『ナイト・ガーデン』
ローザはにこやかに手を合わせ、注目を集めた。
「でも、今日は体力を回復するのが先決よ。
ファインが前に使ってた部屋が空室になってるから、二人でその部屋を使いなさい。
ベッドは一つ備えてあるけど布団はないから、納戸から出したり部屋を整えないといけないわ。その後は夕飯までゆっくりしてて良いわよ。
その時に子供達の紹介もしましょうね。」
話は終わりだとローザは優雅に席を立つ。
「あの、シスター・ローザ、お話と髪の毛乾かしてくれて有難う御座いました、気持ちよかったです!」
私は急いで立ち上がりペコッと頭を下げる。
ローザは相好を崩してくすくす笑う。
「どういたしまして。ではまたね。」
先に部屋をでたローザを見送っていたらファインが私の頭に手を置きポンポンと撫でる。
「部屋に案内するな、あと途中に納戸があるからそこから布団を借りよう。手伝ってくれるか?」
「もちろん!」
ファインは私の手を取り案内するよう歩き出す。
教会と併設されて作られた長屋は木造で長い廊下を二人で歩いた。今の時間は誰も居ないみたいで静かだ。廊下の小さな木枠の窓から光が差し薄明るい。
作りは違うけど、お寺の住居というか戦後の学校みたいな雰囲気だ。
少し歩くと扉があり、そこが納戸のようでファインが開ける。客用もあるのか余分にある布団を掴み、今度はファインの部屋だったところへ向かった。
因みに頼まれたお手伝いは扉の開け閉めだった。
部屋は六畳くらいの部屋で片隅に空のベッドが一つ置いてある。部屋にはそれだけで他に調度品はない。
部屋には木枠の格子窓がついてて、横にスライドすると隙間を開けたり閉めたり出来る作りのやつだ。
ちゃんと風を通してたみたいでスッキリした空気になっている。日当たりも良く明るい雰囲気なのもいい。
初めて一人暮らしの引っ越しした何もない部屋を思い出す。今思うとヤベェ部屋のまま死んだな。と心の隅で思った。
「今日から此処が俺達の部屋だ。解らないことあったら何でも聞いてな。」
そういえばさっき聞き流してたけど「二人で部屋を使ってね」と言ってた。ファインと相部屋?
年頃の異性と同じ部屋で良いんだろうか?
いや、私の心配じゃなくて…。ファインの年頃って思春期じゃん?プライベートなくていいの?ってことで…。
「お兄さま、同じ部屋で良いの?」
「兄ちゃんは同じ部屋が良いんだよ。」
ニカっと眩しい笑顔をしながら頭を撫でる。なんてイケメン…。微妙に恥ずかしい。
これ、私を守る為の采配だよね。
もしいつかファインが朝帰りをしたい時、全力でフォローしようと胸に決めた。せめてもの恩返しだ。
調度品もないことから部屋の整理はすぐに終わった。布団敷いただけだし。
落ち着いたら、うとうとしてきて船をこぐ。
安心したのかな…。なんだかんだで疲れたし…それだけじゃなくて、この微妙な時間って眠たくなるよね。
この世界に時計があるかも何時かも解らないけど頭がぼうっとして瞼が重い。
「メルディ、ベッド使っていいぞ。今のうち寝ておけ。」
優しく囁くようファインの声が聞こえる。
いつの間にか目も開かなくなってた。
ファインに手を引かれてベッドに近づくことが解ると靴を脱ぎ、手探りでシーツを捲って入る。
冷たいシーツが心地よくて一瞬で眠りに落ちた。
・ ・ ・
『ナイト・ガーデン』
このゲームのシナリオは革命ストーリーで冒険パート、戦闘のミニゲームもある。
中々ボリュームがあり、シナリオも長いが案外すぐに個別ルートに行く為、話が違く何度も楽しめるのだ。
攻略キャラの他にサブキャラも登場して対になっている。攻略キャラのライバルであったり主従であったり親友であったり関係はバラバラだ。
因みにファインは二周目からの攻略キャラでヒロインと対になってる。
ヒロインのエンドは共通で親愛度が低く攻略出来なかった時のエンドだ。誰とも関係を育まなかった私は命を狙われファインは私を守り命を落とす。はっきり言ってバッドエンドだけど、その後私は孤高の女王になるのが一応ノーマルエンド扱いになってる。
因みに一周目でファインを狙うと見れることからトラウマエンドとも言われてる。
二周目からだとファインは近衛騎士になってヒロインと結ばれるんだけどね。
パッケージのセンターの攻略キャラは、現王の息子。王座を奪った宰相の息子だ。
そして対になるサブキャラは暗殺者。
このゲームの信頼と親愛度は重要なステータスで、メインとサブのその数値でエンディングが変わる。
メインばかりに傾いているとサブは私たちの為に犠牲になる。因みにサブにばかり傾くとサブエンドにいく。
暗殺者の場合はヒロインが重圧に耐えきれなく、暗殺者がヒロインと共に逃避行する。因みにその後ヒロインたちは亡命して幸せになるがエンドロールのその後の話では国が滅んだと書かれている。
ぶっちゃけウィリント王国ではヒロインは苦労するので『へっ!ざまぁ!』なんてゲームで思ったが、今その選択は無理!
