迷子
ブクマ有難うございます!残酷な描写有りです。注意してください。
ちょっと一気に書いたのでいつもより長いです。
ではどうぞ!
メルディが半泣きになりながらスライディングした体の痛みに耐えてると、上の木からザザザザザと何かが掛けていく音が響いた。
アイツだ、すぐに追いつかれてしまった。
メルディになってはだ1ヶ月も経っていない。
短い人生でした!
立ち上がると全身痛い。借りた服はボロボロだった申し訳ない。
少し離れた所でズンっと大きい何かが下に落ちた音がした。そして目の前からのっそりと二本足でゆっくりこっちに歩いてくる。
くっ!強者の風格か!
まだ命が諦めきれず、心臓が生きているのを主張するように暴れている。
さっきまでパニクってたけど、全身痛いせいか頭が冷えた。
自分の中の力に集中すると靄の様に冷気が広がる。氷の恩恵の『サーチ』魔法だ。
感覚でさっきの巨体ウサギが解る。まず足…。
離れた所から驚いたように「キィ」と高い声が鳴く。図体の割に可愛らしい声しやがって!
そして体、腕へと氷がパキパキと音をたて飲み込む感覚でさっきの仔ウサギが背中に乗ってるのが解ったから氷を止める。
もう動けなくなってるだろうし。
なんとか危機を脱出してその場にへたり込む。
恩恵魔法も上手く行ってよかった…。
するとさっきの仔ウサギ(仮)が親の背から降りて私に近付いてくる。可愛らしいウサギの割に大型犬のように太い脚を私の膝に乗せて「ぴぃ」と鳴いた。
うん、年月って残酷。でもなんでこっちに来た?
「君のパパ?ママ?…まぁいいや、親を凍らせたのは私だよ?人に近付いたら危ないよ?」
餌付けをしようとした私が言うのもなんだけど。
ウサギ(仮)はウサギの様に鼻を鳴らしてピィと鳴く。ほんと顔はウサギなんだよな。
前に皆で狩ったウサギと言われたものはこの子よりは耳も短く尻尾が長かくてどっちかと言うとネズミ系だった。
まぁ前世にいた兎もここまで耳長くないし長ければ兎ってわけじゃないけど。品種が違う親戚かな?
いや、親がアレだった。あの山に居たみたいな小動物じゃなかったわ。大人になると熊みたいなウサギってなんだよ。
モンスターって不思議。
そろりと仔ウサギ(仮)の頭に手を伸ばして撫でる。柔らかい毛に耳を後ろに流してゆっくりと撫でた。癒やされる。ていうか親良いの?
仔ウサギは気持ちよさそうに箱座りし目を細めされるがままだ。
チラッと親の熊ウサギ?を見ると暴れるまでも無くじっと強面のウサギ面でこっちを大人しく見ている。
アレ?襲おうとしてなかった?いやまさか…。
大人しくしている振りをして氷を解いた瞬間にグサリじゃないよね?
ジッと撫でながら親た目を合わせると仔ウサギ(仮)と熊ウサギは耳をピーンと伸ばして後ろを見ようとする。
親は「キィィ」と低く唸る様に前歯を剥き出しにした。怖!
というかコレは警戒してる時の行動。
見守りながら仔ウサギ(仮)を抱く。因みに仔ウサギ(仮)は普通のウサギの大人くらいデカイ。
両腕に乗って頭が出るくらいデカイ。
耳をすませると遠くから大人の男性の声が聞こえた。なんか叫んでるみたいで段々近付いてくる。
荒くザクザクと露払いをしているのか木々を薙ぎ払う音と共に近付いて来ている。声も怒鳴るように近い。
どうしよう…。
この熊ウサギを開放するか、叫んでる声から察するに知らない人だ。それにいい人とも限らない。
仔ウサギだけ連れて逃げるか。
でも怖くてもこの熊ウサギはこの子の親だ。
しかも今の所追いかけられただけで大人しい。
いや、追いかけられただけでも事案なんだけど。もしかしたら、モンスターがそんな意志があるか解らないけど、私は…誤解してるのでは?
