バトラーの思惑
ブクマ有難うございます!遅くなり大変申し訳ありませんでした!二日ダウンしてたらスランプになりました。内容は何度も読み直しながら書いてますが、誤字や言葉が変だったら教えて頂けると有り難いです。
使用人達が屋敷から出た後、バトラーのセルリアットはマルコの執務室で待機していた。
屋敷の主人不在中に司令塔を代行するのは家長の役目だからだ。窓から外を眺めているとノックが響く。
「失礼します。」
返事を待たず入ってきたのはクラシックメイド服を着たメイリーナだ。メイリーナは主にシスターの世話をしリンダの指導もしているメイド長である。
焦げ茶色の髪をきっちりと結い上げ真面目な雰囲気を纏った三十代くらいの女性だ。
いつもは柔和な目元をしている髪より濃い、黒に近い焦げ茶色の目は現在感情を表に出さない無機質な目をしていた。
「姫様は?」
セルリアットは後ろを振り向かず聞く。
メイリーナは引いてきたカートから紅茶を入れながら感情を感じない声音で応えた。
「ミミットベアを従えたようです。その後、川辺の精霊に接触しました。ですがその先は川辺の精霊の結界があるようで一緒には向かえないと待機しています。まだ結界内から出てきてないようです。」
紅茶の良い香りが立つ。
メイリーナは紅茶のカップとソーサーを持ち、音もなく執務机に置いた。
セルリアットはメイリーナの方に向く。その目は厳しく鋭い光が宿っている。
「メイリーナ」
「はい」
「シスター・ローザ殿の様子はどうだ。」
「シスター・ローザ様は現在湯船に浸かっております。
ですが…シスター・ローザ様より…言伝、が御座います…。」
メイリーナは歯切れの悪い、感情が薄い表情から戸惑いが浮かぶ。セルリアットは片眉を上げ目で先を促した。
「『メルディが本当に危なくなるまで手出し無用でお願いしますね。』と別れる間際に仰っしゃられてました。恐らくは我々へのメッセージだと思われます。正直、私はあの方を空恐ろしく感じます。」
セルリアットは目を瞑り深く息をつく。
メルディの護衛の為一人を裏で付けているのと同じく、新しく来たシスター、ファイン、リュート、リンダ、トリヴィスも等しく監視対象で屋敷全体で監視していた。
その中で特にシスター・ローザの行動が読めないでいた。
シスターが孤児達に話をした内容。姫とシスターの会話も報告を受けていたが、姫が何者か勘付いているようにも聞こえる。それに一時防音されたように聞けない内容があったとも報告があった。
それから察するに、彼女は最初から我々の監視に気付いていた上でわざと聞かせることは聞かせていた。
そして何時でも聞こえなくする術も持っていたという事になる。
彼女の存在はこちらからすれば異質な存在だ。
あっちも出来るだけ手の内を見せる事で警戒を解かそうと思っていたようだけど、姫様との会話は聞かせたくない部分もあった様子。逆に警戒心を高めるのも計算かどうか判断できずにいた。
排除をしようにも姫様から信頼を得ている上に腕も立つようだ。ファイン殿との模擬戦はその力量を見せる一端だろう。
姫様は我等に対し警戒をしている。だが姫の中でシスターの信用価値はかなり高い。
今時点でシスターを排除や冷遇をすれば姫様からの我等の信頼は地に落ち屋敷を出ていくだろう。
今優先すべき事は、長く屋敷に留まらせ姫様からの我々の信頼を稼ぐ事。そして姫様に仕え信用出来る臣下を育て役に立てること。味方となる者を作るのも将来的に大事だ。更にシスター・ローザの素性を探り敵か味方足る者かも調べなくては…。
セルリアットはもう一度小さく息をつく。
「暫くはそのまま監視と素性の情報収集を続けろ。リュートの方はどうだ?」
「リュートは現在森付近にて探索しております。姫様を見つけるまで時間かかるかと。」
「よい、現時点での能力を測ることを優先としろ。トリヴィスもどの程度使えるか班に伝えておけ。」
「畏まりました。」
…………
……
リュートは森の境目で何度目か解らないため息を吐いた。
ファインはさっきからメルディの身の心配をしているがリュートはファインとは別の事が心配になる。
ファインほど取り乱したりはしないが、リュートもそれなりに焦ってはいるのだ。
『恩恵』は恩恵と言われるだけのアドバンテージがある。メルディ程であれば、例え相手が恩恵持ちであろうともあの力を振るうだけで身の安全は守れるだろう。ただ、相手の身の安全は保証出来ない…。恩恵はやろうと思えば簡単に破壊も命も奪える力があるのだから。
メルディは無事でも、そうなってしまえば心に深い傷を負うだろう。前から思ってたけどファインとシスターはもっとそういう心配をした方が良いと思う。
リュートだって最初から恩恵を上手く扱えた訳じゃないし、動物を捕まえて肉にする事に忌避感が今も無い訳じゃない。まして人を殺した事もないししたくない。
動物は、生きて行く上で食べ物は必要だし、姉が喜ぶから自分でも近くの森で罠張って時折捉えては自らの手で捌いていた。
捌くのだって最初から好き好んで自分の意志でしたわけじゃない。シスターに言われて何度も教えてもらっていたら自分一人で出来る様になった、ただそれだけ。
自分は運良く手順を踏めて生き物を殺す躊躇いは薄くなったけどメルディは違う。まだ命を自分で奪う現実が見えていない。
横でファインがさっきからうるさいが森に集中する。失敗してから一人で練習して今では情報の取捨選択を出来るようになった。
その代わり情報に集中しすぎてサーチが遅くなり、周りの音が聞こえなく無防備になる。
今は良いが一人では使えない。
ある場所で溶けてない氷が散った場所があった。
メルディだとすぐに判る。そしてその付近に血の跡。複数の人の足跡。子供の足跡が一人分…あとは子供の足跡に比べて大きく大人の足跡が二人分と更に大きい…動物?いや…魔物の足跡か?襲われた?
その辺りを集中してサーチする。
血の跡付近に今は人は居ない。移動したようだが、今は大人の足跡より子供の足跡を追った。
屋敷に近付いているが方向は逆に歩いていくのが解る。迷っているのか?
足跡が追うが途中で追えなくなった。何かに遮られたのか、その先に行けない。
意識を戻しファインに向く。ファインはずっとこっちを見ていたようで顔が近かく思わず一歩引いた。
「見つかったか?!!どこだ!」
「足跡があったから追ったけど…途中で切れた。」
「なんだ?どういう事だ?」
「足跡が続く先に行けなかった。その辺りだと思うけど…。」
「よし、じゃあそこに行くぞ。」
「え?連絡しないとじゃない?」
「じゃあ近くまで案内している間に連絡すれば良いだろ。行くぞ!」
「え?あ、ちょっと!」
グイグイとファインが一歩一歩迫って来るなかリュートも一歩ずつ引いていたがファインに捕まれ腰に荷物のように持ち上げられる。
腰と腹を圧迫されリュートが苦しそうに呻くがファインは気にせず森の中を駆け出し方向だけ聞くと颯爽と駆け出した。
「セェルリアットささ様、リリュートでぐっ。恐らぐっ、メルディだと思われれる足跡発見したので行ぎます。」
縦横と揺らされながら何とか言葉だけ残しリュートは行先を指で指しながらファインを怨みつつ腹に力をいれて指示をだした。
今度第一話の前に人物紹介書こうと思います。




