第1話 ヨーコとハマー
さてさて、妙なことを始めてしまいました。
「くっだらねぇ~」と笑ってもらえれば南幸いです。
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ここはカナガワ国、冒険者ギルドヨコハマ支部の支部長室。
「お前たちに指名依頼を受けてもらいたい」
ギルド支部長はいつになく険しい表情で切り出した。
「あぁ、いいゼ。他ならぬ支部長の頼みじゃ、断れねぇ」
無駄に情にアツいヨーコは内容も聞かず即答した。
「アネキ、ちょっと待てよ!
内容も聞かずに受けるってのは俺はイヤだね。
報酬だって聞いてねぇんだぞ」
至極全うな意見でハマーは姉の暴走を止める。
「バカ言ってんじゃねぇゾ!
支部長自らの指名依頼を断るってのか!」
「断るとは言ってねぇだろうが!
話を全部聞いてから答えろっていってんだ!」
「あぁ、そういうことか。
なら最初からそう言えや。お前は反対なのかと思ったゼ」
何事もなかったかのように、しれっと答えるヨーコは
二カっと笑い、掴んでいた弟の肩パッドのベルトを離すと、
上機嫌に支部長に向き直る。
「まったく……
どうしてこうもセッカチなんだか……
すまねぇ、支部長。話を聞かせてくれ。
…… 支部長?」
「あ、終わったか? 今日は短いな。
じゃあ、本題に入るとするか」
いつもの二人の掛け合いの合間に
お茶を飲んで待っていた支部長は
秘蔵のお茶請けを出そうと開けていた、引き出しを閉めた。
「先日、新しいダンジョンが発見されてな。
そこの調査をしてきてほしい」
ギルド支部長の話は、
ヨコハマ支部が管理するダンジョン、「エムエム」の最奥に、
上方向に抜けられる穴が発見された。
その穴を抜けた先には、巨大な空間があったという。
発見した冒険者は、その空間に入った途端、
見たことのない虫型のモンスターに襲撃され、
まったく手も足も出せずに避難してきたという。
「で、そこの脅威度やら、その虫型モンスターとやらの調査を、
俺たちにして来いって話なのかい?
俺たちが行くほどとは思えねぇんだけどなぁ」
ハマーの意見はいつも至極全うである。
服装の趣味はダサイが、
ヨーコとハマーはベテランの冒険者。
ただ、周りからの評判は良いものの、
一流と呼ばれるには、イマイチ何かが足りていない。
あと少しの大きな実績と、
足りない何かが整えば一流と呼ばれるほどの実力者である。
ちなみに周りには必死に隠しているが、実は田舎の出身で、
服装などのセンスは壊滅的であった。
「バカやろうっ!
いいか、ハマーッ! 支部長がそんな程度の話を
わざわざオレたちに持ってくるわきゃぁねぇだろっ!
きっとなんか、スゲェ理由があるに決まってんじゃん!」
またしてもハマーのトゲだらけの肩パッドのベルトを掴み、
ただの思い付きにしか思えないが、
無駄にアツイ持論を熱弁する、姉ヨーコ。
支部長がそぉっと引き出しを開けようとした時、
「そうだろっ、支部長!
その縦穴の上にスゲェ秘密があるんだよなっ!」
「お、おぅ、そうだとも、ヨーコ。
実はだな、その空間に入った奴らが言うにはな、
巨人の住処じゃないかと思ったってんだよ」
一瞬、焦った様子を見せた支部長の言葉に、
ハマーが怪訝に問いかける。
「巨人だと? そいつらはいったい、何を見たって言うんだ?」
「本人も確認したわけじゃないと言っていたし、
巨大な虫型モンスターに追われながら見ただけらしいが、
とてつもなくデカい扉があったということだ。
取っ手の付いた扉に見えたと言っていた」
扉の取っ手を掴み、開け閉めする真似をする支部長。
「巨人の住処ねぇ……
まぁ、本当だとするなら、結構アブねぇかもしれねぇな」
「上等じゃねぇか!
オレたちにピッタリの仕事だろうよ。
オレの尊敬する格闘家、カン・ドリーさんも言ってるゼ。
『あんまり難しいことは考えないほうがいい。
単純に生きていったほうがいい』ってな」
行く気に満ちた、テッカテカの笑顔でヨーコは言う。
もう、こう言いだしたら話を聞かないことは、
ハマーには十分過ぎるほど分かっている。
それにハマーも行く気にはなっていたのだ。
ここで実績を上げれば、一流冒険者の仲間入りができる。
後輩だったはずの「ミナトミライーズ」は、
派手な活躍で、ヨコハマ支部の看板冒険者になっていたし、
最近では探索専門ながら、
まったくダメージなしで、お宝と情報をがっつり持ちかえる、
「ニゲハジ」のパーティーの活躍も目覚ましい。
戦闘力では負けていないが、
活躍の場と話題を持っていかれている。
生意気な後輩どもにベテランの実力を示すいい機会だ。
「あぁ、わかったぜ。
情報らしき物は特になし。行ってみてのお楽しみってこったな。
だったら確かに俺たち向きの仕事だな。
ようし、わかった!
この依頼、俺たち「ヨーコとハマー」が引き受けたぜ!」
ヨーコとハマーは、何故だかガッチリ手を組み、
お互いの決断を称賛しあい、お互いを誉めあいながら、
支部長の部屋を出ていった。
依頼の報酬などの詳しい話を聞かないままに……
「ま、あいつらなら無事に帰ってくるだろうから、
説明なんか無しで報酬を渡せばいいだろ。
それよりもだ……」
支部長にはやっと引き出しを開けられたことの方が
重要なことだと思えた。
引き出しには、彼の大好物、月餅がひとつだけ入っていた。
ヨーコ
大柄で筋肉質な身体に、真っ赤なクセのある髪を腰まで伸ばしている
長い髪がなければ、見た人のほぼ全員が女だとは思わない。
男より漢らしい性格で、頼まれたら断らない。
考えるより行動するが信条。
真っ赤なビキニアーマーと、黒いガントレット、レガース
くっきり割れた腹筋を惜しげもなく晒す。
ハマー
姉のヨーコを5割増しにしたガチムチマッチョ。
黒髪をモヒカンにしていて、クールだと思っている。
意外と細かい所があり、汚物は消毒したくなる性格。
黒の革パンと黒革ベストに、両肩にトゲトゲした肩パッドを装備。
ベストはもちろん前が開いたまま。(胸毛はない)
仕込んだネタへのツッコミ大歓迎です。ネタバレ可です。
くだらないネタが連なりそばだってます!
島々まで、もとい隅々までご堪能くださいね。
地元を応援したい気持ちはウソじゃないんですよ?
けっしてディスりたいわけじゃないんです。
真面目なおことわり
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