ファインは情緒不安定
ブックマーク有難うございます!見てもらってると思うだけでモチベーション(というか自信)を維持しているところもあるので嬉しいです!
ちょっとファイン視点ですが長いです。
ファインもまだ16歳なんですよって話。
メルディに一人で寝ると断られて部屋を出ていった。
しかし…、だがしかし。
やはり寝たあとに泣いてしまうのでは?
悪夢を見てうなされていたらどうしよう…。
一人で泣いてないか心配で閉めた扉の前で右往左往歩く。
そして迷いに迷った挙句…結論が出た。
メルディが寝るまで扉の前にいよう、と。
扉の前にどっかり座って時を待つ。
今の時間、廊下は真っ暗で使用人も出入りしていない。
静かに腕を組んで耳を澄ませた。
…
……
もう寝たであろう程の時間が過ぎた。
メルディの部屋は静かでうなされた声は聞こえない。
…戻る前に泣いてないか一目見て…いやそれで起こしたら可哀想だ…。
……、部屋に戻るか。
どこかガッカリとした気持ちが湧く。
寂しいような…、期待外れのような?
怖い思いをしなくて良かったのに、悪夢を見て泣く姿じゃないのに。何故こんな気持ちが湧くんだ…。
自己嫌悪に陥る。
……、もしかしたら寂しくなって俺の部屋に来るかもしれない。
でもメルディは俺の部屋を知らない。
もしかしたら、この扉が開くかもしれない。
期待と焦燥感。
もう時間的に寝ているだろう。
部屋から出ることは無いと解っていても『もしかしたら』が頭に過ぎって足が動かなくなる。
また胡座で座って腕を組んでそのまま仮眠をとった。
……人の気配で起きると籠に色々入れて抱えてるリンダが来た。
「リンダか、おはよう。」
「おはよー、…何やってるの?」
明るく挨拶を返してくれるが、質問に目を泳がせてしまう。
まさかメルディが寂しくなり出てくるのを期待して一夜ここで明かしたとか言えない。
「…ちょっと護衛を…。」
「そうなの?おつかれさま!
んふふ、メルちゃんの部屋の前に護衛が立つなんて本物のお姫様みたいね!
ファイン騎士様みたい!」
きらきらとした無邪気な視線が良心を焼くように痛い!
話を変えるように扉を開けてあげて中に促す。
「メルちゃん起きてる?」
「うん。リンダおはよう。」
もうメルディは起き上がっており寝間着姿だ。
元気そうに見えて…どこか元気が無い気がした。
願望か?
「お兄ちゃんもおはよう。」
「おはようメルディ、ちゃんと寝れたか?
夢は?」
「…う、うん。ちゃんと寝れたよ。」
「そうか。」
やはり夢見が悪かったんじゃないか?
じっと見てるが何も言わない、胸の中の黒い穴がじわじわと広がる気がした。
メルディを見ているとリンダが面白い話のように口を開いて慌てた。
「ファインね、ずっとそこで―ンン」
ドキっと心臓が跳ねた。何てことを言おうとしてんだ!
俺は慌てて口を塞ぎ人差し指を自分の口にを当てて念押すように『黙ってろ!』とジェスチャーする。
リンダは驚いたように『護衛は内緒だったのね、解った』と頷いたのでホッとして手を離した。
メルディも何も聞いてこない。何とか誤魔化せたようだ。
その後リンダに部屋を追い出された。
別に着替えなんていつも見てるし、どってことないのに…解せない。
暫く扉すぐ横の壁におっかかって待つ。少し瞼が重く眠い気がしたから目を閉じて仮眠に入る。
カチャッと扉が開き起きた。
「お、準備できたか?じゃあ行こうか。」
「うん!待たせてゴメンね。」
出てきたメルディは一緒に居たときとは違く、髪を整えちゃんと梳かしたからか髪がとろりと光沢を放っており、薄紫のひらひらの服も似合っていた。
しかし、何でこの屋敷はメルディに合う服が大量にあるのか疑問だが似合うから良しとしよう。
いつもの様に頭を撫でようと手を伸ばす。
髪に触れると気持ちよさそうだと触りたくなった…がメルディの後ろにいるリンダとふと目があった。
何ともショックを受けるような非難めいた視線だ。
自分の作品を壊されるような、頑張って綺麗にした物を汚すのかと目で訴えてきた。
でも止まるのも何だか…前髪だけ触れた。
サラッと柔らかい髪。まぁ、これで我慢しておこう。
朝食はいつもの通り美味しかった。
孤児院では卵や牛乳は床下での保管では限りがあり、人数分買うとどうしても高くついてしまうから日持ちがし結果どうしても安いものになってしまう。
皆、このご飯にありつける事に感謝していた。
メルディはこんな朝食初めてだと、とても美味しそうに食べている。
朝食中は嫌な気持ちも何処か行き、満たされた気持ちで食事を終えた。
しかし、メルディとマルコさんが話を始めて黒い気持ちが湧き立つ。
メルディとシスターが示し合わせたかの様に目を合わせたからだ。
シスターは『メルディ』と呼び捨てした。
最近はリンダの事も呼び捨てにしているが、何もないのに呼び捨てなどしたりしないのを知っている。
つまり昨日二人で話して『心を決めた』のだ。
知らない…
俺は、何も聞いてない…
メルディは何も相談してくれない。
俺を頼らない。
よりによってシスターの方を俺より頼りにしている節がある。
心に黒い気持ちが支配した。
話が終わり、メルディの腕を掴んで連れて行く。
どう言う事だと詰め寄りたくなった。
どうして俺に頼ってくれないと責めたくなった。
責めたいわけじゃない、護りたいのに…。
感情が沸き立って上手く行かない。
何となく気持ちのまま自分の部屋に連れてって扉を閉めメルディを左右に逃げられないよう両腕の中に牽制した。
「メルディ?」声をかけると体を震わせる。
「さっきのシスターとのアイコンタクトと心決まった事とは、なんの事だ?
