3.初めて殿下とお会いします。
かけたぁぁ!
今日から授業が始まる。
高鳴る胸の音を落ち着かせることができず早く起きてしまったメリオラは、支度をすると早々に学校へと向かった。
寮から校舎までは少ししか離れていないし、校内にあるため馬車を使わない。
実を言うと、馬車よりも歩く方が好きなので気分が良かったりする。
メリオラは公爵家の令嬢だが、貴族の令嬢かと言うとらしくはない。
父も母も騎士でその影響か、令嬢というよりも麗人らしかった。どちらかと言うと男装麗人に近い。つまりかっこいいのである。
168cmと女性にしては高い背丈。細すぎず大きすぎず、バランスの取れた体型。銀色の真っ直ぐ伸びた髪を後ろで一つにまとめ、少し吊り目の瞳は夜の海ような紺色で、光が入ると鮮やかな青色に見える。髪と同じ銀色のまつ毛は長く、整った顔をより美しく際立たせている。
殿下が来る予定の時刻より相当早く着いてしまったが、することも無いため待つ事にした。
(あれ?予定より早いのだけれど…。)
殿下がこちらへ向かって来るのが見えてので、身なりを整え殿下の方へと向かう。
メリオラは殿下の前で立ち止まり、カーテシーをする。
「お初に御目にかかります。私はローゼル公爵家の娘、メリオラと申します。お父様から、殿下と共に過ごすように。と、仰せつかっております。」
「私はカイン・ウォールズ。どうぞカインとお呼びください。お会いするのは初めてですが、共に歩む者同士。そうかしこまらないでくださると助かります。」
「御心遣いありがとうございます。殿下。」
第一王子の彼の言葉を貰い、傍にいる事を許された事にメリオラは安堵した。例えお父様からの命令でも、許されなければ傍での護衛ができないのだから。
「カインでいいよ。殿下はいらない。リオは婚約者なのだから敬語も無しだ。それに、この学園では身分など関係なく対等に接して欲しい。と、入学式の挨拶で言ったはずなのだが…?」
そうなのか。入学式は半分意識が飛んでいて聞いてなかった。
…ん?こんやくしゃ?コンヤクシャ…婚やk…この人今婚約者って言った?
私の婚約者はローズ様では?でも本当の名前知らないし…カインがローズ様?ってこと…?
え…?ローズ様って可愛い方を想像して…
「リオ。行きますよ。」
「あ、はい。」
手を差し出せれたのでその手にメリオラは自分の手を重ねた。
カインにエスコートされて校内へと歩いて行く。
カインは聞いていたよりも、もっと綺麗だった。金髪に映えるエメラルドグリーンの瞳はよく見たら右目だけ黄色が混じっている。細いのに軸はしっかりとしていて、思ったよりも鍛えているようだ。着痩せするタイプなのだろう。背は私よりも15cmくらい高い。私の理想そのままじゃないか…。
「って、そうじゃない!」
危ない。流されるところだった。
「殿下が婚約者?私の文通相手のローズ様?」
カインは振り向くと少し不機嫌そうな顔をした。
「カイン」
「……え?」
「カインと呼ぶように言ったはずなんだけど。」
え、そこ?
「カイ..ン…?」
「どうしたの?」
カインは笑顔で返事をする。
「え、何この生き物!可愛い!!」
殿下がローズ様なのですか!?
「……思ってる事と言ってる事が逆になってない?」
カインは恥ずかしそうに言う。
あぁ、照れた姿も可愛い。
「カイン…が、ローズ様なの…?」
「ああ。そうだよ。もしかして聞いてなかったのかい?」
「はい。聞いても答えてくださらなくて。」
「そうか…。君には申し訳ない事をしたと思っている。本当なら直接会って伝えるべきだったのに。手紙で気持ちを伝えてしまって。というかリオは手紙とキャラ違いすぎではないか?いや、そこも含めてリオの事を…」
もごもごもご。最後の方が聞き取れませんでした。
「普段の私は、騎士として振舞っているのです。こんな見た目ですし、見た目に沿うように、と…。」
「つまり僕にだけ見せてくださっているのですね。嬉しいです。」
「はわゎ、可愛い。」
「僕以外には見せたらダメですから。」
「はい!喜んで!」
やっぱりローズ様は可愛い!つまりカインが可愛い!私の目に狂いは無かった!
耳まで赤く染めるカインを見て、私は守りたいと思ったのだった。
ガンバッタヨ…
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