第2話 初見の敵
2878文字です。
指名依頼を受けた翌日、ヨーコとハマーは、
さっそく、朝から調査に向かうことにした。
先ずはダンジョン、エムエムの最奥に辿り着く必要がある。
説明しよう。(トミヤマさん風)
エムエムダンジョンとは、
いつまでも広がり続けることで有名な「ヨコハマ」ダンジョンに
派生したダンジョンである。
それ故、エムエムダンジョンに入るには、
まず、ヨコハマダンジョンに入らなければならないのだ。
比較的新しいダンジョンだけあって、規模は小さく、
その総距離は4km。
なお、別世界に、よく似た名前の地下鉄が存在するが、
横浜駅から終点、元町・中華街駅までの
わずか4km乗って220円の運賃は高めだ。
相互乗り入れしている、
東急東横線、渋谷ー横浜間は280円なのに……
さらに言えば、相互乗り入れしているのに、
渋谷ー元町・中華街間は500円になる。割引はない……
ちなみに全長18mの、動く白いダムはここからが一番近い。
マリンタワー方面へのエレベーターがおススメだ。
「コイツ動くぞ!」
ベテラン冒険者たる、
ヨーコとハマーにとっては通い慣れた仕事場に向かうようなもの。
今まで、どれだけの時間をこのダンジョンで過ごしたことか。
迷うこともなく、最奥に辿り着くなど、
朝の国道16号線のウメノキ交差点を通過するよりも簡単だ。
「確かに上に向かう穴が開いてるな。
前に来たときには無かった。
崩れてきた様子もない。不思議だぜ」
至極全うで説明的なセリフでハマーが感想を漏らすと、
考えるより行動するのが信条のヨーコが、
例によって分かりやすく、行動指針を口にする。
「ここで悩もうが、警戒しようが意味なんてねぇ。
オラ、進むゾ。ハマー、灯り出せ」
「そらそうだ」
同意しながらハマーは背負ったキッタムラ製リュックを下ろし、
中から、カンテラ付きヘルメットを取り出す。
説明しよう。
キッタムラとは、ヨコハマに本店を構える、
創業140年の老舗カバンメーカーである。
そして、キッタムラ製のカバンは無制限に収納することのできる、
魔法のカバンなのだ。故に、ヨコハマの冒険者は皆、
キッタムラ製のカバンを愛用しているのだ。
なお、別の世界に非常によく似た名称のカバンメーカーが
存在しているが、関係はまったくない。
別世界のカバンメーカーの製品には
無制限収納の魔法はかかっていない。
「お、ハマーのおニュウのリュックか。
それ、キッタムラだよな? いくらした?」
「なんだ、アネキも欲しいのか?
でもアネキとお揃いはカンベンだぞ。
買うなら違う形のにしてくれよな。
ちなみにこいつは8万イェンだ」
「そうか、わかった。
じゃあ、オメーのそのリュック寄越せや!」
ハマーのリュックを奪い取ろうと、ヨーコがにじり寄る。
「ふざっけんな! やらねーよっ!
アネキの腰についてるのだって、キッタムラ製だろうが!
ホントは俺だって、そっちが欲しかったんだっ。
マネしたって言われんが嫌だったから、これにしたんだ!