無意識的に後ずさりながら木の根元に移動して仔ウサギを抱えて丸くなる。
仔ウサギは耳をピーンと立てたままじっと奥を見据えていた。
「おい!他の連中からの連絡はまだか!
もし別の奴に見つかったら捕まるぞ!」
「ヘイ!うおっ!」
声が大きく聞こえて姿が見える。
薄汚れた皮のベストシャツを着た目が落ち窪んだ男が驚いたように固まる。
「おい!どうした!うお!ミミットベアじゃねえか!」
後ろにもう一人男がいた。背の高いシャツが半袖で腕の筋肉が盛り上がっている男だ。
あの親『ミミットベア』っていうんだ。
あれ?そのモンスター知ってるぞ?何で見たっけ?
「なんで氷に…?!それに、子供?
…おい。」
舌舐めずりするように私を見る。
寒気がした。
「俺達ついてるぜ。逃げた『商品』の他に高そうな『獲物』まで確保出来そうだ。」
「ヘイ!」
一歩近付いて来るとミミットベアが「キィィィィイ」と警戒音を放つ。
「おいおい!ガキを見て見ろ『ミミット』も居るじゃねぇか!
コイツの肉と毛皮は最高級品なんだぜ!あぶねー親は氷で動けねぇみたいだし楽勝じゃねぇか!」
男が歓喜した瞬間パンっと氷が弾け飛んだ。
「ギィィィィ!!」
ミミットベアの腕が膨張し、鋭い爪を出したまま男に殴りかかる。
「ぎゃぁぁぁぁあ!」
そのまま人形のように吹っ飛び木に背中をぶつけ、ぐったり動かなくなった。
「あ、…あ、あ」
もう一人の落ち窪んだ目の男の口が戦慄き一歩、また一歩。ミミットベアを見上げながら下がるが二足歩行のミミットベアは「ギィィ」と低く唸り、男が叫んで逃げようと踵を返した瞬間、熊のような大人の頭ほどある太い腕が振り下ろされ、首から背中に掛けて切り裂き男は起き上がる事は無かった。
私はただ、圧倒的な力にただ震えた。
ガチガチと鳴る歯に急に冷たくなった体が震える。
熊に襲われるって、こういう事だろうか…。
ミミットベアは二足歩行からのそっと四足歩行になったって近付いてくる。
「ひっ…」
ヒュッと息を変な風に吸って悲鳴じみた声が漏れた。ミミットベアは私に近付いて大きいウサギの顔で鼻を上下させながらふすふすと匂いを嗅ぐ。
何だ!さっきからなんなんだ!
ヒゲが顔に当たってくすぐったい!でも怖くて身動きとれない!
くすぐったいのを我慢していると腕の中にいたミミットも私の顔に近付いてふすふすと匂いを嗅ぎ始める。一体なんですかね!うわぁぁぁん
ていうかさっきの人達も何!『商品』って何!『獲物』って何!何なの何なの何なの!!
うわぁぁぁぁぁあ!もう!何なのぉぉお!
ふすふすふす
ふすふすふすふす
やたら匂いをしつこいくらいに嗅がれている。
動けないうちに、心の中で暴れまくってたら段々と冷静になってきた。
なんだろう、この状況…。
…さっきの人達。死んじゃったのかな…。
圧倒的な力で人が殺されるのを、目の前で始めたみた。
今の所、私はミミットベアに殺される気配は無い。だけど動いた瞬間狙われるかも解らない。
でも、さっき氷に纏われたまま大人しくしていたのは私の為かも知れない。
だって、自分から脱出出来たようだし。
正直驚いた。でもしなかったって事はきっとそういう事だと思いたい。
何故?と疑問に思う。理由が解らない。
匂いを嗅ぐ親を見ると嗅ぐのを止めて視線を合わせてきた。
白目の無いくりくりの黒目は愛らしく。体を見なければ大きいウサギだ。
手をそろっと上げると、向こうから手に頭を押し付けるように来た。
そのまま撫でると気持ち良さそうに「キュイ」っと鳴く。鳴き声可愛いよな。
どうやら敵意も無くて懐かれているようだと思ったら安心して、どっと疲れた。
「おまえ、なんで追いかけてきたの?
