10.想い人(カイン視点)
遅れてすみませんンンンんンンン( ´:ω:` )
王道が書いてみたかったのです。今日の内容はそんな感じ。
ステラ嬢と行動をするようになって一週間が経った。
今のところ怪しい動きは無い。
昼休みになり、ステラ嬢と共に学食へ向かう。
僕は学園にいる期間は自室で食べる予定だったのだが、ステラ嬢がどうしてもと言うので何か掴めるかもしれないと思い承諾した。
食堂へ入ると何人かの令嬢がステラ嬢を睨む。
ステラ嬢は俯いた。料理を選びそれを受け取ると席に着く。ステラ嬢と行動するようになってから知ったのだが、彼女は嫌がらせを受けているようだった。
食堂は私や人目が多いからか睨むだけで終わるが、僕がいない時に行動が少々過激になっているようだった。
それをわかってから僕は、なるべく共に行動する時間を増やすようになっていた。
「大丈夫か?」
僕は問いかける。
「はい。殿下が一緒にいてくださるので怖くありません。」
「…そうか。」
僕は昼食を食べ終えると、一度自室へ戻る事にした。
そして当然のようにステラ嬢も付いてくる。彼女はいつも付いてくる。
朝寮の前で待っていて、帰りは僕の自室まで付いてくる。
部屋へ入るとそれに続いて入ってくる。
「ステラ嬢。流石にずっと一緒では誤解を招く」
注意に対し彼女は
「誤解をしてくださるのならそれで構わないと思っております。」
僕に気があると伝える言葉。
行動を共にしてもなんの情報も得られないのならと、直接聞いてみることにした。
「ずっと考えていたんだけど、リオに一緒に居るよう言われたのは嘘だよね?」
「え?そんなことないですよ?」
「本当の事を話せ。何の目的でそんな嘘をついた?」
彼女は躊躇う素振りをした後、話し始めた。
「そ、それは…。……メリオラ様の為と思ったのです。メリオラ様は可愛い方が好きです。守りたいと思える方が。殿下は…嫌いではないけれど好きか聞かれると答えられないとおっしゃります。
メリオラ様は殿下の気持ちに困っていらっしゃいました。ですから、私が殿下の気を引こうと、殿下の心をメリオラ様からそらそうと、そう思ったのです。勝手な事をしてメリオラ様が喜ばれることでは無いとわかっております。
ですが、私は…。私は殿下事が好きなのです。メリオラ様と同じかそれ以上に。私はメリオラ様が戦争に行かれて、チャンスだと思ってしまいました。こんな事ダメだとわかってました。でも、私は…っ」
そこまで言うとステラ嬢は走って出て行ってしまった。
話を聞いて僕は、考えてもいなかった事に今更気がついた。
(リオは婚約者として隣にいてくれる。が、リオの意思ではないのではないか。
婚約したのだって、リオの中では文通相手のローズとだった。それに、王家からの婚約の申し出だから断れなかったのでは?
私が迫った時も困っていた。口付けを許可してくれたのは命令と判断したのだとしたら?あの時離れようとしたのも恥ずかしく思ったからでは無く嫌だったからだとしたら?)
考えれば考えるほどマイナスな考えが出てくる。
(もし、リオが私の事が好きではないとしたら…?)
