7.乙女ゲームの余興
途中でステラ視点、ジード視点が入ります。
いつもよりほんのちょっと長め( ⠀´ ꒳ ` )=3 のはず…(?)
「ステラ嬢。お話ししたい事があるので少し時間を頂けませんか」
昼の授業が終わった後、メリオラはステラに話しかけた。(嬢と付けたのは騎士モードだからだ)
「はい。丁度私もお話ししたい事がありましたので。」
ついて来るよう合図をすると、ステラがメリオラの後ろを来る。カインとジードもついて来ようとしたが断り(流石に聞かせることはできないからだ。)私達はその場を後にした。
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「(かくかくしかじか)という事がありましたので。彼女が、ステラ嬢の言うひろいんなのですか?」
ステラは確信した様に答える。
「そうですね。ゲームでの彼女のルックスと完全に一致していますし間違いないです。入学式の直後に転校して来たのは、おそらく、彼女も転生者でゲームを知っている影響でしょう。」
メリオラは、ふと、気になった事を聞いた。
「ステラ嬢はなぜ、私にこの事を教えてくださったのですか?」
ステラは少し驚いたような顔をした後、「ふふっ」と笑って答えた。
「メリオラ様がゲームにおいて悪役令嬢の立場だったのはお話ししましたよね?かっこよく、それでいてカイン様の事を一途に想っていて、想いすぎるあまり空回りしてしまい追放される。そういった面からか、メリオラ様はプレイヤーからの人気が高かったのです。そして私もメリオラ様のファンの一人でした。ですからメリオラ様には追放されて欲しくなかったのです。それに、私も追放されたくない。味方を増やしたかったのもありますね。」
そう言ってステラは はにかんだ。
メリオラは嬉しくなった。
カインはもちろん。ステラまで。自分の事を守ろうとしてくれている方がいる。その事実に。
***
私はメリオラ様の話を聞いて確信した。
誰も気づいていない。おそらく私とヒロインであるマリアだけが知っている事。
メリオラ様には話していない裏ルート。
乙女ゲームの表ルートは、[カイン][ジード][ラニス][ハーレム]のエンドのどれか。そして全てのルートをクリアした人だけに公開される裏ルート。それが[メリオラ]だったのだ。
メリオラルートはまず、入学式の次の日にヒロインが転校する。そしてその日にジード、メリオラの前でカインに告白するのだ。その後、ヒロインはカインにアピールし、それを見て焦ったメリオラはヒロインをカインに近付かせないよう引き剥がす。数々の出来事が重なりメリオラは少しずつカインとの関わりが薄れていく。代わりにマリアと関わる内にマリアの純粋な心に惹かれ最終的に駆け落ちエンド。
流れ的にこのルートで確定だ。
そしてこのルートの場合、ステラにもチャンスがあった。メリオラと距離ができて落ち込んでいるカインをステラが励ます事から始まり、話をする内に2人は惹かれ合いステラとカインは結ばれる。
(この後メリオラは学園を休み戦争に参加する。そこからゲームの始まりですわ。)
ステラはほくそ笑んだ。
(私は嘘は言ってませんもの。)
騎士を騙すのは簡単。嘘は言わずに真実の全てを話さない。
このルートで追放される人はいない。
追放されない安心と、王子の妃になる未来にステラは笑うのだった。
***
部屋へ戻ると、侍女のライナから手紙を渡された。
差出人はお父様から。
内容を読んだ私は慌てて飛び出し公爵邸へと急ぐのだった。
「お父様!戦争へ参加するとはどうゆう事ですか!?」
私は焦るあまり挨拶もノックも忘れてお父様の部屋へ飛び込んだ。
「メリオラか。手紙に書いた通りだ。王城の魔法練にてアンナが魔法の訓練をしていた時に王妃様が入って来てな、怪我を負わせてしまったんだ。王妃様は自分が悪いのだから罪は問わないと言ってくださったが、それだとどうしても納得しない者達も出てくる。そのため戦争へ参加し、罪を償うと意思表示するんだ。」
アンナとはお母様の事だ。
「戦争の相手は?ここ十数年戦争は無かったと聞いています。この国自ら戦争を仕掛けることは無いのではなかったのですか?」
私の問いに対し、
「隣国のカリオンだ。こちらへ戦争を仕掛ける準備をしていると報告があってな。」
「それでも、徴兵はお母様だけのはずです!お父様まで失いたくありません。」
「私は騎士団長だ。参加する理由などこれで充分。それに、私が参加すればその分早く終わらせることが出来る。」
お父様は、死なないとは言わなかった。死なない保障はないのだ。
「それなら私も参加します。少なくとも私は、剣の腕ならお母様よりも強い。経験は少ないですが戦力にはなれます。」
お父様は悩んだ後、「お前がそう言うなら」と、しぶしぶ承諾してくれた。
