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ユークとマナののんびりカレット村生活 1

 ――はるか昔の話。

 世界には邪悪なる存在が満ちており、人々はそのおぞましき者達によって虐げられていた。

 奪われ、殺され、嘲笑され……。ありとあらゆる悪逆の対象とされた人は抗うことすらできずに死を待つような生き方をするより他なかった。

 悪夢のような毎日に世界中の人々が絶望しかけたその時、救世主が現れた。

 それは北方の地にて生まれたハーフエルフの少女。流れる水のような美しい輝きを放つ剣を手にした彼女は、邪悪なるもの達を次々と斬り伏せていった。

 ジルベールという名の魔剣は彼女の前に立ちふさがる全ての敵を切り裂き、同時に人々に希望を与えていった。

 長い戦いの末に彼女は全ての邪悪を滅し、生き残った人々からの感謝と褒美を得たのだった。






「お、綺麗な色になってるじゃないか」


 大人が十人肩車をしてもまだ越せないような高くそびえる樹木。それがいくつも立ち並ぶ森林の木の一本に登る少年の嬉しそうな声がする。

 横に伸びる太い枝の上によじ登った彼が手を伸ばした先にあるのは、深い青色をしてねじくれた不思議な形状をした木の実だった。

 螺旋のようなその実はキブの実と呼ばれる果実で、少年の暮らす村でよく採れるものだ。

 少年は気に生ったものの中から一際青い光沢を放つものをもぎ取り、軽く自分の服の端で拭いてからかじりつく。

 酸味と、ほのかな甘みのある果肉は彼が睨んでいた通り、よく熟れたキブの実であったらしく自分の見立ての正しさに感心しながら果汁たっぷりの実をどんどん食べていく。


「ユークぅ~~~~? 危ないよ~~~~!」


 実を食べ終え、次のキブの実の品定めに移ろうとしていた所でゆったりとした注意喚起が木の下から聞こえてくる。

 声に少年が視線を下へ向けると、木の根元には彼と同じくらいの歳の少女が困ったような顔で見上げてきていた。

 栗色の長髪の彼女は尖った耳をハの字に曲げ、少年の一挙手一投足が気になってならない様子だ。滑り落ちないか心配なのだろう。


「大丈夫だって! 今降りるよー!」


 ユークと呼ばれる少年はそんな彼女の挙動が見ていられなくなり、熟れたキブの実探しを中断して木を降りていく。

 大きく膝を曲げて跳び、すぐ隣の木の少し下方の枝めがけて着地。すぐに周囲を視て、また下の枝めがけて跳躍。

 それを繰り返して少女の頭上の枝へと着地をすると、どうだと言わんばかりに口角を上げる。


「ほら、大丈夫だっただろ?」

「あぶないよぉ……」


 少年が枝へ飛び移るたびに、少女の方はひっ、と小さく息を吸い込むように怯えていた。

 住み慣れた森の木々なので少年からすれば道を歩くのとなんら変わりないのだが、彼女からすればとても危ないことに見えて仕方がないのだ。

 ユーク、正しくはユークレスという名だが、彼は呆れたような声で幼馴染の彼女へ溜息を吐く。


「これくらいいつもやってるのに。それに落ちても大丈夫なのはマナだって知ってるだろ? おれはっ」

「ユーク!!!」


 喋っている途中でユークレスの足が枝から滑り、一回転して頭から森林の大地に叩きつけられてしまった。

 マナという名の幼馴染はその光景に大声を上げ、しかし咄嗟に体が動かせずに見ている事しかできなかった。

 高度的にはそこまでではないものの、普通の人間であれば大怪我をしてもおかしくない高さだ。マナは咄嗟に駆け寄る。