だいたい、それ、メンズだろうがっ!」
「あぁん? しょーがねぇだろう。
レディースじゃあ、オレの腰には回らねえんだから。
どうよ? この鍛え抜かれたオレの腹筋は?」
バッキバキである。デッコボコである。
戦う者としては実に立派である。
「わぁーったよ、すげぇよ。
そいつは認める。女の身体でよくそこまで鍛えたもんだ。
さすがはアネキだよ」
ふふんっと上機嫌に笑ったヨーコは上に向かう坂を上り始める。
リュック強奪の危機を回避したハマーが続く。
やがて、5階層ほど登っただろうか。
周囲の様子が一変する。
それまでのゴツゴツとした雰囲気がなくなり、
綺麗に整えられた場所に出たのだ。
大理石を磨いたような床に、おそらく木でできた壁。
頭上のカンテラが照らす光が届かぬほど高い天井。
ハマーの身長の20倍はあるだろう。
今いる場所の横幅でさえ、10倍ではきかないだろう。
前方は終わりが見えない。
「こりゃあ、巨人の住処ってのも、ウソじゃなさそうだな」
ハマーが床や壁を触って材質を確かめていると、
「ハマー。何か来る」
戦士の顔になったヨーコが静かに口にし、槍を構える。
ヨーコの警戒する視線を追ってハマーが向き直ると、
ハマーの頭上のカンテラの灯りが、
暗闇に潜む何者かの姿を浮かび上がらせる。
姿を見せたのは白い蟻の群れ。
大きさはヨーコと変わらない。
それがざっと100匹はいるだろうか。
カチカチカチカチカチカチッ
威嚇するような音が其処かしこから発生し、反響する。
蟻の群れとの距離はまだかなりある。
ハマーはカンテラ付きヘルメットを脱ぎ、足元に置く。
「さて、アネキよ。団体さんでのお出迎えらしいが、
どうすっかねぇ」
歓喜と皮肉の混じった声色でハマーが尋ねる。
「初見の相手だ。
どんな趣向で持て成してくれるのか知らないが、
訪ねてきたのはオレたちだからな。
ゴアイサツはこっちからしなきゃ、イカンよなぁ」
ヨーコは獰猛な笑顔で答える。
「そんじゃあ、まぁ、まずは手土産を披露すっか。
出でよ、マーリンタワー!」
ハマーが右足を強く踏み鳴らすと、
地面から、銀色の塔が生えてくる。
あっという間に、ハマーの倍ほどの高さにまで到達する。
その頂点からは、周囲を照らす光が迸る。
説明しよう。
マーリンタワーとは、古の魔導士マーリンが開発した、
光源を確保する魔法である。
術者が解除するまで、周囲を照らしてくれるのだ。
なお、別世界には、よく似た名称のタワーが存在する。
そのタワーは建設当初、灯台として稼働していたが、
今では灯台としては稼働していない。
しかも、現在はリニューアル工事中であり、
2022年4月、営業再開予定だ。
ちなみに、昔の色は紅白のおめでたい色だった。
かの有名な怪獣に壊されたりしていた。
「土産はお気に召したかよっ!
暗いとこに住んでんなら、珍しかろうぜ!」
「初手はオレがやる!
いくぞ、スパークリングトワイライトぉーー!」
ヨーコの周囲にいくつもの火球が生み出され、一拍置いて
風切り音を響かせて、蟻に向かって飛んでいく。
次から次へと発生しては飛んでいく。
蟻に激突した火球が爆発し、暗闇に鮮やかな花を咲かせる。
「ハッハーっ! たーまやーッ」
自分の攻撃が思った以上に効果を発揮し、
敵の前列を爆散させたことに、機嫌をよくするヨーコ。
「オラオラぁ、ドンドン燃えやがれ!
まだまだ行くぞ、オラァッ!」
ヨーコ本人は数えていないが、火球が2000発を超えた頃、
「オイオイ、ほとんど残ってねーじゃねぇか。
アネキよ。もういいいだろ。止めろ。
最後のハデなやつは撃つんじゃねーぞ。
俺たちゃ、アレの調査も仕事なんだからな」
「なんだとぅ。最後のスターマインを見なきゃあ、
花火は終われねぇじゃんかよ。とは言っても……
まぁ、しゃーねぇな。あとはオメー。やってきな」
もう自分の仕事は終わったと言わんばかりに、
ヨーコはやる気をなくし、ハマーに丸投げした。
とはいえ、蟻の群れの9割を爆散させたのだから、
十分な活躍ではある。
「残り10匹か。
火に弱いってのは分かった。
さてさて、硬さはどんなもんか。見てやろう」
右手を背中に回し、魔法のリュックから
剣を抜きながらハマーが前に出る。
ガチムチマッチョ、ハマーのターンが始まる!
あらゆる、事態を想定し
国より、地元優先だし
船こそ、持っていないが
通え、ばいいと思うよ
はい。読者を置いてけぼりにする筆者のお遊びです。
真面目なおことわり
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