怖かったんだからね?ほんとーに怖かったんだからね?解ってる?」
両手でミミットベアの顔を挟むように頬に手を当て鼻と鼻を子供がしていたようにくっつける。
多分これがこの子達の挨拶なんだろう。
ほっぺの膨らみ超気持ちええ。
子供の方も顔をグリグリ押し付けてきたから親と同じく鼻と鼻をくっつけると嬉しそうにピィと鳴いた。
私はミミットを降ろして立ち上がる。
そういえば私、ランニング途中だったんだよね。
なんでこんな事になった。というかココは何処だ。本当に、今更だけど。
ミミットは私の足元に来てふすふす鼻を動かしながら私を見上げている。
「ごめんね、私帰らなきゃ。」
せっかく懐いてくれて名残惜しいけどこのまま連れては行けないだろう。
「じゃあね。」
手を振って離れるとミミットは親の元に行って背中に飛び乗った。その背中に窪みがありそこに落ち着く。
なるほど、そうやって付いてきたのか。
親と一緒にいるなら大丈夫だろう。
私も急いで帰らないと心配させてしまう。
戻るように歩くと後ろから下草を踏む足音が聞こえる。
後ろを振り向くと二足歩行のミミットベアが立ってた。
………。
ちょっと早足に歩いても子供の早足など取るに足らないのか変わらないテンポの足音が聞こえてくる。
走る。
後ろからドッ、ドッ、っと追い越さない程度の足音がゆったり聞こえてきた!余裕ですねぇ!
数分走ると水音が聞こえてきた。
目の前が開けると川辺に着いた!なんで!方向間違った!?
流れる水は木々の緑を映している。
途方に暮れて流れる川を見ると岩に白い濡れそぼった毛玉が見えた。
・・・
その頃のファインは…。
「メルディィィイイイ!」
屋敷の周りを一周し終えてもメルディの姿が見つからなかった。
もしかして魔物に襲われたのか!
探さなきゃ!
「メルディ?!メルディィィイイ!!」
走りながら土の恩恵の範囲サーチを発動したが見つからない。というかどの辺りから居なくなったのか検討つかない!
「メ、メルディ…、どうしよう俺が目を離したから…。早くシスターを認めさせる事が出来れば…わざとでも再起不能になれば…」
わざとそんな事すればタダではすまないだろうけど…ブツブツと呟きながら真剣な目で地面を睨むように考える。
これ以上サーチの範囲を広げると俺の頭と魔力に限界が起きてしまう。
……考えろ、考えろ!
リュートが頭に浮かぶ。狩りの時、サーチ魔法を教えた時。リュートは水と土の恩恵を持っているが故に植物の情報まで入ってきたと言っていた。
ココは森だ。恐らくメルディは森で魔物に会って襲われたのだ。早く助けないと手遅れになってしまうかも知れない。
血の気が引くのを感じながらファインは屋敷に駆け込みリュートを探した。
サーチで酔ったとしてもメルディの捜索の方が重要だ!無理して吐いてでも広範囲探してもらおう!そして俺が迎えに行く!完璧な作戦だ!
リュートにとって全く完璧とは程遠い作戦だが、まだその事をリュートは知らない。
異世界のウサギは『ウサギ』と書いてますが日本のは『兎』と書いてます。
あとミミット親子の鳴き声は声では無いです。基本鼻を鳴らしてます。
親の警戒音だけ喉の唸る異音を発してます。
兎みたいに文句言うとき鼻を『ブーブー』鳴らしてるのもいいなーと思ったんですが怖くないかなと思って『ギィィ』にしました。
でもそれは警戒音の音だけで普通に鳴くときは『ピィピィ』か『ブーブー』になる予定してます。