「……いや、だから平気、だって」


 またユークレスは呆れるように言いながら、飛ぶように起き上がりながらマナに苦笑いした。

 痩せ我慢のようにも聞こえるそれに、言われた張本人であるマナは俯きがちに返す。


「……ごめんねユークぅ。私動けなかった……」

「いいんだって。俺はカレット様の血を継いでるんだから」

「でもぉ……」


 気にしなくていいと返すユークレスに、マナは申し訳なさそうに言う。

 カレット、と言うのは二人の住む村であるカレット村を作りあげた女性の名だ。

 世界を救った英雄であり、その後に褒美として与えられた森林の中にハーフエルフのための村を築いたのだ。

 カレットの最愛の人と共に村は少しずつ発展していき、人口も増えていった。

 ちなみに血を継いでいるとは言ったが村のハーフエルフの中でユークレスだけがそのカレットの子孫、というわけではない。村に住む者はみな彼女の子孫なのだ。

 その中でもユークレスは特に濃く彼女の血を受け継いでいる、という話だ。

 彼の髪色は銀で、その肌は褐色である。これはカレットとその夫の容姿と同じ特徴であり、祖先の二人の要素をより多く持つ子は彼女らにそれだけ近い存在として村に歓迎される。

 ユークレスは村の歴史の中でも特に二人に近い容姿で、そのおかげか体も頑丈だし身体能力が高いのだ。

 そんな事情を知っているはずのマナだが、彼の言い分には納得できていないようだ。


「つ、次は守るからねぇ」

「守んなくていいって。俺はマナが怪我する所なんて見たくないんだから」

「え、そ……そうなんだぁ」


 ユークレスの言葉に、マナは嬉しそうな、それでいて恥ずかしそうにしながら頬を押さえる。赤くなったのを隠そうとしているらしい。


「じゃあ、絶対守らなきゃだねぇ……♡」

「なんでそうなるんだ……?」


 理解をしてくれたのかと思ったらなぜか決意を新たにされ、ユークレスは困惑するのだった。



「で、なんでマナは俺の所に来たんだ?」


 村へと帰りながら、ユークレスがマナへと聞く。

 彼は元々一人でキブの実を摂りに来たのでマナは連れてきていなかった。何か用事があったのだろう。村に戻っているのも彼女がそう促したからだ。

 一番ありえるのは、単に遊びたかっただけかもしれない。マナとユークレスは他に年の近い子供が村におらず、互いが一番気の合う遊び相手なのだ。

 特に彼女はかなり気が弱く、ユークレスにはべったりしているが大人や少し年の離れた村の者に対してはあまり進んで話したりもしないため、彼が唯一の友といってもいいのかもしれない。

 一人で遊ぶのがつまらなくなったのか、と思っていたユークレスだが、マナから返ってきたのは予想していなかった答えだ。


「村でちょっと困った事があったんだってぇ」

「困った事?」


 繰り返された言葉に、マナは小さく頷いた。

 カレット村は住民同士のいさかいなどのない平和な村だ。皆が皆互いの事を家族のように支え合い、助け合って生きている。

 そのため何かトラブルなどがおきた場合は協力して解決するのも珍しくはないが、ユークレスは自分が呼びつけられるような心当たりがない。

 自分が村から離れて木の実を食べていた間に何があったのだろう。ユークレスは予想してみたが、結局答えを出すより村まで戻ってくる方が早かった。

 森林の中を切り拓かれて作られたカレット村は獣除けのために背の高い柵が張られている。出入りのために二か所は柵は無く開け広げになっているものの、獣もそれほど近寄ってくることもないので見張りなどはいない。