シスターにも後で聞くが、まずお前から兄は聞きたいな。」
何で俺に聞いてくれない?相談もしてくれない?
「あの、その。」
メルディは言葉を探す様にどもったあと、ぽつりぽつりと話し始める。
「お兄ちゃんの言葉とは裏腹になるんだけど、私…シスターの元で学びたいと思うの。」
上目遣いに見られる。綺麗な大きい瞳、紫かかった夕焼けのような瞳が俺を見つめて映しだす。
そこに映る俺は何とも情けない顔をしていて少し引けた。
「それはシスターに脅されたのか?弱味でも握られたとか?
シスターの元に自分から学ぶなど魔と契約するようなものだぞ!」
それでもシスターを信用し過ぎてはいけない。
コレだけは譲れない。
昨日シスターに念押したが流された。やはり脅したのか?にしては信用しているっぽい。
いや、見た目に騙されているだけでは?
「お兄ちゃん、私は強くなりたいの。
自分で、自分を守れるようになりたいし出来るようになりたいの。」
メルディの決意籠もった眼は子供らしくなく。
大人のような一面が見えた。
一体を何を言われた?俺は必要ない?
「……、それなら俺が教える。俺が師匠になってメルディに色々教えるから―」
「信用出来ない」
「なっ!」
ズバッと言われてショックと言うか心抉られて心臓が痛くて息が詰まる。
「だって、お兄ちゃん私に甘いもの。
お兄ちゃんに守られている様では意味無いの。運命さえ薙ぎ倒せるくらい、強くなりたいの。」
「メルディの事は俺が、俺がずっと守る!
メルディが強くならなくても…。
……俺では、頼りないか?」
そんなに、俺に護られるのが嫌なのか?
何故そんなに一人で行こうとする…。
俺は要らないと言われているようで辛くなった。
情けないことに胸が詰まって歯を食いしばると、腹に衝撃と苦しさと暖かさがきた。
「違うの、お兄ちゃんを頼りにしているからこそ…お兄ちゃんが私を大事にしているから私も守りたいし大事にしたいの。
お兄ちゃんにだけ背負わせたりしない。」
「メルディ?」
メルディが俺に抱き着いている?頭の中が白くなった。ただメルディの言葉を反芻する。
頼りにしているから、守りたい大事にしたい。
甘えるだけじゃなく、頼られたい。と言う事だろうか…。
黒い気持ちがどこかにストンと落ちる。信用していないのは俺の方か?
俺は、何を焦っていたのだろう。
メルディが俺から離れていく気がして、独り立ちしないように足を引っ張ってるだけじゃないか…。
メルディは、ただ…俺の隣に立とうとしていただけなのに。
何とも大人気ない。6歳のメルディの方が俺より大人だった。凄く情けない。
メルディはグリグリと俺に存在を強調している。
慰められている…。妹に…。
すーっと感情が静かに収まっていく。
自分は一体、何をメルディにぶつけていたんだろう。やべぇ何が大人ぶって『兄』だ。
情けない、これは情けない…。
メルディの腰に触れ、溜息を吐く。
「解ったよ。メルディの考えた通りにすると良い。
ただ、俺は必ずどんな所でもお前に付いていくからな。それだけは拒否してくれるなよ。」
そこだけは譲らない。
もう、情けなく子供のように頼って欲しいとか強請らないから。
「うん!お兄ちゃん大好き!」
安心したような眩しい笑顔。満たされてキュッと胸が苦しくなった。
メルディに頼ってもらえないと腐るんじゃなくて、メルディから自然と頼ってもらえるよう、自分を磨こう。
片膝をついてメルディを抱きしめる。
柔らかい小さな体。でも心は俺よりとても大きかった。
「ところでさ、お兄ちゃん。」
「うん。」
「シスター締め出したままだけど、いいの?」
「…。」
え?居たの?頭に血が昇ってて気付かなかった。
控えめに扉のノブをまわして開けた。
扉は廊下側に開くようになっており直ぐにシスターが笑顔で控えていた。
「話はおわりましたか?」
「…はい。大変おまたせして申し訳御座いませんでした。」
やべぇ、シスターの殺意が細かい針のように刺さる。
「ええ、突然閉め出されてしまってとても驚きました。いつになく感情を乱して冷静を欠くなど修行不足ですね。
メルディの基礎もありますし、このまま庭に移動しましょうか。」
「…。」
情けない自分に気付かされて傷口に塩を塗られる。自覚しただけに何も言えない。
沈痛な気持ちのままシスターは、ふふっと口元に手をあて笑った。
「どうせ私がメルディを呼び捨てにした事で全て察して頭に血が昇ったあと説得に失敗したのでしょう?
