21-③
授業前___
(ズボンを履くのは戦争の時以来かしら)
下ろしていた髪を後ろで一つにまとめ、化粧も薄い物にかえる。
男性物の服に着替え、念の為に発生練習をする。
最近は少し高い落ち着いた声で話していたので低い声が出るか心配だったが、問題なさそうだ。
準備を終えた私は、マリア達より少し遅れてホールに入った。
私がホールへ入った時の周りの令嬢の反応は様々だ。
どれも好印象のようで、悪い感情は感じない。
私だと気がついた者は半数のようだ。
そんな令嬢達の反応を見るのは楽しいと感じ思わず笑う。(もちろん、声には出さない。)
私はマリア達に合流し、授業の開始を待った。
令嬢も令息も、いつもより騒がしい。
「お静かに!本日からメリオラ様は男性役を務めることになりました。見学者は出ませんので、皆さんは、いつも通りペアを組んでください。」
先生の声に、騒々しかったホールは静かになり、変わりに小声が聞こえてくる。
私が男性役をする。これが、昨日先生に提案した事。
先生とルクの反応はあまり良いものではなかったが、私達が踊れずに終わるという状況が思わしくないのは確かなようで、渋々だが承諾してくれたのだ。
音楽が始まり、私はマリアの方へ体を向ける。
必要なのは、令嬢達に私と踊りたいという感情を持たせる事。令息達にマリアと踊りたいと思わせる事。注目を集める事。
手を差し出し、少し姿勢を下げ、目線だけ上げるとマリアを見つめる。
久々の低い声を意識して声を出す
「ひと時の間、貴女を独り占めにすることを、お許し願えますか?」
マリアは頬を赤らめさせつつ、完璧な淑女の礼をとり私に手を重ねると、
「謹んでお受け致します。」
と、答えた。
重ねられた手に私は唇を落とす。
「___っ!!」
反応したのは、周りの令嬢達である。
私はマリアの手を引きホールの中心へと移動する。
1度顔を見て頷き合い、音楽に合わせて私達は踊り始めた。
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