 出入り口の片方はカレット村を領地として持つ王国へと続く道で、2人が通ったのはその反対側にあるキブの実の群生地行きの出入口である。

 村に戻ったユークレスは、そのままマナが案内するままについて行く。

 彼女は村に入ってすぐに左へ曲がり、薪を貯蔵しておくための小屋の前へと小走りで駆けていく。

 小屋の前にはハーフエルフの大人がおり、扉を小さく開けて難しそうな顔で中の様子を伺っていた。


「あれ、父さん? なにやってるの?」

「んっ。おお、ユークレスか! 来てくれて助かったぞ」


 意外そうなユークレスの声に振り返ったのは彼の父、ロクドールだった。息子の姿を見ると、嬉しそうに近寄ってくる。


「マナちゃんに誰か呼んで来てもらったんだが、お前が来てくれたなら心強いな」

「そりゃあ、マナに頼んだら俺になるでしょ」


 引っ込み思案なマナが村で気軽に声をかけられるのは両親と、それを除けばユークレスくらいだ。事あるごとに彼女はユークレスの所へやってくる。

 親と仲が悪いわけではないが、悩んでいる事や楽しかった事、マナはいろんな事を真っ先にユークレスと共有しようとする。

 それがどんな感情のもとで行われているのかは知らないが、少なくともユークレスは彼女が自分を頼ってくれるのが嬉しく、好きでもある。

 マナにもそれがなんとなく伝わっているのか、なおのことユークレスを頼ろうとする。今回呼ばれたのもそれゆえだろう。


「で、どうしたの?」

「うむ……、さっきまで冬に向けての薪割りをしていたんだがな。薪を運び込もうとしたら小屋の中から獣の鳴き声がしてな」


 あまり村の中に入り込まないはずの獣。出入り口に近い建物であるためかいつの間にか小屋に入り込んでしまったのだろうか。

 積極的にハーフエルフに襲い掛かるような事はしてこないだろうが、無闇に刺激してしまえばそんな事も言ってはいられず、怪我では済まない可能性もある。


「ここに住みつかれては薪をくべるにも貯めるにも一苦労だ。どうにかして追い払おうと思うんだが……やってくれるか?」

「やってくれるか? じゃないよ! 子供に頼む事じゃないだろ!!」

「それはそうかもだが、カレット様に近いお前ならなんとか……なりそうじゃないか?」

「う……。それはそうかも……。だけど、凶暴なやつだったら無理だよ?」

「もちろんだ。むしろおとなしい獣だったとしても見てくるだけでいいんだ。苦手な臭いの物を放り込んで追い払うにはそこだけ分かればいいからな」

「あー、そういう話だったんだ」


 てっきり、ユークレスは自分が獣をやっつけろとでも言われているのかと思ったが、ただ何がいるのかを確認してきてほしいと頼まれているのが分かって納得した。

 冷静に考えればロクドールは息子にそんな無茶を押し付ける男ではない。獣退治自体は彼か、もしくは他の大人たちと協力して行うのだろう。


「ゆ、ユークぅ、私が代わりに行こうかなぁ……?」

「だから平気だって。マナが行ったら絶対怪我するよ。見てくるくらいなら俺がやるよ」

「ありがとうな。夕食のチーズ、一つお前にやるからな」

「いいってこれくらいで。父さんの好物なんだから自分で食べなよ」


 そう言うと、明らかに及び腰になって小屋の扉に手を伸ばすマナに代わってユークレスは小屋に入った。

 とはいえ、流石にユークレスもちょっぴり怖いので慎重に、ゆっくりとだ。

 音をたてないように扉を開け、中の上下左右を確認してからそーっと体を侵入させていく。

 小屋の中にはうず高く薪が積まれており、カレット村ではこれを各家庭で暖炉にくべて冬場の暖をとっている。

 その薪が壁のように積まれた真下、室内のすみに何かがうずくまっているのがユークレスには見えた。


「あっ!」


 そこにいたのは雪のように白い毛玉。大人の頭ほどの大きさを持つ真ん丸の玉に、同じく白い毛の生えた四本の脚を持つ獣だった。

 その外見から「ユキワタゲ」と呼ばれていて、主に木などの葉を食べる草食の獣である。とても臆病で危険性もなく人前に姿を現さない事から、出会えると幸運が舞い込んでくるとも言われている。

