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27話

 無事に諸田を連れて外に出た俺たちは、文字海の臨海公園まで歩いてきた。アニメリーゴーランドから徒歩2分の超近場である。


 この間も諸田は怒りが収まらないようで、水瀬先輩を強く睨んでいた。まあ俺がバラしちゃったのも悪いしなぁ⋯⋯。ここは一つ、事態収拾を手伝おう。


「では、まず水瀬先輩から順序立てて説明していただけますか?」


「⋯⋯わかった」


 そう言うと、水瀬先輩は話を始めた。


「諸田くんは放送部の部長で、私や姫華と同じアニメや漫画が好きなオタク。それだけなら何も問題ないの。問題は、彼が1年生だった姫華に酷いことをしたこと」


「酷いこと⋯⋯?」


「それは⋯⋯。ごめん、姫華のためにも言え——」

「ううん、気にしないでください、絢香先輩。嫌だったけど⋯⋯絢香先輩と鶫ちゃんのおかげで、私、元気になったので⋯⋯大丈夫、です」


 ひし、と抱き寄せ合う水瀬先輩と木崎。いと美しき友情かな。件の諸田は、みるみる顔が青ざめている。何かしら心当たりがあるのだろう、分かりやすいヤツめ。

 木崎には悪いことをしたな。今からあまり知られたくないことを、俺に知られてしまうのだろう。それを言わなければならない水瀬先輩も辛いはずだ。この後、俺が嫌われることも覚悟するしかないな。


 密かに覚悟を決める俺を置いて、水瀬先輩は諸田を睨みつけながら口を開いた。


「諸田くん、あなた姫華のジャージ⋯⋯盗んだわよね?」


「なっ!?ど、どこにそんな証拠があるって言うんだ!」


 最初に証拠の有無を聞くのは犯人しかいねーだろ⋯⋯俺は諸田のアホな行動に呆れてしまう。証拠があるのか無いのかは分からないが⋯⋯。


「天城くん、この動画を見て。これは諸田くんが2年生の時のクラスで撮影されたPikPokの映像よ」


 水瀬先輩は、若者の間で大流行しているショート動画投稿アプリ、PikPokの映像を俺に見せてきた。確かに、うちの制服を着た女生徒が踊っている映像が流れる。学校でPikPok撮影してるのバレたら生徒指導だったと思うのだが、やはり高校生は怖いもの知らずだよなぁと場違いな感想を抱く。急いで余計な思考を切り捨てて、目の前のPikPok動画に集中する。


 約15秒の動画を見たが、とても普通のPikPok動画だった。何が証拠なのだろう、と思っていると今度はその動画を拡大編集した動画を開いた。


 そこには、教室の後ろに備えられた棚に置かれている鞄から、ぺろんと飛び出たジャージが映し出されていた。そのジャージには『木崎』の文字。


 俺の生徒情報網では、うちの高校に苗字が木崎の人間は、目の前にいる木崎姫華しか居ない。途中で親の再婚等で苗字が変わっている人間の情報もあるため、この情報は確かだ。俺はわかっていながらも、諸田を追い詰めるために敢えて水瀬先輩に質問する。


「⋯⋯確認ですけど、このクラスに木崎って苗字の人はいたんですか?あと、この棚を使ってる生徒の苗字は⋯⋯?」


「⋯⋯この学校の3年生、去年なら2年生だけど。私たちの学年には『木崎』さんは存在しない。そして、この棚は当時の諸田くんが使っていた棚よ」


 水瀬先輩の言葉に心当たりがあるのだろう、水瀬先輩のスマホを取ろうと走り出す諸田。こっちが穏便に話し合いで決めてやろうと言っているのに、暴力で解決しようとしている。⋯⋯天城流男女平等天使拳の伝道者である俺だが、さすがに無抵抗で悪さをしていない相手に対しては暴力は振るわない。

 え?曽根山?曽根山はほら、ダイエットだから理由あるから良いんだよ。曽根山だし(最低)。


 知り合いの女の子が目の前の男に不当な暴力を受けようとしている。ひとまず諸田の行動を止める事にした。


「あだだだだだ!!」


「動くな、今は黙って話を聞いてろ」


 流れるように諸田の腕を掴むと、立ったまま動けなくなるように腕の間接をきめる。地面にキスさせても良いのだが、他の公園利用者に通報とかされたら困るので目立たずに拘束できるやり方を選んだ。

 あぁ⋯⋯諸田のベタベタした汗まみれの腕掴むの気持ち悪いぃ⋯⋯!話早く終わってくれよぉ⋯⋯!


 突然諸田が襲いかかってきた事に、水瀬先輩も木崎も驚き怯えているようだ。諸田はデブでノロマそうだが、デブということは体も大きい。嫌いな上に体の大きい相手に襲われるというのは、普通の女の子ではかなりの恐怖を感じるのではなかろうか。


「水瀬先輩、木崎さん!コイツは俺が動けないようにしとくから、続きを話してください」


「あ、ありがとう⋯⋯天城くん」


 水瀬先輩の「ありがとう」に乗っかって、木崎はコクコクと首を縦に振った。分かった!感謝は分かったから、早く証拠突きつけてぇ!なんかどんどんベタベタになってきてる!どんどん臭くなってるぅ!


 俺の願いが通じたのか、水瀬先輩は再度話を続けた。


「私はこれを他のクラスメイトに教えられて、急いで姫華に教えたわ。ちょうどジャージを隠されたんじゃ、と姫華が悩んでいたからね。イジメなのかな、とも悩んでいたの。普通、ジャージなんて落として失くさないから」


 高校に入ったばかりの1年生でジャージが無くなれば、誰かが盗んだ可能性が高いだろう。木崎は明るいキャラではない、俗に言う『陰キャ』とカテゴリされるタイプだ。そして木崎の性格的にイジメられてるのでは無いかと、そこまで悪い方向に考えるのも仕方ない。


 当時の事を思い出している木崎は、今にも泣き出しそうな顔をしている。


「私は諸田くんが盗んだ証拠を見せたわ。これで、イジメではないと安心して欲しかったから。

 でも違った。姫華は泣いたのよ。あの時の私は、姫華がイジメられてないって知って嬉しくて、姫華の気持ちを考えられないで教えてしまった。今でもあの時の私を殴って止めたいわ⋯⋯」


「違います!絢香先輩は何も悪くないです!とても親身になってくれて、泣いていた私を優しく抱きしめてくれた⋯⋯。鶫ちゃんも、私を慰めてくれました」


「姫華⋯⋯!」


 また抱き合う水瀬先輩と木崎。いと美しきかな、女の子同士の友情とは。

 一方俺は諸田と大密着中⋯⋯。神様、俺に攻撃系の恋の神業(ラブ・スキル)をくれませんか?具体的には、見えない手が沢山背中から生えて拘束できる、見えざるげふんげふん。

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