メインとサブがどちらも一定以上の親愛を得てハッピーエンドに行くわけだけど…。
リアルだと難しくね?親愛度なんてどうやって解んだよ!!…もうこの時点で最低限誰とも関わりたくないんだけど。
他のキャラもそんな感じでエンディングが決まるんだけど、リアルだとどうなんの?
全員攻略?無理でしょ。
最初のオープニング、ヒロインは屋敷が燃える夢を見て起きる。
その後主人公の設定で名前、初期属性を選び、得意なのは魔法か近接か選ぶのだ。
因みに現在私の名前は『メルディ・リタール』だ。リタール商会の娘のはずなんだけど、ゲームでは「家が襲撃され、一家皆殺し」としか書いてないから商会がどうなったか解らない。ゲームではその話全く出てこなかったからね。
一応昨日の今日なんだけど、襲撃の事件は街に広がってたりするんだろうか…。
…まぁ、まずは(神いわく)予言となってるシナリオについてだ。
私に加護をくれる精霊がいつ知り会うか解らないけど、15歳でウィリントの学校に通うことになるということは、その頃だと思う。
シスターが精霊を知るため国管轄の学校に行くことになる、何故リーゼンブル管轄の学校でないのは解らないけど精霊が出るってことはそういうことでしょ?
そしてそこで攻略キャラ達と会うのだ。所謂出会いイベント。
フィバリス公立学園、そこで魔法をヒロインが学ぶんだけど、そこでのクラスは強制だった。
だけど、他の学科も選べて、そこの各場所に攻略キャラがいてまず信頼度を稼ぐのだ。
魔法は実技で学ぶことから、外に出て冒険パートを行う。
この世界は魔物がいる。人里がある場所は結界が張られてて、その中には湧かないけど、自然しかない場所には湧くらしい。
結界の効果が解らんけど、家畜が魔物で卵と牛乳を採る農場や育てる牧場もある。一応魔物にも生態があって家畜にできるようだ。
危ない魔物ばかりでないみたい?
まぁゲーム上でも施設作ると捕獲出来て仲間に出来たり生産、畜産してお小遣い稼ぎ出来る。
冒険パートに知り会った攻略キャラを誘え、最初は断れることもあるけど(ランダム)、信頼度が高くなるとずっとパーティに居てくれるようになる。ちなみにファインは学園には来ないけど、心配だからと冒険するたびに付いてくるか選択が出る。他の護衛も自由で金で雇ったりも出来る。(ファインは無料)
そして一年後、強制イベントで各キャラの信頼度がMAXになってるキャラから一人を選択すると個別ルートに突入するのだ。
(一周目でもファインの名前が並ぶことからトラウマ発生する人が多いんだけど、あれはバグなのか罠なのか今でも謎)
個別ルートに突入した後『信頼度』が『親愛度』に変化する。
そして今まで、攻略キャラと一緒にいたサブキャラ達とも関わりが増えてくるのだ。
一応流れ的にまず学園に入学。
『学園パート』『冒険パート』を繰り返す感じ。
『学園パート』で4日間のち授業で知識あげたり、買い物したり、キャラと会話、冒険の護衛を頼んだり出来る。
そして週末の『冒険パート』所謂デートで3日間護衛を頼んだキャラと冒険に出て『信頼度』を稼ぎ、採取したり敵を倒して素材を得てレベルをあげるのだ。
その冒険中にイベントが起こるんだけど…メンバーが自分含めて3人なんだよね。他の人がいるのに桃色空間作るとかヒロインマジパネェ。それが自分とか死にたくなりそうだ。死んだけど。
とりあえず自分には無理だと言っておこう。
そして一年経つとイベントが発生して『革命』が起きる。
ここから激動でウィリントから追われる。そしてその時に選択した攻略キャラのメインとサブが助けに来てくれて、元大臣だと言う人に助けられて屋敷の拠点が出来るのだ。そこから『親愛度』に変化と言う流れだ。
攻略メインキャラは3人
現王の息子、王太子であるブルーノ・フォン・アイゼル・ウィリント(16)学園の二年
サブは暗殺者のカイ・ユーロ(15)
カイはブルーノ個人に仕えてる忠臣で親友だ。色彩がブルーノは明るい金髪青目でカイが黒髪赤目の対極の色をしていて人気がある。
薄い本で№1の人気を誇る二人組である。