 思わぬラッキーにユークレスはつい声を出したが、それに驚いてユキワタゲは立ち上がった。


「……しかも子供か……」


 立ち上がったユキワタゲはユークレスの頭がある位置と同じくらいの高さになった。

 成体のユキワタゲは立ち上がると大人も見上げるような高さまで成長する。ユークレスと変わらない程度なら、これはまだ幼体なのだろう。

 親とはぐれてしまったのだろうか。それがこんな小屋に迷い込んでしまった事にユークレスは悲しそうな顔をする。


「寂しかっただろうな……」


 小刻みに震える獣に慰めるような言葉をかけてやると、小屋の外からロクドールの声が飛んでくる。


「どうだ、ユークレス」


 父の言葉に、一度ユキワタゲに視線をやってから出口の方へと戻っていく。


「平気だったよ。いたのはユキワタゲで、わぁっ!?」

「ユークぅっ!?」


 危険がないことを伝えようとした時、ユークレスはいきなり突き飛ばされる。

 衝撃は背後からで、恐怖に耐えかねたのかユキワタゲが彼を押しのけて小屋から逃げ出してしまったのだ。


「おおっ!? 村の方へ行ってしまったぞ!」


 そのまま村の外へ向かってくれればよかったのだが、ユキワタゲは森の側ではなくカレット村の中を突っ切るような進路を取ってしまったらしい。

 ユキワタゲ自ら襲ってくるような危険はないが、今は暴走気味になっており、村の誰かがぶつかって怪我をするかもしれない。

 王国へと続く出入口の方へ逃げてしまったのも見過ごせない。ユキワタゲが生息しているのはキブの実が生える側なのだ。あのままではユキワタゲの親子が再開できなくなってしまうかもしれない。


