邂逅
前書き書き忘れてました!ブクマ有り難うございます!
いつから寝てたのか、心地良い毛皮に埋もれて微睡んでいた意識がふと浮上した。
眠気の残る頭と瞼が薄く開き空が目に入る。明るいからそんなに時間は経ってないようで『帰らなきゃ』と思っても『もう少し』とまた意識を沈ませる。
それだけ心地良かった。
規則正しく上下する巨体と鼓動。自分の目の前に目を閉じて長い耳が力無く垂れてるがピクピク動くミミット。いつの間にか私のお腹の上に引っ付いて寝てる猫。
いつの間に…。
微睡みながらお腹の上に乗っている猫の頭を撫でる。毛の流れに沿って小さな額から頭部まで滑らせ耳の付け根から優しく掻きながら頬を撫でる。
猫、可愛い。
本当は猫をずっと飼いたかった。でも弟と母親がアレルギーだった。大人になったら…と思ってたが、仕事が忙しく。連続出勤が続いた後に一気に休ませる会社で繁忙期の差が凄かったから、結局飼わなかった。
まぁ、地域猫を懐柔した撫で回すテクニックにだけは自信あるが…。
うとうとしてまた意識が落ちそうになる瞬間、ミミットの耳が縦に伸びた。
警戒するときの動作だと、頭が働かなくて気付くのに遅れた。
驚くのも、後悔するのも遅く。
ミミットベアが「ギィィィイイ」と叫ぶように身を捩り、地面に放り出されて息が詰まるまで何が起こったのか判らなかった。
「〜〜―っ!!―ったっ―」
地面に投げ出され咄嗟に猫を抱きしめながら背中から打った。今日はよく怪我するなと頭の隅に思う。
猫が身を捩って腕から抜け出す。それよりミミットベアに何があったのか急いで起き上がって見る。
「っ!」
喉が引き攣って声が出なかった。ただ急いで膝に力を入れて起き上がり駆け出す。
「やめて!!―やめてぇ!」
やっと出た言葉はただ停止の為に叫ぶだけ。
目の前で、ファインが力無く倒れたミミットベアに斬りかかろうと剣を振り下ろそうとしていた。
―――――
――――
丸まったミミットベアが居た。
しかしメルディの姿は見えず旅人も猟師もいない、煙の元らしき物はあるが人の姿は皆無。おかしいな…。
「あれは…、さっきのミミットベアか?メルディは?」
「もしかして一緒に寝てんじゃない?」
コソコソとファインとリュートで話す。
「チャンスですよ!妹さんがいないのなら恐らく巣にいるかもしれません。恐らくミミットベアは子供を守る為に入口付近を守っている可能性が高いです。
ミミットベアを倒し、巣を探しましょう。必ず周辺にあるはずです。」
力説してくるハザン。
確かに今倒した方が後々楽になる。親しかいないのならメルディも闘いに巻き込まれる事はないし他の障害が無くなる。毛皮が丈夫で剣が通り難いとはいえ弱点が無い訳ではない。
寝ている今が確かにチャンスだろう。
「では作戦を立てよう。ミミットベアは耳が良い。近付いたら起きるだろ。」
「…近付く事が前提ですが、私の少ない手持ちの中に痺れ薬があります。念の為の薬で、剣に塗って傷を負わせれば暫く動けなく出来るはず。
ファインさん頼りになってしまいますが、気付かれても起き上がる前に痺れ薬を塗った剣で切り付ければ勝機はあります。」
「わかった。俺が傷を負わす役目をしよう。二人は援護を頼む。」
リュートとハザンは頷いた。
ハザンは、小さな徳利を取り出してファインの剣の刀身にかける。
「何故こんな薬を持ってるんだ?」
「これは矢毒に使ってまして、大物用なんですよ。矢は持ってきて無いんですがね。」
本当は暗器に流す痺れ薬で、獲物を殺さないように捉える為のものだ。ハザンは心の中でほくそ笑んだ。
準備が済みファインは片手に剣を構え駆け出す。
一気にトップスピードにのりながらも音を極力立ててない。
ハザンとリュートはそんな技術を持ち合わせてないという事で一時待機で見守った。
ミミットベアの長い両耳が立つ。
気付かれたがファインの方が近付くのが早かった。
まず一太刀傷を負わせれば勝機があがる。
痺れ薬がどの程度効くか判らないが何度でも斬り刻んでメルディを取り戻してやる!
ミミットベアの動作が遅い。
走りながらもブレることなく剣を正面に真っ直ぐに構え突き刺す。
ブツっと毛と皮を刺す感触が手に確かな手応えを感じながら柄の端から押すように刀身を食い込ませるが、ミミットベアが金切りのような音を「ギィィィイイ」とあげ身を捩った。
三分の一食い込んだ剣を持っていかれないよう咄嗟に引き抜き再び構える。
ミミットベアは身を捩った後は痙攣し時折ピクっと動くだけで反撃に来なかった。まだ浅いと思ったがアレだけでも動けなくなるなんて思った以上の効果だ。市販ではないな。
だけど今は目の前のミミットベアだ。
ミミットベアは痺れているだろうにまだ力が入るのかこちらを見て前歯を剥き出しにして怒っている。
ファインは獲物に向けるように無感情で急所である首に向かい剣を上段に構え振り下ろそうとした。
「やめて!!―やめてぇ!」
「!!」
剣を振り下ろしながらメルディの声がした。




