から何を買おうか迷うなぁ。8万は貯金するとして、2万円は使えるぞ。美容室代やらなんやらは事足りてるので、何か欲しい物を買うことになる。服を買うか、靴を買うか。漫研に入ったことだし、アニメ漫画ゲームの類を買うのも悪くない。美味いものを食うのも捨てがたいな。笑いが止まらん!
一方、木崎は不安そうに周囲をキョロキョロしている。白澤も黒崎も、告白に対する返事は自分で考えなければ不誠実だと言って教えてくれなかったからだろう。確かに、自分の告白に対して誰かの言葉を借りて返事されたら傷つくよな。
何か参考になればとアドバイスを貰いに来たのに、一切ノーヒントで告白に臨むことになった木崎の気持ちは察するしかない。
待つこと5分ほど。約束の時間より5分早く、その男がやってきた。ヒョロヒョロで気弱そうな眼鏡男子で、その足取りからも不安が見て取れる。
「——来たぞ!」
「今どきラブレターなんて送るのはどんな男かと思ったけど⋯⋯有象無象の一人ね」
「でも優しそうじゃない?姫華ちゃんには、優しい人が似合うと思うの」
ナチュラルにド失礼な事を宣う黒崎と、木崎の幸せを考えて男を評価している白澤。なんで黒崎は、こんなに性格まで終わってんだろ⋯⋯。
白澤は、相手の良いところを見つけてくれる良い子だ。本当にそのうち白澤の爪の垢を煎じて、黒崎に飲ませようかな?たぶん白澤に断られるか⋯⋯。
俺の全校生徒データベースを参照したところ、あの男は同じ二年の柏田一郎だ。所属部活無し、目立ったところが特にないTHE・モブである。
柏田は緊張しているのか、ぷるぷる震えていた。木崎も負けてないくらい緊張しており、見ているこっちが緊張してきた。
どれ、初対面の告白成功率でも見てみるか⋯⋯。
『好感度看破!』
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木崎姫華 → 柏田一郎
好感度:+2
柏田一郎 → 木崎姫華
好感度:+5
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⋯⋯は?
「おい、黒崎。ちょっとこっち来い」
「?な、何よ。今いい所じゃない」
「いいから!白澤、ちょっと木崎見ててくれ」
「う、うん」
俺は黒崎の手を引いて現場から少し離れた。白澤に恋の神業の話をする訳にもいかないからである。
じゅうぶん離れたところで、俺は黒崎の手を離す。黒崎はとても怪訝な表情でこちらを見ている。これが木崎や白澤なら、顔を赤くして照れる可愛げがあるんだけどなぁ⋯⋯。なんでこいつ、デフォルトで俺への悪感情抱いてんの?まぁいいか。
「俺の好感度看破を使った」
「ひ、ひい!シリアスな顔で、そんなおぞましい名前を呼ぶのやめてくれない!?」
「話進まねーから喋んな!⋯⋯ったく。それで見たところ、あの男⋯⋯木崎のこと好きでもなんでもないぞ。こんな事初めてだ⋯⋯」
なに?木崎って、おかしい男を惹き寄せる恋の神業でも持ってんの?たとえ体目的でも.こんなに低い好感度にはならない。案外、ああいう無害くんっぽいのが性欲の塊なパターンも少なくないが、色々見てもそんな感じには見えなかった。
⋯⋯何が起きてるんだ?
「⋯⋯あなたの能力、かなり曖昧というか。好き寄りに判定出るのよね?」
「まぁ、曽根山でもちゃんと高木が好きって好感度出るしな」
「となると、本当に好きじゃない可能性が高いと?」
「なんなら、ほぼ知らない相手に抱くくらいの好感度だぞ。どうなってんだ⋯⋯」
俺たちは互いに頭を悩ませる。
「とりあえず木崎さんの告白結果を見てみましょう。もし付き合うなら、それからどうなるか観察しないと」
「そうだな。⋯⋯っつーか、これちゃんと金貰えるんだろうな⋯⋯?」