私は家族のためであれば意見を曲げない。それを知ってくれているからこそ、説得は無駄だと判断したのだろう。
「ありがとうございます。」
「戦争の準備のため明後日には城へ上がる。一度学校へ戻って準備してきなさい。」
「はい。」
戦争に必要な物は学園にはない。準備というのはみんなへの挨拶の事だろう。
メリオラはお父様に感謝し、公爵邸を後にした。
**
時は遡りメリオラとステラがわかれた頃、ジードもまた戦争についてで家へと戻っていた。
ジードはグラヴィス侯爵家の長男で、父は王国騎士団の副団長。母は現在病気のため寝込んでいるが、優秀な魔法剣士として有名だった。
「戻ったかジード。」
ジードが戻ってすぐ、父が出てきた。
ジードは先に話を切り出す。
「父上の代わりに戦争するというのはわかりました。母上も寝込んでいて、弟達の世話だって侍女や執事だけではどうにもならないこともあります。領地もありますし、王城を護るために残らなくてはいけませんから。私が代わりに行くのは妥当の判断でしょう。」
「ジード…」
「ですが…。私は経験も無ければ剣の腕もまだまだ。メリオラにも殿下にも敵わない。私が行っても足を引っ張ってしまう恐れがあります。」
ジードは一番懸念していた事を口にした。認めたくなかった。けど認めなければいけない事実。
「ジード。お前には魔法がある。今では戦っていた頃のミーナを上回る実力だ。」
「母上を…」
「明後日には王城へ上がる。それまでに準備を済ませておけ。」
明後日とは急過ぎる。だが有無を言わさぬ父の言葉に、ジードは頷き学園へと戻るのだった。
**
翌日。
メリオラがカインと教室へ入ると、既にジードが登校していた。ステラ、マリアが登校してくるのを待ち、4人を集めた。
「皆様に話さなくてはいけない事があります。」
「…皆に話がある。」
メリオラとジードが言ったのは同時だった。
先に話せ。と、ジードが譲る。
「私はしばらく学園を休みます。戦争なのでいつ戻れるかはわかりません。今日皆様には別れを言いに来たのです。明日には王城へ上がりますので」
それを聞いてカインは椅子を倒し立ち上がった。ステラとマリアも驚いた顔をしている。
「そんな、急過ぎる!まだ学園生、行く必要は無いはずだ。」
「私はお父様とお母様を助けたい。必ず国へ貢献致します。ですから、私の我儘をどうかお許しください。」
私の言葉の後に、しばらく無言だったジードが話し始めた。
「実は、俺が話そうとしたのもその件についてだ。俺は父に代わり戦争へ参加する。そのための別れを言おうと思っていたんだ。」
「ジードまで!?」
私はだいたいそんなとこだろうと予測していた。
マリアは耐えきれなくなったのか教室を出て行ってしまう。
「メリオラ様…。私はメリオラ様が必ず戻って来ると信じています。ですから、カリオン王国になんか負けないでくださいね。」
「ステラ…。ありがとうございます。」
メリオラはステラの言葉に違和感を覚える。が、何かわからないため気の所為だろうと判断した。
「ジード様もですよ。」
「あ、ああ。ありがとう。」
ステラに言われてジードも返事をする。
「…リオ、ジード、無理はするなよ。私も行けるなら行きたいのだが、リオよりも剣が上手い訳でもジードのように魔法の才能がある訳でもない。私が行っても役に立てる事は少ない。だが、必ず戻って来てくれ。必ずだ。」
ステラに続いてカインも躊躇いながらではあるが応援してくれた。
「ありがとうございます。」
メリオラは、自分の意図を汲んでくれたカインに感情した。
メリオラとジードは先生に許可を貰い、授業を休むと剣術と魔法の練習をすることにした。
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「魔法は外の魔素を体に取り込み神経を通らせて自分の魔力と共に手へと集結させる。そうすれば自分の魔力を節約できて尚且つ、強い威力の魔法が打てる。」
ジードの説明はわかりやすく、メリオラの魔法は目に見えるほど上達した。
「ジード。剣を振り下ろす時は力を入れるな。剣の重みに任せて真っ直ぐ降ろすことに意識をしろ。体力をできる限り温存しつつ剣の精度を高めるんだ。」
ジードは吸収が早い。教えるとすぐに実行して見せる姿にメリオラは感嘆した。
一日中訓練をして相当腕が上がった。
有意義な時間だったと思うメリオラは、ジードと別れ、公爵邸へと帰るのだった。
乙女ゲームのプロローグですね(* 'ᵕ' )
タイトルはメリオラとステラの思ったことですが捉え方には少々差があるようで…
これから視点がころころ変わります。ガンバロウ
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