次に『精霊使い』のユン・リスター(14)一年の同じクラス
サブの魔導士のリチェスター・フォン・シルベーヌ(17)学園の三年
ユンは平民の子で精霊の愛し子だ。実は幼少の頃から精霊に加護を与えられてたが誰も気付くことがなく去年バレて強制入学の現在に至るらしい。
3体の精霊に加護を与えられてて、将来有望な宮廷魔術師候補と言われてた。
リチェスターは先輩だが、もろ貴族の性格をしてて上から目線でものを言うが弄りがいのあるツンデレキャラだ。稀有な三属性の恩恵持ちでちやほやされてるところにユンが注目を浴びてライバル宣言している。
ユンは天然でリチェスターはツンデレな凸凹コンビに癒されることから。ほのぼのとした薄い本が多い。
そして最後、外部にいる盗賊キャラ、レビン(21)と騎士のサリヴァン・ユーゼンホール(23)の大人組。
金を払って雇うキャラで大人な甘いイベントが多く人気である。そして唯一個別シナリオイベントでファイン(26)との絡みもある。
そして、このレビンが猫の獣人で猫耳なのだ!しなやかな体躯の細マッチョで黒い体の線が出る上着に、ぶかぶかのズボンに伸びる白い尻尾。
髪は白に黒のメッシュが入っており、目は金色で耳も白。白黒猫の姿もしていることがあり、そのスチルもありクソ可愛い。
サリヴァンはナンパ師の青年で子供でもお年寄りでも女性には優しい。でも男性に厳しいわけでもなく口説かないだけでそんな態度は変わらない。下級貴族の落とし子で自称ラブハンターのナルシストで寂しがり屋だ。
この二人は表では盗賊と治安を守る騎士として仲が悪いが、実はサリヴァンが餌を与えて可愛がってる猫がレビンだったという話がある。
そんな二人も薄い本で人気で純愛エロロミオストーリーが出回っている。
そして隠しというか二周目キャラのファイン・コンジット(26)最年長のヒロイン兄、シスコン。
ヒロインとファインの血が繋がってないことと、何故シスコン重症患者なのかがこのシナリオで知ることになる。
一応攻略キャラはメイン&サブ+隠しを足して7人、この全キャラを攻略したクリアデーターを作ると、最後にトゥルーエンドがプレイ出来る。
私はのこトゥルーエンドを前に亡くなった。ちくせぅ…グス…。
私は攻略を見る派ではないので詳細は解らないが、このトゥルーエンドは全員と関わりが出来、誰も死なないシナリオらしい。
マジやりたい。死んだことが悔しすぎる。
多分、この世界が本当に『ナイト・ガーデン』と同じ世界なのなら、そのエンディングが一番いいシナリオなんだと思う。
だけどね、良く考えてみよう。
ヒロインは『女王』になることが前提で、私が女王にならないエンドロールは大抵国に何かあって滅ぶの。
え?どちらも嫌なんですけど。女王にもなりたくないし、誰も死んで欲しくない。重すぎるんだけど。
平和な前世の後に、この世界はヘビィ過ぎませんかね?
因みに『革命』ストーリー…私命狙われます。反乱の旗印に祭り上げられる。
マジ勘弁してほしい。
いやいやいやいや無理…本当勘弁して…。
どうしたら逃げられるだろう…、まだ私は6歳、学園まであと9年。というかそもそも精霊から加護を貰わなければ良くね?
そしたら学校行かなくて良いじゃん!そうだ!冒険者になろう!
そしたら国から離れられる!!それで国が荒れ始めたら傭兵に志願してブルーノを扇動して国を救って逃げよう!
そうしたらきっと、国も滅びないし皆無事だし私も女王にもならない!完璧だ!完璧な作戦だ!!
まずは強さだ!!今から鍛えよう!
ヒロインを魔法か近接か選べるけど、選ばなくていいじゃん!自由じゃん!
というか選んでそうなるわけないじゃん!!
つまり、私はどちらとも強くなれる、魔法も武器も握れる。
因みに私は魔法タイプの方が強くなる。最強のデーターをつくるなら魔法タイプが強い。
でも近接だと魔法剣使えるんだよね!私脳筋なのでいつもこっち使ってる。
魔法タイプだと最大MPは全キャラ最強、近接タイプだとユンとリチェスターより少し低いくらいになる。
つまり魔力は一般よりかなり多いということになる。
これから毎日極大魔法放とうぜ!