9.初恋と失恋[ジード視点]
今回に残酷な表現は入れてないですっ!
初めて会った時、令嬢と聞かされて冗談かと思った。
彼女は自分と同い歳で、まだ子供なのに王国騎士団の訓練に参加していた。
後から知ったのだが、騎士団長の娘なのだという。
立ち振る舞いや話し方は、男だと言われれば信じてしまうほど令嬢とは掛け離れていた。
当時七歳で、殿下と共にお茶会に顔を出し挨拶をした時に見てきた令嬢とは違って仲良くしたいと思った。
俺が騎士団の訓練に参加するようになって、メリオラと話す機会が出来た。何度も話すうちにいつの間にか友人になっていた。話す内容は剣についてばかりだったが、たまに見せる騎士では無い令嬢のような顔に俺はドキドキしていた。
友人として話していたが、俺の中には友人以外の特別な感情もあったのだと思う。
「最近話してる令嬢はどういう子なんだい?」
殿下に興味を持たれた時は焦った。
「騎士団長の娘だそうです。令嬢かと言われればなんとも。
騎士家系の影響なのかはわかりませんが、他の令嬢とは違う気がします。」
「君がそんな評価をするなんて珍しいね。ほとんどの令嬢を軽蔑していたのに。」
そう言われると恥ずかしくて俯いてしまう。耳が赤くなるのが自分でも分かった。
「これは早く手を打たなくてはね…」
そう呟いた殿下の声は俺の耳には届かなかった。
半年後、12歳の時殿下とメリオラは婚約した。
まだ公にしない形らしく、殿下から直接知らされた。
メリオラは婚約相手が殿下と知らされていないらしいが、婚約の後から更に剣を打ち込むようになっていた。
理由を聞けば、「婚約者を護れる力が欲しいから」ということらしい。
「ごめんねジード。君の彼女への気持ちは薄々感じていたから分かっていた。でも君が知るずっと前から僕は彼女の事が好きだったんだ。ずっと昔から。だから先手をうたせてもらった。僕は君の初恋の相手を奪ってしまった。権利でね。恨まれても構わない。」
そう言う殿下の顔は悲しそうだった。
不思議だ。殿下は俺がメリオラと会う前から会ったことがあったのだろうか?
殿下には敵わない。地位も才能も。
俺は殿下を応援した。そこで俺の初恋は終わった
筈だった
失恋から4年。彼女への想いも無くなったと思っていたが、戦争に向かっている途中の俺の心は嬉しいと思ってしまっていた。同じ馬車の中に座ると、リオラに小声で話しかけていた。
「メリオラ。一昨日の昼時間ギリギリまで何をしていたんだ?」
話す内容が思いつかず先日のことを聞いてみる。
メリオラは戸惑ったような素振りをした後答えた。
「お話しを、しておりました。マリアにした事はやりすぎだと怒られてしまったのです。」
動揺しているメリオラを見て、他にも何かあったんだろうなと思うと、胸の辺りがチクリとして、締め付けられるように痛かった。
「メリオラは殿下の事をどう思ってるんだ?」
俺はこの質問をした事を後悔した。
明らかに挙動不審になって顔を赤くし、
「お、お慕いしております。守りたいとも…」
「それじゃまるで騎士としてじゃねぇか」
と、揶揄ってみたが、メリオラの顔を見ればそんな意味で無い事は明確だった。
俺は改めて、失恋を自覚したのだ。
「…ジードは、誰か思う相手はいないのですか?」
あの会話の後に「お前だ」なんて言えなかった。
「特に誰も。メリオラ以外の女と話したことも無いからな。」
「それはまるで私しかいないと言っているみたいではないですか。」
少し匂わした言い方の方がメリオラにも伝わったようでケラケラ笑いながら指摘してくる。
無言で否定しない俺に、メリオラは笑うのをやめて気まずそうにしてくる。
「ステラ嬢なんてどうですか?」なんてお勧めしてくるしまつだ。
「ステラ嬢はどうも受け入れられそうに無い。」
何かは分からないが怪しいと思ってしまうのだ。裏がありそうだ。と、
「じゃあマリアは?」
「…。」
マリア嬢はメリオラと同様に令嬢らしくない。
だがそれは平民だからだと思っている。
メリオラは目を細めながら
「…ふーん。ジードの好みが分かった気がします。」
と言った。
何で今の会話で分かるのか、ジードにはわからなかった。
間に合ったァァ…
と、投稿4分前に入力が終わったことに達成感。
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