考える事が嫌になった僕は、午後の授業が始まるので教室に戻った。
教室に入ってきたカインの様子を見てステラの口角が上がった事に気づく者はいなかった。
〜〜〜〜
カインには、カインとしての記憶以外の記憶を持っていた。
勇者としての能力が開花して、家族全員が神殿に招かれた。
神殿に入ってすぐ、僕以外が捕らえられた。僕は何が起こったのかわからなかった。
家族は塔に監禁され、家族を監禁した神官達は言った。
「北の魔王を倒せ。魔王を殺せるのは勇者だけ。魔王を倒せば家族の所へ行かせてやろう。それまで会うことは禁じる。」
魔王とは人間を脅やかす悪い存在なのだと聞いた。
僕は家族を助けるため、魔王城へと向かった。
戦いながら突き進み、とうとう魔王城にたどり着いた。
魔王を見て僕は驚く。魔王と呼ばれる少女は、髪も目も真っ黒で、とても綺麗だった。
少女の話では、魔力が高ければ高いほど黒く、黒い者が魔王と言われて捨てられるのだそうだ。少女とは色々な話をした。自分の事も話したし、彼女の事も聞いた。
少女は魂の色が見えると言った。
見方さえ知れば誰でも見えるらしく、それを教えてくれて僕にも見えるようになった。
少女の魂は、白く輝いていてとても綺麗だった。
魂は決して同じ色が無いのだそうだ。
少女は最後に言った。
「勇者様。私を殺してください。私のせいであなたの人生を狂わせてしまった。私を殺して、勇者様の家族を助けてください。」
「君は悪い事などしていない!君の人生だって、アイツらのせいで狂ったのだろう?君が死ぬ必要は…っ」
「勇者様。私は魔王を辞めたいのです。」
「でも、僕は、」
「大丈夫。先程も話しましたが、魂は廻っているのです。
…勇者様、最後の私のお願いを聞いてくださいますか?」
「……。」
「私、生まれ変わってもあなたと恋をしたいです。」
僕の中で込み上げる熱い何かを感じた。
少女は僕を見上げる。
「ダメですか…?」
「…ダメ…じゃない。」
僕は泣きながら答えていた。
「生まれ変わったら君を見つけるよ。絶対に。そしてまた君に恋をする。」
少女はそれを聞いて微笑んだ。
「ありがとう。これで楽になれる。」
そう言って少女は、僕の剣を持っている方の手を取ると、持ち上げて少女自らの腹部に僕の剣を突き刺した。
少女は崩れ落ち、口を動かした。
声は聞こえなかったが何を言ったのかは分かった。
『また会おうね』
彼女はそう言っていた。
少女の最期を見届けた僕は国へ戻った。
神殿へ行き報告をする。
「魔王を倒して来ました。」
「…まさか本当に倒して来るとはな」
神官達はどうでもいいかのように笑っていた。
僕は言う。
「早く家族を返してください。それが約束の筈です」
「約束?私は返すなど一言も言ってないぞ。それに、お前の家族はもうどこにもいないしな。」
神官達は大声で笑う
(…笑った?どこに笑う要素が…?)
「いないってどういう事だ?殺したのか?お前らは僕の家族を殺したのか」
僕は声を荒らげた。
神官達は愚かな勇者を見て嘲笑う。
僕は叫びながら剣を抜き切りかかった。
「異端者を殺せ。」
神官の言葉ですぐに囲まれる。
(…大切な家族はもういない。)
「安心しろ。約束通り『家族の元へ行かせてやる』から。」
その時初めて僕は神官の言葉の意味を理解した。
振り下ろされる剣がスローモーションのように近づいてくる。
「お前らの方が魔王じゃねぇか」
呟いてすぐ視界が暗転する。
冷たい神殿の中で呟いた彼の声は、彼を斬る音でかき消された。
これがカインの中にある『一番古い記憶』。
〜〜〜〜
「…今度こそ、結ばれる事が出来ると思ったんだ。」
カインは呟いていた。
何度転生しても結ばれる事ができなかった。
運命とは残酷で、互いに心が通じあっても許されることはなかった。
カインは己を責めた自分勝手な想いが先走って彼女に好かれる努力をしていなかった己を。
(こんな勝手じゃあ、避けられるのが当然だよな。)
カインはメリオラが好きだった。魂とはきっかけに過ぎない。どんなに変わっても、その度に恋をした。
だがまた結ばれる事は無い。
メリオラを自分に縛っても彼女が苦しむだけだ。
(次会った時、彼女を自由にする意を伝えよう。)
カインは心に決めるのだった。
今のところ毎日投稿はしますから…
私蒸発しませんよ…??
よろしければブックマーク、評価、感想などお願いします!励みになります!