「マナ! 父さん! 俺あいつを追っかけてくる!」

「ま、待ってよユークぅ~!」


 一刻を争う状況なので、ユークレスはマナの事は待たずにユキワタゲを追いかけていく。

 英雄カレットに近しいと言われるユークレスの跳躍は弾丸のようであり、既に見えなくなっていたとはいえ子供の獣を追うのに支障はなかった。

 王国への道、その出入口の手前に設けられた広場。ユキワタゲはそこへ突っ込もうとしていた。

 その進路上にはちょうど王国からやってきたらしき兵士がいる。鉄の鎧と兜で全身を覆った人間が二人、暴走するユキワタゲを視認したところだった。


「あぶな――」


 兵士たちが怪我をしないようにとユークレスが回避をさせるべく声を上げようとしたが、動いたのは彼らの方が先だった。


「――――ッ!!」


 迫り来るユキワタゲを見るや、兵士の一人が驚愕に目を見開き、腰に下げていた剣を引き抜くと、そのまま斬り上げた。

 足の三本がその一振りで両断され、立っていられなくなったユキワタゲが地面へと倒れ込み、そこにもう一人の兵士の刃が球状の体へと突きこまれる。


「な、なんだこいつは……!? 魔物か!?」

「初めて見たぞ。……あっ君、怪我はないか!?」


 数秒もがいていたユキワタゲの子供が動かなくなったのを確認すると、足を斬り飛ばした方の兵士がユークレスの存在に気付いて歩いてくる。


「な、んで……」


 最初の抜刀がされた時から、ユークレスは動けなくなっていた。目の前で行われた事が理解できず、兵士の一人が接近してきてもそちらへと視線をやることすらできない。

 様子がおかしい事には兵士の方も気付いたのか、心配するように彼の顔を覗き込んでくる。


「……どうかしたのか? 何か、今の魔物に襲われでも」

「なんでだよ……」

「え?」


 言葉を遮られ、ユークレスが何を言いたいのか分からない兵士は、感情をむき出しにしたユークレスに両肩を掴まれる。


「なんで殺したんだよ! 子供だったんだぞ!!」

「こ、子供? いや……しかし、魔物だろう? 生かしておいては何が起きるか……」

「魔物じゃない!! すごくおとなしい獣なんだぞ!!」

「そ、そう、なのか……?」


 自分が何をしたのか分かっていない態度の兵士にだんだんと怒りが湧いて、ユークレスは叫ぶようにまくし立てる。

 掴まれていた兵士は少し納得しかけたが、そこにユキワタゲに剣を突き刺した方の兵士が来てユークレスの頭に手を乗せた。


「すまなかったな。言いたい事は分かったさ。だが俺達も急にコイツが飛びかかってきたもんだから、安全なモノとは到底思えなくってな。殺しはしたが、不可抗力ってやつだ」

「ああ……そうだな。こんな不気味なものがすごい勢いで走ってきたんだ。可哀そうだが、おとなしくは見えないよな……」


 一応の謝罪を受けるが、それでユークレスの怒りが収まるわけでもない。第一、その言葉は自分ではなく殺してしまったユキワタゲに向けられるべきものだからだ。

 それどころか自分達が悪いわけでないという結論に持っていこうとさえしている。宥められるように頭を叩かれ、視線を下に落としたユークレスは彼らの握る剣に纏わりつく赤いものを見て、自然と両手を震わせながら力強く握り締めた。


「ユークレス! 無事か!」

「っ! 父、さん」


 嫌な考えが行動に出てしまう直前、父の叫ぶ声が聞こえてユークレスは先ほどまでの感情のあらぶりが掻き消される。振り返れば、ロクドールと一緒に少し遅れて走ってくるマナの姿が映る。

 ロクドールも息子の元まで駆け寄ると、その向こう側にいる王国兵二人を見、さらに少し先のユキワタゲの死骸を見やる。


「! あなた方、そこのユキワタゲを……?」


 責めるような視線を向けられ、兵士たちはばつが悪そうにしてロクドールに釈明し始めた。


「そう……なりますかね。いきなり目の前に現れたもので」

「今もこの子供に言われてたんだが、何分初めて見たもんだからバケモノに見えてしまって……」


 内容はさっき聴かされたものと大差ない。一時は平静を取り戻したユークレスだったが、やはり反省しているのか疑わしいその弁明に再び怒りが再燃しそうになる。

 が、そんな息子の心情を察してか、彼の肩には父の手がたしなめるように置かれ、そのまま兵士二人の前から下がらされたのだった。


「父さん……!!」

「お前はマナちゃんを見ていてやりなさい」


 そう言って、ようやく追いついたらしいマナの方に押しやられる。彼女はまだ何が起きているのか気付いていない様子で、息を切らしてはぁはぁしていた。


「ゆ、ユークぅ、ユキワタゲ、どうなったのぉ……?」


 死体が見えていないのかそんな事を聞いてくるマナを見て、流石にユークレスも怒りが鎮められる。

 自分の怒りよりも、ユキワタゲが殺されたと知ってショックを受けるマナの姿を見たくないという感情が勝ったのだ。

 できるだけマナの視界を隠しつつこの場から遠ざけるべく、ユークレスは彼女の頭に抱きつくようにして兵士から離れていく。


「ふぁぁぁ……!?♡ どうしたのぉユークぅ~!?」

「後は父さんがやるって。俺達は家でなんかしてろってさ」

「えぇ……♡ なにしてよっかぁ……♡」

「……マナ、なんか声が怖いんだけど」


 抱きつき返してきたマナの声色があまり聞かないものであると気付いたユークレスは、ちょっぴり不安を覚えながらも家の方にと歩いていく。

 その途中、父が兵士と話している内容も少しだけ聞こえた。


「広場を汚してしまったのは申し訳ない。この死体は帰る時にでも外へ捨ててきます」

「……いえ、その子は私の方で弔わせていただくので、あなた方はお触れにならないでいただいて構いません」

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