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33話

 体感的には10話、日数的には2日だったはずの休みが終わった。今日から憂鬱な月曜日だ。憂鬱だというのに、どこか晴れやかな気持ちがある。ああ、曽根山に会いたい。曽根山の流れるようなツッコミが恋しい。

 あれ?俺もしかして、曽根山に恋してる?(ドキッ!)⋯⋯はい、ボクが馬鹿でした。すみませんでした。嘘です。


 そんなこんなで俺は朝から曽根山宅へ押しかけ、眉毛を整えたり髪をセットしたり弁当を渡すなど一連のルーティンをこなすと、曽根山と共に学校へ向かう。

 今日は曽根山も自転車で向かうようなので、朝は体操着で行かせて制汗剤各種(無香料)を常備。汗くさくない曽根山として登校させる準備はしてきた。


「ひ、ひい〜!あ、天城くん〜!き、きっっっついんだけどぉ!!」


「走れ走れ!俺が追い越した瞬間、今日の昼飯は抜きにするからな!それが嫌ならもう30回転ケイデンスを上げろ!!」


「ケ、ケイデンスってなに〜!?」


 ケイデンスとは、1分間にペダルが回転する数値を指す。俺が自転車を漕いでると、勝手に後ろに乗ってきた兄がよくそんな事を言って虐めてくるから覚えた。

 なお、自転車の二人乗りは犯罪なのでやめるように。これで警察に怒られたら、俺は兄と縁を切ってしまいかねない。クソすぎだろ。


 朝から曽根山を(しご)き倒し、俺の心が満たされていくのを感じている。最近は良い子ちゃんのフリをし続けたため、自分にアレルギー反応が出るところだったが、こうして曽根山に素の自分をさらけ出している間は生きてる実感が湧くなぁ⋯⋯。


「おい曽根山、ちゃんと言いつけ通り高木とは話してないだろうな?今の情けないお前が調子乗って話しかけたら、高木との仲を修復できないくらい嫌われる可能性があるから釘刺してんだぞ」


「ええっ!?ぼ、僕ってそんなにダメかなぁ!?」


「いや駄目だろ⋯⋯。デブだし、頭もあんま良くないし、もちろん運動も出来ないし。話も特に面白くなければ、女子相手だと緊張でもっとつまんなくなるだろ」


「凄いね!僕の悪い所って、そんなコンマ何秒かでスラスラ出てくるんだ!ぎゃ、逆に僕の良いところって無いの!?」


「良いところ〜⋯⋯?⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯うーん。⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯まぁ、歌が上手いとか?」


「そんなに考えてそれだけ!?今リアルに10秒くらい待ったよ!!」


 今日も朝から冴え渡るツッコミお疲れ様です、曽根山さん!でもなぁ、ツッコミセンスって単体だと光りにくいポテンシャルなんだよなぁ。残念。曽根山くんの今の良いところは、歌が上手いくらいです。


「ま、俺の扱きに耐えられるのは、中々見込みあんじゃねーの?その我慢強さは認めたい⋯⋯ところなんだが、それならなんで太っちゃったんだろうなぁ⋯⋯」


「一瞬普通に嬉しくて感動してたのに!天城くんって、僕のことを素直に褒めたら死ぬ呪いとかかけられてる!?」


 だってさぁ、こんだけ頑張れるやつがなんで太っちゃうかなあって。⋯⋯あ、そうか!


「違うわ、曽根山が我慢強いんじゃなくて、俺が乗せるの上手いんだよな。悪ぃ悪ぃ、やっぱ曽根山の良いところは歌が上手いことくらいだったわ!」


「全然嬉しくない気付きなんですけど!?」


 なんだかんだ、ツッコミながら自転車で坂を登れる曽根山。俺の鬼指導が効いてきたのかもしれんな。え?一週間で効くわけない?知ってるわ。


 それからも曽根山を弄りつつ、俺たちは朝礼ギリギリで学校に着くことに成功した。

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