悪足掻きは格好悪いですよ?
メルディ、こっちにいらっしゃい。」
追い打ちをかけてくる。
メルディに当たり散らした事も解っているのだろう。自己嫌悪に陥ると、手に暖かさを感じた。
その手を見るとメルディが握っている。
目が合うとメルディは安心させるように笑ってシスターの所に歩いて行った。
トクっと胸が痛くなる。
「ではファイン、準備出来次第裏の出口で待っててくださいね。」
シスターとメルディが離れていった。
ふらっと自室に戻って扉を閉めると、力が抜けたようにずるずるとしゃがむ。
メルディに握られた手を見て閉じたり開いたりして感覚を確かめ溜息を吐いた。
俺の方が寂しく感じてどうする。
一刻ほど塞ぎこんで自己反省会を開いた。
着替えて裏口から出た開けた場所で待つと少ししてメルディとシスターは来た。シスターはメルディに準備運動の指示をし待たせる事にしたらしい。
まぁ、いきなり動けと言われても出来ないから妥当な指示である。
………あれ?そう言えば俺、いきなり試合形式で戦わされた覚えあるな。
シスターと対峙しながら過去を振り返ると声をかけられ集中する。
「ファイン、ちゃんと毎日鍛錬をこなしてますか?」
「はい。勿論です。」
「では真剣のままいらっしゃい。勝負はいつもの通り、私から一本取るまで終わりませんよ。」
「はい。胸をお借りします。」
これは長くなりそうだ。
シスターから一本とるのはとても簡単じゃない。
感覚を澄まし踏み込むと背中から衝撃がきて吹き飛ばされる。
「がっ!」
バランスを保ち直ぐに体勢を変え受け身をとって着地したがすぐにシスターは迫ってくる。
横に剣を薙ぎ牽制しても素手のシスターは迷いなく剣の腹を押し軌道を反らし撃ち込んでくる。
シスターは舞うよう動き、避けてもすぐに向きを変えられ脇腹に肘が入りそうになるところを腕でガードする。あんなのくらったら内蔵に響いて吐くわ。
「ふふ、ファインは将来がとても楽しみなようなのでビシビシ行きますよ。」
一体何のことだ!!
剣だけじゃなく全身を使いシスターの攻撃を退けるが攻撃に移れない絶妙なタイミングで撃ち込んでくる。
恩恵を使う暇もないが、どうせシスターは恩恵が効かない。こっちの隙が増えるだけだ。
シスターは純粋な強さで挑まないと勝てない。クソッ!
焦らないよう機を見て隙きを作らせる様に動く。
しかしなかなか決まらない。
「あら?メルディは準備運動終えたようですね。次は森を走ってもらいましょう。」
シスターはメルディを見る余裕さえあるのか!
しかも森!?
「シスター!」
言った瞬間ぐるりと視界が回り背中を打ち付け息が詰まる。
いつの間にか自分の息が荒くなっていた。起きるのが怠い。だがさっきの言葉は聞き捨てならない。
「メルディに森は早いです!ここは王都から結構離れてるから、建物を覆うくらいの結界しか無い!森に入れば魔物も出るのですよ?!」
「わかってますよ?ではファインが早く私から一本とって付いていけば宜しいじゃないですか。」
汗を垂らす俺に涼しい顔のシスター。
なんて事を言うんだ!
「メルディ、次は屋敷の周りの森を走って来なさい。走れるまで走って自分の限界まで挑んでください。」
「はーい」
シスターが声を上げメルディに指示を出す。メルディは快く返事をし森に向かっていった。ハッと我に返って声を張り上げる。
「メルディィィイ!!魔物、魔物出るから!離れた所に行くな!俺がすぐいくフベ!!」
首を刈るようにシスターの蹴りが入った。
土の恩恵持ちは丈夫というが痛いものは痛い!
恨みがましく睨むと「さぁ、早くしないと魔物が出るかも知れませんよ?」とシスターがにこやかに言い放った。この悪魔め!!
ゲーム上のファインだとヒロインに絶対的な信頼をおかれ、ずっと二人の世界を維持してきたけどヒロインが子供から女の子へと成長する傍ら、ファインの精神も少しずつ成長して妹離れから恋心に変化するはずが、メルディの精神年齢が上がってる為ファインに依存しないからファインのメンタルが情緒不安定になりました。
これからメルディに合わせてメンタルが成長していくといいなー(希望的観測)




